進撃の巨人 ネタバレ考察

(92)マーレの戦士

舞台を一新し、シガンシナ奪還から少なくとも4年後の大陸。マーレと中東連合との戦場へ場面は移った。

戦局は大詰めで、軍港に浮かぶ連合艦隊を撃破すれば戦争は終わる。だがそれには港湾を守るスラバ要塞を攻略しなければならない。

「マーレの戦士」後継者候補として訓練を受けるガビやファルコたちは選抜試験の最終課程として前線へ駆り出され、榴弾飛び交う戦場で塹壕を掘っていた。

膠着状態に陥った戦線に埒を開けるため、ガビは一計を案じ敵の装甲列車を破壊。敵火力を削いだことで巨人戦力の投入が可能となり、2体の巨人が戦場へ姿を現す…。

進撃の巨人 第92話 マーレの戦士
別冊少年マガジン 2017年5月号(4月8日発売)掲載

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だがちょっと待って欲しい、なぜ今月号の表紙が外人4コマなのかw

170408_01170408_02通称「外人4コマ」でおなじみ、IGNの編集スタッフたち。元はE3の盛り上がりを表現した1枚らしいですが、エレンたちもアニメ2期のスタートに感極まって思わず身を乗り出してしまった…という所でしょうか。というか、そもそもエレンたち4人は今号に載ってないだろ!

さて、先月号から舞台を改め、いきなり軍記物へと姿を変えた本作であります。「マーレの戦士」候補生たちの属する訓練部隊が最終試験のような位置づけで駆り出された要塞攻め。

徹甲弾を撃ち出す対巨人砲を擁した装甲列車を、ガビが奇策によって撃破し、それによってマーレは安全に巨人を戦線投入することが可能となりました。その刹那に登場したのが「顎」の巨人を操るガリアード。前回はここまでで終わり。

今号はその続きからで、「顎(あぎと)」「車力(しゃりき)」の2体が戦場で暴れまわる様に加え、「鎧」「獣」と豪華な顔ぶれでお送りします。

誌面は派手ですがセリフが少なく、あまり考えることがありません。軍事に詳しい方なら違った楽しみ方もあるのかもしれませんが、僕はミリタリーは全く詳しくないので、雰囲気だけ楽しんでおります。

 

「超大型」「女型」を失ったことで弱体化し、万一にもこれ以上巨人を損耗することが許されないマーレ軍ですが、装甲列車の脅威を排除した今であれば前線での巨人使用が可能と判断、ただちに実行されます。

最前線へ真っ先に駆けつけ、偽装投降したガビを機銃掃射から守ったのが「顎」の巨人、ガリアード。後続で現れたのは4基の銃座を背負った四つん這いの巨人で、説明はないものの恐らくこれが「車力」の巨人ことピークでしょう。

本作では初めての描写として、巨人が顔面を装甲で覆っています。これが思いのほか格好いい。この巨人はどこか間の抜けた面構えをしていて緊張感に欠けるように思われたのですが、面具をつけたことで威圧感が生まれ、迫力が増しています。これまでの巨人が担っていた「意思疎通できない捕食者としての恐怖」とは別ベクトルの、兵器らしい硬質な恐ろしさが上手く表現されているのではないでしょうか。

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これが新型のゾイドだ! それぞれの銃座には人が乗っています。ちょうど先日まで遊んでいたHorizon Zero Dawnというゲームの影響で、背中の銃座に爆弾当てたら部位破壊できてパーツが…とか考えてしまう。

 

敵軍にある程度のダメージを与えたのを見計らい、マーレ戦士部隊には撤退命令が出されました。続いて現れたのは空挺部隊。上空の飛行船に搭乗していたのはジークとライナー、そして拘束衣で手足の自由を奪われた40名以上の集団。彼らは自らの意志があるのかないのか、ヨダレを垂らしながらニヤついたりしており、その様子はなんとなく銃夢のソケット兵を想起させます。薬漬けで兵器の生体部品として運搬されている様子が似ている。

彼らは手足を拘束されたままで次々に飛行船から空中へ放り出され、パラシュートで要塞目掛けて降下させられます。声を上げるものはいません。

全員が空中へ放出されたのを確認したジークが大きく息を吸い咆哮すると、それに呼応して空中を降下していた人々がすべて「無垢の巨人」に変じます。彼らはそのまま要塞へ自由落下し、その質量をもって防壁や建物を粉砕。かろうじて生き残った敵兵も大混乱の中捕食されるという地獄絵図です。戦士候補生を率いるマーレの上官がそれを見るなり「まさしく悪魔だ」と漏らしたのも道理でしょう。

拘束衣の人々にあらかじめ巨人化薬を投与していたのか、薬に頼らずともジークの声そのもので巨人化因子を覚醒させるのか説明はされていませんが、「獣の巨人」に固有の能力かもしれません。ジークはかつてラガコ村(コニーの実家)の人々を一夜にして全員巨人化させたと思われますが、薬を使わず声だけで巨人を呼び起こせるなら話は簡単です。まあ薬が必要だとしても井戸に混入させればすぐ終わるかもしれませんが。

要塞守備隊は防壁に設置された対巨人野戦砲で徹甲弾を放ち、無垢の巨人を少しずつ仕留めていきます。パラディ島(壁の世界)では大砲の精度や威力に難があり効率的に巨人を防ぐのは困難でしたが、大陸の近代的な兵器であれば無垢の巨人に有効打を与えることはそれほど難しくはなさそう。

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少し遅れてパラシュートで降下しながらその様子を眺めていたライナーは、訓練兵時代を思い出して「壁はもううんざりだ」とつぶやき、鎧の巨人へと姿を変えるのでした。

落着したライナーは定石通りに砲台を根こそぎ壊しにかかります。懐に入られては砲台は機能せずライナーに次々となぎ倒されていきますが、攻めの隙を狙った徹甲弾がライナーのガードを貫通。致命打には至らないものの、左腕にトンネルを開けることに成功します。これにはライナーもノンビリ構えてはいられません。パラディ島では砲弾を正面から受けてもほぼ無傷で、雷槍やエレンの硬質化パンチくらいでしかダメージを受けませんでしたから、その差は歴然です。

少々ダメージは負ったものの、ガリアードと共同で残る砲台をすべて片付け、悠々と降下してきたジークを要塞に迎え入れるライナー。ジークは獣の巨人になると弾薬庫から砲弾をまとめてつかみ取り、眼下に広がる港湾の艦隊へ向けて全力投球します。

シガンシナでエルヴィンら調査兵団を相手にした時に見せたマッハ散弾ぶっぱ攻撃で、プカプカ浮いてる敵艦隊は哀れ壊滅…と思いきや、ジークへ向けて一斉砲撃。この反撃はジークの予想外だったようで、驚きとまどっている所へライナーが割って入るものの、直撃弾を受けたライナーは半身が吹き飛ぶ有様。巨人を英雄視していたガビもこれには顔面蒼白。

最終的に艦隊を沈め、マーレと中東連合の4年に及ぶ戦争が終結したはいいのですが、この戦いでもはや巨人が絶対的な無敵の戦力ではないことが大々的に露見してしまいました。近代兵器の火力で対抗すれば、巨人など少々でかい獣と同じ。もう巨人なんて古いぜ!

このパラダイムシフトは実に面白いですね。作中ではこれまで巨人が最強戦力で、「どれだけ強い巨人が登場するか」がひとつの謎であり楽しみでもあったわけですが、科学の発展により巨人は人道無視で扱いづらいレガシーな兵器に成り下がりつつある。同一規格で大量生産が可能、訓練次第で誰でも使える銃砲に比べ、選ばれた者が寿命と引き換えに手にする巨人の力はどうしたってコスパが悪い、中世的な存在です。残された巨人兵器としてのアドバンテージは、始祖の巨人の能力を用いた一糸乱れぬ統率による戦術的優位となるわけですが、肝心の始祖の巨人はマーレにはない。作中のナレーションによれば、マーレはこの戦闘により一刻も早く始祖の巨人を奪還する必要に迫られたとあります。

まあこれまで1000年以上も、巨人の力を擁している勢力が世界の覇権を握っていたなんてのがそもそも凄まじい話なんですけどね。日本で言うと今から1000年前って平安時代ですよ。坂上田村麻呂が征夷大将軍を拝命して蝦夷征伐とかやってた時代に巨人をゾロゾロ引き連れてたらそりゃ無敵でしょうけど、 ジェット機での航空支援やミサイルを使った遠隔攻撃が主体の戦場では巨人なんてでかい的に過ぎません。Civilizationをプレイする方であればイメージわくと思いますが、古代~中世に戦争しかけてラッシュを決める用の兵器と言えます。 

170408_05艦隊からの逆襲にあい吹っ飛んだライナーを見て驚くジークの表情がそこはかとなく哀愁漂っていて、なんか寂しい気持ちになりました。命と引き換えて、両親をマーレに売って手に入れた巨人の力が陳腐化していく。シガンシナでもパラディ島の非文明人に敗北を喫し、ここでもまた苦戦…というほどでもないが一矢を報われ、「おいおいマジかよ…」と自信喪失気味に見えます。がんばれジーク! エレンとの約束はまだ果たされていないぞ! 

あ、そう言えば最新22巻が4/7に発売されてます。「第一部完」と言っていいのかな? 87話~90話まで収録。グリシャの手記とそれを受けての御前会議が中心となる、謎解きクライマックス! エレンとアルミンの夢もちゃっかり叶います。ちなみに僕が一番好きな場面は、マルロの最期について尋ねたヒッチの去り際。ビュリホー!


進撃の巨人(22)
 

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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