進撃の巨人 ネタバレ考察

(137)巨人

始祖の巨人が率いる地ならしの行軍がスラトアへ迫る。

ファルコの進化によってアニとガビが駆けつけたものの窮地は覆せず、圧倒的に不利な物量戦を強いられる面々。

切り札アルミンは巨人に捕獲され意識不明。始祖の力を切断すべくリヴァイが狙うジークは所在不明。

意識を失ったアルミンは「道」を通じて座標の砂漠にジークの姿を見る。

敗色濃厚、ないない尽くしで迎えた最終局面。逆転の一手は──。

進撃の巨人 第137話 巨人
別冊少年マガジン2021年3月号(2月9日発売)掲載

座標の砂漠にて

死の淵に瀕し、ふたたび「道」を通じて座標の砂漠へ降り立ったアルミンは、ぺたりと座り込み砂遊びに興じるジークと邂逅します。

争い破れもはや現世の諍いに興味をなくしたとでも言わんばかりの様子で、アルミンにさして反応せず手の中で城作りを続けるジーク。彼の言うにはこうです。

始祖ユミルは奴隷であった現世の苦しみから逃れるため、巨人の力を得て死のない世界(座標のこと)を作り出した。彼女はそこで二千年の時を超えて何かの未練を果たそうとしていることは想像できるが、エレンに理解できてもジークには理解できない。エレンはそれを理解することができたからユミルは王家のジークよりエレンに肩入れしている。

まあユミルの過去を覗き見ることができる読者にしてみれば、特に難しいことではありません。彼女は生前ずっと奴隷として、道具として扱われていました。巨人の力を得て土木や軍事で重用され、フリッツ王の子を産む立場となってもそれは変わらず、最期まで(そのうえ死んでなお)必要とされたのは彼女の「巨人の力」でしかなかったのです。暗殺者から身を挺して王を守ったユミルに、フリッツがかけた言葉は心配でも労いでもなく「お前はそのくらいでは死なない、早く起きて働け」といった内容です(30巻122話)。

結婚式を物欲しそうな目で眺めている様子からして、彼女は家族や愛情に飢えていたのでしょう。能力でなく人格で、要不要ではなくただ純粋な愛で、己の存在を肯定して欲しかったのだと思います。ジークは収容区育ちで幼い頃から己の能力を示すことで立場を得てきた背景があり、能力主義・競争主義に偏っていますので、ただ純粋に人を愛することが得意ではありませんでした。なんせ両親から優秀な戦士兼スパイとしての能力を強く期待されており、成績が振るわないとグリシャは悲嘆していましたからね。彼もまたユミルと同じように道具としての性能を求められた子だったわけです。

その点、エレンはもう少しお坊ちゃんです。楽園堕ちしたグリシャと後妻カルラはまっとうにエレンを愛し、人間に必要なことを教えてくれました。カルラはシャーディスに向かって「この子は特別でも偉大でもなくていい、生まれてきてくれただけでもう偉いのだ」といったことを笑顔で話しました(18巻71話)。悪ガキでしたが精神的には満たされた幼年時代だったと言えるでしょう。

この異母兄弟のメンタリティの差が、女心への理解度に決定的な違いを生んでしまったというわけ。

かつてクルーガーはグリシャに「人を愛せ」と忠告しています。
「妻でも子供でも街の人でもいい 壁の中で人を愛せ」「それができなければ繰り返すだけだ 同じ歴史を 同じ過ちを 何度も」「ミカサやアルミン みんなを救いたいなら 使命を全うしろ」(22巻89話)

クルーガーは未来の継承者から記憶を受信できる「進撃の巨人」の能力者ですから、未来のエレンが見せたいと思った記憶を受信して喋っていると考えられます。グリシャが壁の世界で人を愛することが問題の解決につながるとエレンは確信しているわけです。親の愛情を知らずに育ったジークと、愛情いっぱいに育てられたエレンとの差が、ユミルを救えるかどうか、ひいては世界を守れるかどうかの差になる。そう考えればユミルが欲しているものはやはり家族の愛情や絆ということになるのではないでしょうか。

とはいえそれを俯瞰できないアルミンとジークの問答では解決につながりません。アルミンは話題を変えて、ここから現実へ帰還する方法を問い質します。ジークはかぶりをふり、ペシミスティックな持論でアルミンに応じました。生きるための本能的恐怖に駆られ、そこから逃れるために争いもがく日々に意味はあるのか? 負けて死んだら解放されて安息を得るのではないか? それは悪いことなのか? と。

アルミンはしばし黙考しますが、砂に埋れた1枚の木の葉を拾い上げ、まだ壁が壊れる前の思い出を語りました。子供の頃、エレンとミカサと3人でただ駆けっこしているだけで幸福だった。それは生存競争とは無縁だけども、自分にとって大切なことなのだと。アルミンが持つ葉はジークには野球ボールに見えました。ジークが思い出したのはクサヴァーとのキャッチボールです。向かい合い、ボールをただ投げて捕ることを繰り返す。生存競争において客観的な意味のある行動ではありません。けれどジークにとってそれは大切なことだった。意味がなくても価値がある、そんな瞬間が人生には確かにある。ジークがそう気づいた時。「道」に大きな変化が訪れます。

ジークの心境の変化に応じ、茫漠とした座標の砂漠にどこからともなく無数の人影が姿を表しました。クサヴァー、グリシャ、イェーガー、ポルコ、マルセル、ユミル(そばかすの方)、ベルトルト…。みな、かつての巨人継承者です。彼らは無言、無表情のままジークとアルミンの周りへと集まっていきました。

ジークはクサヴァーに今でも安楽死計画は正しかったと思う、けれどキャッチボールできるならまた生まれてもいいと言い、グリシャを父さんと呼んで感謝の言葉を述べます。すっきりできて良かったね! 普通は死人に会って謝ったり文句言ったりできませんからね…。

ジークとアルミンはしっかり前を向き、意志を宿した目でかつての継承者たちに請願します。「力を貸してくれ」──。

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ジーク

現実世界では。

各々が満身創痍で勝ち目の薄い戦争を続けていました。ピークは腕を失い一時的に変身不能、ライナーは巨人の投槍や弓矢を受け組み敷かれ、アニはタックルで転倒させられ足技も使えず、もはや戦局を覆すことは困難な状況です。

巨人たちが一斉にアニへ群がってグヘヘしようとしたその時。上方から巨大な腕が振るわれ、並み居る巨人たちを薙ぎ払ってしまうではありませんか。驚いて見やればそこには超大型巨人・ベルトルトが、先程までと違い光のある瞳でアニを見下ろします。「顎の巨人」となったガリアード兄弟、ユミル(そばかす)もライナーを守るべく参戦。お、おまえらーっ!まるで死んだはずの仲間がピンチに駆けつける黄金期のジャンプ作品のようです。

アルミンが「道」を通じて過去の継承者の思念とつながり助力を得た、などというトンデモ事態をさすがに飲み込めない面々ですがミカサの判断は早く、アルミンを捕らえたオカピ型巨人に一気に迫ります。ファルコの背から援護射撃するガビにも助けられ、ミカサはオカピの頭部を割ってアルミンを救出。舌鋒(物理)でなおも食い下がり道連れで落下しようとするオカピに対し、蘇生したばかりのアルミンが雷槍で反撃。隙を作ったところへコニーとアニのコンビネーションでカットします。

さらに駆けつけたのはグリシャ、クルーガーの「進撃」前任者コンビと、羊頭の巨人(多分クサヴァー)。相変わらずグリシャの巨人のデザインはなんでこんな太ったヴァイキングみたいな感じなんだろwと思いつつ、めいめい鉄拳制裁・ジャンピング頭突き・タワーブリッジで群がる巨人たちを一蹴します。クルーガーは確か軍艦もタワーブリッジでへし折ってた気がする。プロレス好きなんですかね。

何が起きたかワケワカメといったガビとリヴァイですが、そんな彼を遠くから呼ぶ声がします。見ればなんということでしょう、そこにはエレンの背骨から突き出た棘の最上部に張り付き、リヴァイの名を呼び手を振る全裸のジークの姿が!

流れる風。どこまでも広がる空。いい天気だ。もっと早く目を開いて、ありのままの世界を見ることができていたら…。リヴァイが彼の元へ駆けつけるまでのほんのわずかな時間、空を仰いでジークは悔います。

世界や民族への憎しみや使命感に囚われ視野狭窄になっていた彼にとり、自然の風景は目に映らないも同然だったのでしょう。なにかに急き立てられて心と気持ちに余裕がない状態では、日常のささやかな幸せにはなかなか気付けないものです。

今日はいい天気だ。たったそれだけのことを嬉しいと感じられる、それこそが人間の尊さなのだと僕は思います。ジークはそれに気がつくことができなかった。気づいた時にはもう、小柄な人の形をした旋風が彼の首を跳ね飛ばした後でしたとさ。リヴァイ、ついにエルヴィンとの盟約を果たし、獣の巨人ことジークイェーガーを討ち果たしました。ジーク自ら首を差し出す格好ではありましたが、首は首です。エルヴィンやハンジらが待つ彼岸にも胸を張って逝けるでしょう。まだ生きてますけどね。

そしてジークが絶命したことにより、エレンは始祖の力を失ってついに地ならしの行軍は止まりました。

エレン

間髪を入れず最後の大仕事を果たしにジャンは背骨の上を疾走します。エレンの首に巻き付いたままの爆薬と起爆装置。レバーをしっかりと握り罵声を浴びせながら押し込むと、轟音とともに頚椎が爆ぜて巨人エレンの頭部が落下。そしてガビの言ったとおり、背骨から始祖ムカデが光り輝きながら飛び出してきます。これを予期していたライナーが始祖ムカデに飛びついて抑え込み、エレンとの再接続を阻止。一行はファルコに乗って脱出し、ただちにアルミンが巨人化の爆圧で一帯を吹き飛ばす算段です。

ライナーふんばれ、一世一代の見せ場だ! 彼の硬質化能力は始祖の力によって失われているはずですが、ジークの死によって始祖の力が停止した今、もしや硬質化も再び使えるようになっているのか? だとすれば超大型顕現の爆発にも耐えられる可能性は高い。いずれにせよここでライナーを案じて全てをご破産にする選択はない。ピークに促されてジャンはわずかな逡巡を振り切り、他のメンバーと共にファルコに乗って退避します。

残ったアルミンはベルトルトの掌の上でかつての継承者たちに礼を述べ、そしてエレンに訣別を告げます。

「さよなら …エレン」

始祖の骨格が巨大な閃光に覆われる光景を、ミカサはファルコの背から言葉もなく見つめていました──。

つづく

最終回まで あと2話です

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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