進撃の巨人 ネタバレ考察

(133)罪人達

多くの犠牲を払いながら、地ならしを止めるためにアルミンたちはエレンのもとを目指す。

人間同士で殺し合い、身を投げ出してもそれぞれが目的を遂げようとする。

虐殺を止めるため仕方ない…そう唱えながら戦友たちを皆殺しにしていく彼らの姿は果たして人に見えただろうか。

自らの叶えたい欲望を果たすため、譲れない者同士が争い相食むことこそがこの世界の姿である。

戦え。戦わなければ勝てない。

本作が一貫して唱え続けるこのメッセージは、ここにきて最大の問いを発しようとしていた──。

進撃の巨人 第133話 罪人達
別冊少年マガジン 2020年11月号(10月09日発売)掲載

飛行艇

フロックの執念を退け、ハンジの身命を捧げた足止めが功を奏し、飛行艇は地ならしに飲まれる寸前、なんとかオディハの整備工場を飛び立ちました。また一人かけがえのない戦友を失ったことで重い沈黙に包まれる機内。しかし感傷に浸る暇はありません。次代の団長を託されたアルミンはすぐさま次の作戦について話を始めます。

現状、始祖エレンを止める最も有効な手段はアルミンが超大型巨人となって爆圧で周囲一帯を消し飛ばすこと。これなら地ならしの群れにもエレンにも相当なダメージを与えることが可能です。

リヴァイはジークが始祖発動の鍵であることに着目しており、エレンが捕らえているはずのジークを殺してしまえば始祖の力は失われ、地ならしも止まるのではないかと考えている様子。アルミンは確かに、と目を丸くしていますが、制御を失った地ならしの巨人たちが停止せず、糸の切れた凧となって勝手にふらつきだしたら収拾がつかず惨事が広がるのではないでしょうか。

巨大な始祖の骨格のうちジークの位置も分からずでは、精神論が前提の特攻に等しい作戦となりますがリヴァイももう後へは引けません。ズタボロの体で「ジークは俺が仕留める、力を貸してくれ」と言うのみです。勝算も根拠もないただの執着ですが、誰もそれに異を唱えません。いいのか? 行ってみて、とりあえず始祖に近づいてジークがいそうなところを探して、リヴァイが特攻でなんとかする。爆弾ならいっぱい積んできたし。…団長兼軍師アルミン、それでいいのか?

ジャンとコニーはライナーと和解します。目的のために同胞を手に掛け死体の山を築いた後、自分たちはかつて壁を破壊したライナーたちと全く同じことをしていると気がついたのです。同じ立場になってようやくその心境を腹の底から理解し、それぞれが贖うことのできない罪を背負ったまま、せめて今できることをしようと腹を決めます。雨降って地固まる…といった晴れ晴れした空模様とは程遠い空気の機内ですが、涙を流すコニーの肩に手を置くライナーの一言によってひとつのしこりが取れ、ほんのわずかでも未来へ希望が灯ったような気がしました。

誰か僕らを見つけてくれ…。ジャンとコニーにその立場を理解され、ベルトルトの痛切な願いは今ここで叶ったと言えるでしょう。死んでるけどな!

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座標の砂漠

アルミンはある疑問を口にします。なぜエレンは始祖の力を使って他の巨人を封じないのか?

今や神にも等しい存在となったエレンは全てのエルディア人や巨人に介入することができ、子供を作れないように器官もしくは遺伝子を改変するなんてことまでできるはずですから、追手が邪魔ならさっさと「道」を通じて巨人たちの能力を奪えばいい。しかし現状は放任。これはエレンのメッセージだ、きっと自分を止めて欲しいと考えているに違いない、というのはライナーの意見。エレンは壮大すぎるかまってちゃんということですね。

ゲームや漫画のボスキャラが余裕こいて「今は殺さないでおいてやる。せいぜいあがいてオレを楽しませてみせろ」みたいに泳がせてたら、成長した主人公にボコられる。本当はボスにも悲しい過去があって割り切れなくて、けど実は優しい心の持ち主で、本当に許せないのはあの時何も出来なかった自分自身だ…という「悲しいラスボス」のテンプレ踏襲です。まあ違和感はないかな。

その瞬間、はっと気づくと全員の意識が「座標」の砂漠へと移動しています。物理的な距離を無視して一気にエレンと接触できる絶好の機会。アルミンはこれを逃すまいと、姿の見えないエレンへ向けて叫びます。もう十分だ、パラディは侵略されない、地ならしをやめてくれと。

ジャンも、コニーも、ミカサも、各々の言葉をひりだしてエレン説得を試みますが…姿を現した彼の返答は否。地ならしを止めることはせず、進み続けるという訣別の宣言でした。

そして友にこう語りかけます。自由意志で向かってこい、互いに曲げられぬ信念がある限り衝突は避けられない、止めたいならオレの息の根を止めろ…と。

光の失せた眼窩で並び立つ少年姿のエレンと始祖ユミル。一時はエレンの叫びに応じて瞳に光を宿したユミルですが、また元の状態に戻ってしまっています。それどころかエレンも同様に、目があるはずの場所にはぽっかりと暗い穴が開いているだけ。エレンもユミルの怨念に呑まれ、思考を支配されてしまったのでしょうか?

交渉は決裂。現実世界へ戻された一行は頭を抱えていました。どうする団長? リヴァイの問いにアルミンは歯噛みし、すぐに答えを返せません…。

輸送船

追撃組と別れてヒィズルを目指す輸送船の甲板では、アニとキヨミがくよくよと後悔やらなんやらを吐露しています。アニの胸を去来するのはかつての友、仲間、そしてアルミンの顔…。お前そんなにアルミンのこと好きだったっけ?w 

全てがもう遅いとうなだれるアニの背後から、ガビとファルコが声をかけます。巨人は他の巨人の一部を取り入れることで能力を発現させることは可能か、と。戸惑いながらアニが肯定すると2人はやおら興奮し、ファルコが考えていることを打ち明けます。

ファルコはジーク汁で巨人化し、ガリアードの顎の巨人を食って継承しました。このためファルコは「獣」と「顎」のハイブリッド巨人となっており、「獣」の能力の一部とジークの記憶も引き継いでいるのだとか。そして彼はジークの記憶として雲の上を飛翔している場面を思い出すことができ、また自分がそれをできると確信しているそうです。

意味がわからず聞き返すキヨミに、つまり過去には翼タイプの獣の巨人がいて、その能力をファルコが受け継いでおり、かつ行使できるから行ってきます、と返すガビ&ファルコ。アニは驚き呆れ怒鳴り散らします。

前回、僕はこんなこと言ってました。

だってこのままアルミンのヒロインパワーとかミカサのマフラーでエレンが説得できちゃったらどう? フツーすぎてダメでしょそれ。いやダメじゃないんだけど、普通でもいいんだけど、多分そうはならない。説得失敗して、その次になんかあるでしょ。意外な抜け穴的なアレが。アレって何か知らんけども。

予想通り、あっさり説得は失敗して、あっさり意外なサイドアプローチが露見しましたね。ガビとファルコの本線への復帰が早すぎて少々拍子抜けです。

「獣の巨人が空を飛べる」なんてのはこれまで全然フィーチャーされてなかった設定なので、正直これはちょっと苦笑い。過去の巨人のイラストで車力の姿がピークとはだいぶ違うな~と思ったことはありましたし、エレンとグリシャにしても見た目はかなり異なっているので、同じ巨人を継承しても形質が何らかの要因で変化することは前々から分かっていましたが…。ジークの記憶で見ました。飛べる気がするんです!ってあっさり飛ばれてもカタルシスは皆無ですよ。伏線のロングパスが美しい作品なだけに、このご都合展開は少々首を傾げるところではあります。

エレンが巨人を使いこなすまでは兵団の協力と一定期間の修練を必要としました。自我を保ちながら能力を駆使できるようになるには相応の時間がかかったのに、ファルコはまだ童貞卒業したばかり。巨人化をどれだけ維持できるか、自我を保ち目的を忘れずにいられるのか、そもそも本当に飛べるのか、など不安しかないのですが、まあストーリー的には飛んじゃうんでしょうね…。本作において翼や飛ぶという行為はシンボリックであり物語の上で重い意味があります。

スラトア要塞

場面変わって、各々の目的地スラトア要塞です。

荒れた岩石の丘陵地帯にそびえたつ、テーブル・マウンテンのような巨岩の上にそれらしき建造物の一部が見え隠れしています。そこへ伸びる鉄道の上を、一両の機関車が貨物車を牽いて進んでいました。

運転士にライフルを突きつけて脅している男…お待ちかね、アニの義父・レオンハート氏です。125話で暴動の先頭に立ち衛兵に掴みかかった後は安否不明となっていましたが、どうやら暴動はうまく行ったようで、貨物列車を占拠して地ならし到達前に脱出しています。貨物車にはレベリオからの避難民と思われる人々がすし詰めで、戦士隊の身内もちゃっかり乗っていました。フィンガーと呼ばれる男性はピークの父親でしょう。

誰も彼もがさっさと退場していくのが様式美であった本作において、エレンやミカサが味わってきた家族との別離に比べると少々ぬるい展開ではありますが、ここは素直に無事を喜んでおくとしましょう。

唐突に、外を見ていた避難民の一人が声を上げました。そちらを見れば飛行船の一団が要塞から離陸していきます。時を同じくして今度は別方向から、見渡す限り地平線に立ち上る噴煙のカーテン。地ならし団のご到着です。もうだめだ…列車内に絶望が漂う中、尻尾を巻いて逃げ去ると思われた飛行船団は編隊を組み、地ならしの方へと向かっていきました。

爆撃だよ! 列車を運転するマーレ人兵士が喝采をあげます。飛行船12隻が落とせるだけの爆弾を落として、果たして地ならしを食い止めることができるのでしょうか?

つづく  

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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