進撃の巨人 ネタバレ考察

(129)懐古

海を渡ったエレンに追いつくためには、飛行艇と整備技師を無傷で確保しなければならない。

キヨミや技師らが待つ港湾基地はイェーガー派に占拠されているため、アルミンとコニーは一芝居を打って飛行艇を盗み出そうとするが、フロックに企みを看破され交戦状態へ。

巨人化したライナーとアニが壁となり敵兵を排除していくも形勢は思わしくない。

技師たちを連れて地下室に立てこもるハンジやマガトらだが、技師から予想外の言葉を聞かされ、狼狽する──。

進撃の巨人 第129話 懐古
別冊少年マガジン 2020年6・7月合併号(6月9日発売)掲載

作戦変更

感染症にともなう影響で先月号が発売延期となり、今月は合併号です。厚さが倍になって一挙2話掲載されたら感想書くのが大変だなあ…とアイス食ってゴロ寝しながら考えてましたが杞憂でした。ただでさえ鈍器みたいな別マガの厚さが倍になったら大変なことですよ。うちは電子版なのでどんだけ厚くてもいいですけど、バックナンバーを10年分保管してたら普通の住宅では床が抜けると思います。

さて前回はというと、アルミンとコニーがかつての同期サムとダニエルを撃ち殺したところで…違う、ダズとサムエルだ。アルミンたちが反イェーガー派であることが露見して交戦状態となり、エレン追跡を封じるため飛行艇を爆沈させようとしたダズとサムエルは、コニーによって蜂の巣にされ退場。港湾施設ではアズマビトの飛行艇整備技術者を殺害しようとするフロックたちと巨人化したアニ&ライナーが戦闘中。ハンジ、ジャン、マガトが技術者たちを警護している状態です。ミカサは遊撃手として巨人を援護しています。

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巨人が大暴れしてもいいよう地下へ逃げ込んだアズマビト一行とハンジたちですが、エンジニアの話では飛行艇の整備に早くて半日、通常なら1日かかるとのこと。この時間はハンジたちにとって致命的となります。仮に今配置されている警備戦力を皆殺しにしたところで、鉄道で市街とつながっているこの港湾へは波状的に増援を送ることができるため半日以上も守り続けることは不可能。また巨人の進行速度を考えると半日後には大陸の海岸から内陸600kmは灰塵となっていると予測され、レベリオはとっくに更地。最速で飛行艇を飛ばしても既に手遅れだというわけです。詰んだ! 巨人が不眠不休で進み続けてる計算ですけど、彼らはエネルギーが切れないんですかね? 巨人は夜は動かないという設定がもはや懐かしい。

ここでキヨミが提案したのは、船で飛行艇を牽引して大陸へ渡り、レベリオの南にあるオディハという臨海都市の整備場を使うプラン。時間的な猶予があるかは賭けだが、ここでジリ貧の立てこもりを続けるよりは可能性がある。マガトは即決します。出港まで15分。人員を失うことなく船へ乗せ、飛行艇を守りながら追撃を振り切るためにはどうしてもカードが足りません。

外ではアニに群がる警備兵をミカサが一蹴していました。巨大樹の森でこの二人が激突していた頃との関係の違いに感じいるものがありますね。敵だった頃の女型の巨人から感じた圧倒的な恐怖はもう誌面から伝わってきません。強い敵キャラが味方になると物語の都合上スペックが落ちてしまうのは仕方ないのですが、一抹の寂しさも覚えます。

それでも、硬質化が使えず片手をうなじのガードに使いながらも無数に絡みつく警備兵を相手に持ちこたえているところはさすが104期でミカサと並び称されるほどの女傑。作戦変更を伝え聞くや、ライナーとともに身を挺してアズマビト一行の脱出を援護します。そこへハンジとミカサが加勢。ハンジは遠慮なく回転斬りで警備兵の首をかっさばいていますが、ミカサはブレードをつけず蹴りで対処していますね。不殺を貫くのは圧倒的な実力差がなければ難しいのですが、それをやってのけるところはさすが歴代に比類なき逸材。

フロックは売国奴と罵りながら二丁拳銃を乱射しますが、これは見た目が派手で怒りを表現するには向いていても射撃精度は劣り、ヒラヒラと避けられてしまいます。頭に血が上って冷静さを失うかと思いきやフロックは意外と周りが見えていて、アズマビトが地下から飛び出してきた理由に気が付きました。

ここで追撃を許しエレンを殺されればパラディは全世界から報復を受け全島民が皆殺しになる、国を守るために心臓を捧げよ!フロックはそう隊員を鼓舞し、ありったけの雷槍で船を沈めるよう命令を発します。心臓を捧げよというキーワードは兵を思考停止にさせ死地へ追いやるのになかなか効果的ですね。かつてエルヴィンが何度かこの言葉を発していますが、それに比べてフロックの言葉は安っぽく軽い…と感じるのは読み手の解釈の都合でしょうか。

総力戦

輸送船へ乗り込むべく走るエンジニアたちを狙う雷槍の集中砲火、庇いきれないアニの前にライナーが割って入り、顔面や肩で爆撃を受けます。ライナーの顔はまだ原型を留めている…ヨシ!

出港が決まりジャンが呼びにいった非戦闘部隊(ガビ・ファルコ・リヴァイ・オニャンコポン・イェレナ)はピークの背に乗ったまま建物の陰から様子を伺っていました。ファルコはヨシ!とは思えなかったようで、自分も「顎の巨人」を使って戦うと言い出します。練度不足で足手まといになるとピークが諌めるのも聞かず飛び出すファルコ。オイオイオイ、死ぬわアイツ。

さらに予想外の早さで到着する、イェーガー派の増援を乗せた列車。戦闘開始からまだ数十分程度だと思うのですが、近くに中継基地でもあるのか? そちらへ対処するためハンジとミカサが向かおうとした矢先、線路が爆発し車両は脱線、増援部隊に被害が出ます。「はは~ん、これはガビの仕業だな。なるほどマーレ編の冒頭でガビが線路を爆破していたのはこの時のための伏線だったのか~!」とひとり納得する筆者。ともあれ増援が駆けつけるのを遅らせることに成功し、そちらへ割く人手を船の守りに使えるのは大きい。

後から後から続く、鬼気迫る警備兵たちの波状攻撃に、さしもの巨人2体も膝を付き、アニは首から上を吹き飛ばされてしまいました。中の二人も限界で、もう体が動かない。その機を見て突入しトドメをくれようとする兵士たちを回転斬りで正面から薙ぎ払ったのはコニー。負傷したアルミンをマガトへ託し、憤怒の形相で船を守ると言って飛び出してきました。おそらく作戦の説明を受けていないはずですが、自分が何をすればいいのか理解しているようです。賢い。

コニーも作戦前はかつての仲間を手に掛けることに消極的でしたが、1人殺してしまえば後は野となれ山となれ、スイッチが入ったらもう怖いものなし。さらにそこへ続いたのはジャンとミカサで、「躊躇えば仲間が死ぬ」とようやく肌で理解。コニーが兵士を斬り殺す様を見てジャンもついに引き金に指をかけ、敵の背後からヘッドショットを決めます。同様にミカサも刃を装着。不殺にこだわる余裕なんてとっくにないのです。

前回くらいに逡巡するジャンを見て「ははあこいつはフロックと決別する時に覚悟を決めて重い引き金を引くという筋書きだな」などと書き散らかしていたのは僕です。なんか普通に撃ってました。いらん恥かかせやがって、そんなら最初から撃てと言いたいw

顎の巨人

敵味方とも残存する戦力をすべて投じての総力戦。どこにこんなに兵士が詰めていたのかと思うほど次から次へわいて出てくるイェーガー派の兵士たち。俺たちの国を死守せよ!と決死の咆哮とともに雷槍での一斉射。それでも誰一人欠くどころか被弾すらせずしのぎ続けるのはさすが全員超人軍団ですが、物量で押し切られそうになったところ、ここへ来て先程のファルコが前線へ駆け寄りついに巨人化。

顕現した「顎の巨人」はガリアードの時とはかなり面相が異なります。やはり巨人の外見的な形質は所有者の内面によって変化するようですね。どういった理由なのかはわかりませんが、ファルコの巨人は両手が恐竜のようなウロコで覆われていて上半身に長い毛がフサフサ、また顔の上から別の動物の骨を被っているような姿です。頭部の骨はクチバシの内側に牙が生えた印象で、「チェンソーマン」に出てくるサメの魔人・ビーム君にちょっと似てるなと最初思いました。見比べてみたらあまり似てませんでした。

練度的には使い物にならないと言われたファルコですが、予想外の新たな巨人の出現にイェーガー派は大混乱。隙を見せた者から次々と始末されてしまいます。味方が総崩れになるのを横目に執念で空中へ逃れたフロック、虎の子の雷槍を構え、船への射線が通りました。一発でも船底に穴を開ければ彼の勝ちです。雷槍で船を沈めるには喫水線より下の部分に修復不能なレベルで穴を開けなければいけませんが、上空から打ち下ろしで狙うのはかなり難しいと思います。水中を走行する魚雷とはわけが違いますからね。しかしあのシガンシナを生き延びたレジェンド・フロックの運命力ならば…!

エルディアを救うのはこの俺だーーー!! ディフェンスの隙をつき、どフリーからの逆転シューッ!! 勝った! マーレ編・完ッ!!!

その瞬間、響き渡る銃声とともにフロックの体が大きくのけぞり、狙いのそれた雷槍はあえなく海面へ落着。絶望の表情で見やったフロックの視界には、ライフルを構えた一人の少女…ガビ。

あわれフロックの運命力はガビに叶わず、そのまま落水。描写的には致命傷ではなさそうですが、立体機動装置をつけたまま海で泳げるのかはわかりません…。このしぶとさは間違いなくレジェンド級。

頭目を失い浮足立つ残敵をミカサが冷徹に斬り倒します。こいつもスイッチ入ると見境なくてこえーな。震え上がるイェーガー派。ページをめくるとそこには、何ということでしょう、返り血を浴びブレードから血を滴らせて息を荒げるハンジとコニー、わりと平然としているミカサ、そして見るも無残な死体の山が! 他のイェーガー派は戦意喪失して逃亡中。ついに船を無傷で守りきったのです。

いやーこんだけ殺して平気なんですかね彼らは。今は高揚感で脳内麻薬ドバドバ出てるんでしょうけど、自国の元味方を思想が違うから、目的の邪魔だからという理由でそこら中死体だらけになるまで惨殺して、それでエレンを説得できたとして、何食わぬ顔で穏やかな日常に戻れるもんなんでしょうか。実際ライナーは帰国後に精神を病んでましたよ、ライフルの銃口くわえたりして。コニーなんか同期を2人射殺してますし、この件で一番重い亡霊を背負ったんじゃないでしょうか。

出港準備を終え黒煙を吐く輸送船。急いで乗り込もうとするジャンたちがすっかり忘れていた、制御不能の巨人ファルコ。敵味方の見境なく襲いかかろうとしますが、ピーク先輩ががっちりとだいしゅきホールドで拘束したところをマガトがブレードでスーッと切り開いて本体を救出、ことを収めることができました。熟練の板前の包丁さばきのようで、さすが戦士隊の長だけあり感心させられますね。

ピークは戦闘で消耗していた&肉弾戦向きでないとはいえ、練度ではるかに勝る彼女を膂力でねじ伏せ獰猛に食らいつく姿を見せつけたファルコ。肉食恐竜のような恐ろしげな外見も含め、これが彼の中に潜む獣性の発露だとしたら、そしてガビとの夜の営みでこれが遺憾なく発揮されてしまうとしたら…ゴクリ。続きは薄い本でお楽しみください。

出港

さて、全員が満身創痍あるいは疲労困憊ではあるものの、1人も欠くことなくこの困難なミッションを成し遂げ、船は無事出港することができました。埠頭にダズエルの遺体を置いたまま…。あ、サムエルです。本命である地ならし阻止を考えると全く楽観できる状況ではないものの、船上でつかの間の休息にほっとする一行。その船に、姿の見えない人物がいました。

その人物ことマガト元帥は離れていく船を港から見送った後、残る警備兵2人と出くわします。とっさにライフルを構えますが、敵兵の後ろから現れた影が瞬時に2人を斬り捨てました。影の主はキース・シャーディス。彼がなぜここに? 曰く、シガンシナからアニを連れて馬車で南へ向かう104期たちを目撃し、その手助けをするために馳せ参じたということらしい。あの時(126話)窓から見てたのはこいつか! 

マガトはツルッパゲを見て即座に「増援を食い止めたのはあんたか?」と看破。そうだと事も無げに答えるシャーディス教官。つい先程「はは~ん、これはガビの仕業だな。なるほどマーレ編の冒頭でガビが線路を爆破していたのはこの時のための伏線だったのか~!」などと納得していた筆者ですが、お前かよ!とずっこけてしまいました。

足りなかった最後のカードとして、自らが港に残った巡洋艦を爆沈させる心づもりをマガトが話すと、シャーディスは手を貸そうと二つ返事。彼らは巡洋艦に乗り込むと弾薬庫に立てこもり、しんみりと独白したり慰めあったりしています。この場面が今回の副題である「懐古」ですね。マガトは子供たちを洗脳し巨人化させ戦いに巻き込んだことの後悔を口にします。本当はあの子達にただ普通に生きて欲しかったのだと。

シャーディスはそれに理解を示し、きっと子供たちはマガトを誇りに思うだろうとハゲましの言葉を贈ります。敵兵の追手が弾薬庫まで達した時、マガトは火薬を床に撒き終えると、目の前の老兵に名を尋ねました。清々しい顔で2人は名乗りあい、シャーディスがまるで長年連れ立った戦友のような所作でライフルをマガトに渡す。マガトはライフルを床の火薬に添えて引き金を──。

沖合から悲壮な面持ちで港を振り返る一行。巨大な爆煙が立ち昇り、そこにいたものは到底命がないであろうことは明らかでした。

船は傷だらけの一行を乗せ、目的地オディハへ向けて進みます。

つづく

 

シャーディス教官は特に政治的な信念によるものではなく「教え子の成長を信じて後押ししたい」「死に場所を探していた」というのが今回の行動理由のようですが、敵対しているイェーガー派の中にも教え子はいたはずで、肩入れして自爆する理由としては弱く、もう少し考えてみたいところです。

グリシャと親友・恋敵であった彼がエレンを特別視するのは分かりますが、それだけでエレンを止めようとしているハンジたちに身を挺して手を貸す理由にもならないですし。新時代に身の置きどころがないから死に場所を求めているってのは分かりますけど、せっかく獣の咆哮で巨人化した飲んべえ兵士たちを退けて恩師ポジションをゲットした矢先なのですから、まだもうちょっと後進の育成にハゲんで欲しかったですね。彼は彼で、調査兵団の団長だった頃から教官時代を通し、若者を兵士にして巨人のエサにすることへ思うところがあったのかもしれませんが…。ちょっと時間なくてできてませんけど、シャーディスに視点をあわせて読み返してみると違った解釈が可能かもしれません。

本来、ここで殿軍を務めるのに適任だったのはアルミンなんですよね。船が出港してからなら超大型出現時の爆圧で施設も停泊している軍艦も消し飛ばせます。そっから急いで泳げば輸送船に追いつけるかもしれない。アルミンが島に残留するとエレン説得の可能性がやや下がりますが、そこはミカサの愛に期待するということでなんとか。軍師ポジはハンジがいるから大丈夫。…まあいくら言ってもすでに起こってしまったことは覆らないのですが。

ともあれオッサン2人が退場し、次代の担い手が中心となって話が進もうとしています。飛行艇の整備が無事に終わればイェレナの情報をもとにエレンの行き先を推定し、そこへ飛んで説得、失敗すれば戦闘となるわけですが、問題はアニのモチベですね。飛行艇の整備が終わった頃にはレベリオはすでに消滅している可能性が高く、なら何のために?と戦意を失っても仕方ありません。今回すでに作戦変更に疑問を生じていますしね。

彼女の父レオンハート氏はユミルの道経由でエレンのお告げを聞いた後、レベリオで巨人が来るぞーとパニックを起こした群衆の先頭に立ちマーレの衛兵につかみかかってからその後が不明です。殺されててもおかしくないですし、暴動が成功して皆で避難しているかもしれない。おそらく後者ではないでしょうか。街は地ならしで消えたけど住人は生きててアニ号泣、みたいな。

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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