進撃の巨人 ネタバレ考察

(128)裏切り者

地ならしを止める。

それぞれの思惑は違えど、大虐殺を防ぐという共通の目的を得て互いの手を取ったハンジらと戦士隊。
海へ侵攻したエレンを追うために必要な飛行艇を求め、キヨミが待つ港湾施設へと向かう。
しかしそこへはイェーガー派がすでに手を回しており、フロックがキヨミたちを脅して軟禁していた。
道を違えたかつての仲間との激突は避けられないのか。彼らは苦悩するが──。

進撃の巨人 第128話 裏切り者
別冊少年マガジン 2020年5月号(4月9日発売)掲載

港湾基地攻略

港の向こう、水平線の奥からモクモクと桁外れに大きな蒸気が広範囲から上がっています。ハンジは小さな丘からこれを見て「沖で蒸気を上げながら進む巨人が見えた」と表現しましたが、蒸気しか見えないので具体的に地ならしの群れがどうやって海を渡っているのかはやはり謎です。海底を歩いているのか、スイスイ泳いでいるのかは想像するしかありません。

しかしその速度は予想を超えるものだったらしく、ハンジによればおそらく先頭集団はもう対岸のマーレに上陸しているのでは、との見立てです。

ことは一刻を争う。見知った顔も多いイェーガー派から死傷者を出したくないジャンやコニーですが、悠長に作戦を検討している時間は残されていません。今すぐに飛行艇と技術者を無傷で確保し、イェーガー派はなるべく殺さず済ませるという非常に難易度の高いミッションとなります。

焦ったマガトはエレンの行き先だけでも特定したく、イェレナの腕をへし折って拷問を始めます。イェレナは涙と脂汗でぐしゃぐしゃになった顔で、自分も最後まで見届けたくなった、連れていけば行き先を教えると述べました。マガトはそれで一旦矛を収め、ガビを見て何事かを思案し、パラディの面々に頭を垂れて哀願します。マーレが行ってきたことに正義はなく、エルディアの末裔は悪魔などではないことを認めたのです。今やマーレ軍の元帥という立場にある人間が。

彼は続けます。自分たちにはこの愚かしい歴史を後世に伝える責任があり、全てを消滅させる地ならしを許すことはできない。だから今だけは、これから起こることに目をつぶって欲しいと。つまり戦士隊がイェーガー派を殺すことになっても邪魔をするなと言っているわけです。アルミンは事ここに至りようやく自分たちも手を汚す覚悟を決め、戦士隊と協力して港湾基地攻略にかかることとなりました。

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港の迎賓館ではフロックがアズマビトの2人(キヨミのボディガードか?)を射殺しています。こいつ権威を笠に着てやりたい放題やりすぎだろw ドラえもんの「どくさいスイッチ」を持たせたらバンバン押しまくるに違いない。棚ぼたで地位にありついた途端、万能感におぼれて客観視ができず人心が離れていく典型的なダメ君主フロックのあまりのキレキレぶりに、諫山先生がストレスのはけ口としてめっちゃウキウキしながら描いてるんじゃないかと勝手に想像してしまいますよ。

そんなフロックがちょっと皮肉を口にしたキヨミ様に銃口を突きつけて安っぽい脅迫をかけているところへ、策を講じたアルミンとコニーが駆けつけて屋外から彼の名を呼びます。何事かと問いただすフロックへ、アルミンは「車力と鎧を追って来た、奴らはジャンとオニャンコポンを殺し海へ逃げたから、追撃に飛行艇を出せ」と要求。どうやらアルミンたちが反イェーガー派に与していることはまだ露見していないようで、港の警備兵が彼らを止めなかったのもそのせいでしょう。

整備士を連れてこいと怒鳴り、桟橋で停泊している飛行艇へ近づいたアルミンたちの前へ出て制止したのは・・・ダズとサムエル!!!

ダズはともかく、サムエルは本気で「誰?」と思った人も多いのではないでしょうか。1巻でサシャが上官の食糧庫から盗んできた肉を見て「…オレもその肉食う!」と言ってた彼です。その直後に超大型が現れ、破片に当たって意識を失い壁から落下したところをサシャに助けられ、それきり消息不明になっていました。公式キャラクター名鑑では「死亡」と書かれていたのですが、10年の時を経て満を持して再臨。全国30人くらいのサムエルファンの皆さんが号泣しつつ歓呼と拍手で迎えたことでしょう。僕は喜びの放屁で迎えました。

二人が言うには、アルミンたちにはマーレとの内通疑惑がかかっているそうです。さすがにフロックの目もそこまで節穴ではなかった。そう言えば馬車で夜逃げする時も誰かに目撃されてましたよね(126話)。

しかしそれを本人たちに面と向かって話すあたり本気にはしていない様子で、ちょっと問答しただけでアルミンとコニーの剣幕に押し負け、お前らがエルディアを裏切るわけないよなハハハと若干戸惑いながらも飛行艇に巻きつけてあった自沈用爆弾の起爆装置を外してくれます。ちょろいぜ! これで問題はフロックだけとなりますが…。

マーレ軍を掌握し政治的にも発言力がある(と思われる)マガトとハンジたちが連携している以上、停戦を宣言し目先の争いを避けることは可能なはずです。それはかつてパラディ首脳たちが議論していた「地ならしによる威力外交」での抑止が実現したとも言えるでしょう。これでパラディへの侵攻を止められるという点に注目すれば、さらに世界を巻き込んで地ならしを進める必要もないわけで、エレンを説得して止めることには意義が生まれます。エレンもういいよ、侵略はされないよ、お疲れさん、と。

しかし政権の中枢を乗っ取ったイェーガー派とそれを支持する一部島民の判断基準は合理性ではなく恐怖や怨恨であり、俺たちを殺そうとする奴は永遠に地上から抹殺しろー!と叫ぶカルト集団ですから、和睦したからノーサイドですよねという説得が通じる相手ではありません。

とはいえイェーガー派も一枚岩でパラディをまとめあげているわけではなく、先の市街戦でシャーディスら守旧派が活躍したことで大したポリシーのない若手は再びイェーガー派に愛想をつかしていたりします。イェーガー派の総数や配置が分からないのでなんとも言えないんですが、フロックと心中するくらいの熱心なシンパはそう多くなく、梯子を外されて案外簡単に市民から石を投げられる立場に転落するかもしれませんね。フロックの求心力は皆無ですし。

そんなフロックは整備士を飛行艇の場所までよこせとアルミンに言われた後、己の猜疑心と直感に従いエンジニアたちへ銃を向けます。こいつほんと好き勝手やりすぎだろw ドラえもんの「どくさいスイッチ」を一度読んでから出直していただきたいものですな。

ためらうことなく引き金を引いたフロックですが、咄嗟に飛び出したキヨミによって腕をねじりあげられ、手首返しで床に押し倒されて完全にロックされ悶絶。銃弾はそれて壁か天井へ。キヨミ様は柔術か合気のような護身術を身に着けていたようです。駆けつけた警備兵にころせー!と命じるフロック。後先まったく考えず刃向かうものは全て殺す!デスノートを拾った小学生かお前は。

銃声を待ってましたとばかりに窓から飛び込んできたのはミカサ。回し蹴り一閃、掌底一撃で瞬時に2人の警備兵を片付けますが、それを見るやフロックは立体機動装置を使い強引に関節技から逃れると窓から脱出。上空へ飛び上がり基地全体へ命令を発します。「敵襲!ミカサ!アルミン!コニー!殺せ!」こいつマジで殺せしか言ってねえw

無血での飛行艇奪取は残念ながら失敗したので、作戦は次の段階へ移行。お待たせガチムチ巨人戦士隊による蹂躙殺戮ショーでございます。

ミカサは手はず通りキヨミたちを連れてマガトらと合流。建物の地下へ避難して戦士隊へ舞台を譲りました。あいつらはなぜ逃げ場のない地下へ・・・?そう訝しんだフロックの背後、立体機動で空へ駆け登った2つの影から放たれたまばゆい閃光とともに、悪鬼羅刹、鎧の巨人・女型の巨人、絶望を引き連れ再び現出! 近代火砲や雷槍に押されて絶対的な存在ではなくなったとは言え、単独運用する兵器としての巨人能力はいまだ脅威です。ライナーとアニは互いに背中を預け、群がる兵士たちを蚊を払うが如く叩き潰します。鎧は硬質化無効のせいで全然よろわれてませんがライナー自身は元気なようで、張り切って兵士を殺しています。良かった良かった。まさか人間を叩き殺すアニをがんばれーと応援する立場から見る日が来ようとはね。

ダズとサムエル

フロックの裏切り者を殺せという叫びを聞き、戦闘が始まったのを桟橋から目撃したアルミンたちはしばし呆然としていました。ダズは無言で爆弾の起爆装置に近づき、先程取り外したそれを再びセット。やめさせようと手を伸ばしたアルミンへ、サムエルが即座に発砲。至近距離からの銃弾は胸に2発、下アゴに1発命中し、アルミンはその場に崩折れます。続けてコニーへ銃を向け、涙目で裏切りを問い質すサムエル。

あわやコニー死すというところで巨人出現の閃光が走り、思わず顔をそちらへ向けたサムエルの隙をついてコニーが反撃に出ます。コニーに馬乗りされ形勢不利を悟るや、サムエルはダズに飛行艇爆沈を指示しますがアルミンがゾンビのようにダズへまとわりついて揉み合いに。

念のため言っときますがアルミンは巨人化能力者なので豆鉄砲で胴体に穴が開いた程度では死にません・・・が、脳や脊髄をふっとばされたら話は別です。ダズはモーゼルC96 の銃口をアルミンの額にゴツッと押し当て震えています。コニーは絶叫を上げてサムエルの銃を奪い、ダズの頭へ2度発砲。その時、アルミンの脳裏にはベルトルトの記憶の断片がチラついていました。誰が人なんか殺したいと思うもんか、そう泣いていた戦士の記憶です。放たれた銃弾はこめかみから貫通し脳漿をぶちまけ、ダズは桟橋から海へ転落。コニーは間髪入れずサムエルの口へ銃を突っ込み3発撃ち込みます。この拳銃、装弾数多くね?と野暮な検索をしたところwiki調べでは10発とか20発とか書いてあるので安心した。

サムエルは死なないと分かっているアルミンは撃てましたがコニーを撃つことができず、ダズもまたアルミンにトドメを刺すことができませんでした。そして「裏切り者」とののしった相手に逆襲されて命を落とします。何かの間違いだとか、まだ昔に戻れるんじゃないかとか、そんな期待が捨てられなかったのかもしれません。心臓を捧げ、人類のために死ぬと誓った兵士たち。しかし今ここで彼らは何のために戦い、何に殉じたのか。ダズが迷わずさっさと飛行艇を爆破するか、おとなしくそれを明け渡せば少なくとも2人がこの場でコニーに殺されることはなかったでしょう。もっと相応しい死に場所があったかもしれません。

ダズ・サムエルとアルミン・コニーには作中描写の限りでは深い因縁や確執はなく、同じ釜の飯を食った戦友にすぎません。なのでエレンとライナーのようなコンテクストを持ち得ず、割と簡単な構図だと思うのですが、妙に引っかかるものがあってさっきからずっとこのパートについて考えたことを書いては消し書いては消ししてるんですけど、うまく言語化できず困っています。お風呂にでも入って考えたらうんこのようにポコンと出るかもしれませんので、そしたら後で書きます。

今回を読んで、「やはり、最後の敵は同じ人間だったな・・・」と、またしても冬月コウゾウ先生のセリフが脳内で再生される筆者でありました。だいたいどんな漫画でも敵対する出所不明なクリーチャーが出てきたら正体は元人間で、最終的にはそれを生み出したり操ったりしている知性との対決になるわけですよね。じゃないとただの害獣駆除の話にしかならず山あり谷ありの展開が作れない。「羆嵐」みたいに獣害モチーフで読者を引き込むには強力な筆致が必要なのでしょう。

ともあれ、これで飛行艇は確保しました。あとは暴れてる戦士隊をミカサやハンジらが援護してイェーガー派を皆殺しにすればいいわけです。後はジャンですね。迎賓館でマガトやハンジと同行していましたが、すぐ横で銃撃戦をしている彼らを見ながらもジャンは小銃を構えず背負ったまま。まだ「仲間」を撃つ覚悟は決まっていないようです。彼がその引き金に指をかけるのはおそらくフロックとの対峙においてだと思われます。

つづく

地ならしの先頭は何km先まで到達している?

どうでもいいですけど、冒頭のシーン。ちょっとした盛り土程度の丘から見える水平線というと距離はせいぜい15~20km程度だと思われます。海ほたるから舞浜ネズミーランドまでが18km。そんくらいでパラディからマーレに渡れちゃうの?と考えるとめっちゃ近いですよね。ご近所かい!っていう。

しかしあの蒸気は地ならし集団の最後尾だと思われますから、先頭ははるか先にいるはず。とするとエレンは今どのくらい先まで到達しているのか?

あんま真面目に計算してもアレなんで大雑把に考えますけど、パラディにあった3重の壁の総延長は7,000kmくらいです。万里の長城で現存している部分が6,200kmらしいのでスケール感は似たようなもん。で、その中に隙間なく大型巨人が詰まってたとしますよね。

一般的な体格の人間だと肩幅は身長の25%くらいになるので、巨人と人間の体格差を無視して計算すると、50mの巨人の肩幅は12.5m。それを隙間なくつなげて7,000kmの壁を作るためには、70,000,000÷12.5=560,000。56万人の巨人が埋まっていた計算になります。

この56万の巨人が一集団となって歩いてるわけですが、作中の様子から4列縦隊で行進しているだろうと推定します。ハッキリ描かれてないので適当です。4列だと1列あたり14万人。人間の歩幅は身長の45%らしいから50mの45%は22.5m。一歩分の間隔でビッチリ詰めて歩いてるとして、22.5mが14万人分で3,150,000m=3,150kmです。

3,000km続く行進と言われてもあまりピンときませんが、東京から日本海へ向けて地ならしを開始したとすると、日本海から北朝鮮の北東部へ上陸し、そのまま中国を突き抜けてモンゴルの首都ウランバートルをすでに更地にしているくらいの距離です。この間にあった土地は全て壊滅したと考えられます。この調子じゃ他の大陸もあっという間だ・・・とハンジが危機感を抱くのも至極当然ですね。

 

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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