進撃の巨人 ネタバレ考察

(119)兄と弟

ついに「獣の巨人」がシガンシナへ姿を現した。
接触を試みるエレンであったが、「鎧」と「顎」に阻まれ前へ進めない。
一方ジークは「車力」の砲座を操るマガトに狙撃され壁から転落する。

危機に瀕したジークが「叫び」の力を使うことを防ぐため、コルトとガビはファルコと共にジークの元へ急ぐ。
血みどろの消耗戦は次の局面へ差し掛かろうとしていた。
死ぬのは誰か。そして生き残るのは・・・。

進撃の巨人 第119話 兄と弟
別冊少年マガジン 2019年8月号(7月9日発売)掲載

混戦

シガンシナでの戦局はいよいよ大詰め、現在このようになっています。

  • 「獣」に接触しようとするエレン VS 「鎧」&「顎」の巨人レスリング
  • マガトと砲台を背に乗せ壁上から狙撃する「車力」 VS イェーガー派立体機動部隊
  • 「車力」の砲撃で重傷を負い壁上から街区へ転落した「獣」
  • 巨人化の叫びを阻止すべく「獣」の元へ急ぐファルコ・ガビ・コルト
  • 解放され、エレンの救出に合意し武装したアルミン・ミカサ・ジャン・コニー
  • マーレを撃退するためイェーガー派と休戦し街区へ向かう守旧派(ピクシス、ナイルら)

それぞれが切迫した状態での大混戦となっています。

壁上から転落した「獣」が横たわるのは、エレンの目と鼻の先。障害物のない開けた場所で、ダッシュで数秒もあれば届く距離です。行かせまいとなおも食い下がる「顎」の頭部からうなじを力任せに粉砕するエレン。無力化させて捕食しようといった素振りはなく、とりあえず黙らせて一秒でも早く「獣」に接触したい様子。

そこへ斜め後方から車力の狙撃が命中。立体機動の兵士たちにまとわりつかれながらも間隙をついて正確無比な狙撃を繰り返すピークとマガトはまさに人馬一体。恐るべき技量です。現実であれば、ものの数秒で砲座はゲロまみれになっていることでしょう。動きを想像しただけで気持ち悪くなってきました。

エレンの動きが止まったところへ、回復した「鎧」が追いすがりまたしてもマウントポジションからのボコスカ喧嘩バトル。ライナーも頑張って必殺技のひとつくらい習得しておくべきでしたね、アニの回し蹴りみたいに…。馬乗りで殴るだけではエレンをなかなか無力化できません。

ガリアードも体格が違いすぎるのに目立った戦術的な動きはなく、がむしゃらに飛びかかるだけでしたから少々稚拙です。かつてユミルが言ったように巨大樹の森なら場を支配できる可能性がありますが、平坦な市街地では身軽さはまったく活かせず、正直いいとこなしです。それにしてもエレンがここまで徒手格闘に強くなっているとは。

えーい、このこの~!ポカッ!参ったか!と仲良しエレン&ライナーが昭和なケンカをやってるうちに、少しだけ回復した「獣」が上半身を起こします。絶体絶命のピンチに瀕し「叫び」を発しようとするジーク。それを見てエレンは「───待て」。このエレンの「待て」の意図が今回の深読みのしどころですが、ジークが「叫び」を思いとどまったのはそれとは別の理由でした。

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コルトの訴えと、ジークの決断

ジークの前へ、街路から飛び出してきたのはコルトたちです。

決死の形相で、ファルコがジーク汁を飲んでしまったこと、「叫び」の影響圏外へ避難するまで猶予が欲しいことを訴えるコルト。彼が戦士隊を志したのは家族を守りたいがゆえで、眼の前で弟を失うことは耐え難いのでした。マーレの命令などとうに忘れ、なりふり構わずにファルコだけは助けてくれ、殺し合いはその後で好きなだけやってくれと懇願します。

ジークはここに彼らがいることに驚き、ひとしきり狼狽し、逡巡して・・・絞り出すように彼らへ告げます。

残念だ、と。

青ざめる一同。間髪入れず無情にも終わりを告げる咆哮。コルトは「兄ちゃんがずっと付いてる」と涙を流し、ファルコを固く抱きしめます。ファルコがそれを振りほどこうとし、ガビを見やって手を伸ばした瞬間、彼の姿は光に包まれ───。

壁上からシガンシナの街を見た者は、いたるところで巨人化の光と衝撃が立ち上ったのを目の当たりにしたでしょう。

その中にはワインによってジーク汁に感染させられたピクシスやナイルらも含まれていました。

叫びはシガンシナ区の端から端まで届き、数百の「無垢の巨人」が出現。ジークの手勢としてマーレ兵へ襲いかかります。この巨人は楽園送りにされたエルディア人とは異なりジークの命令を受け付けるため、攻撃対象をマーレ兵士に限定することもできるでしょう。(ミケを捕縛した際、命令を無視して粛清された者もいましたが…)

そして「獣の巨人」の前には、巨人と化したファルコが立ち現れていました。首が長く、口は耳まで裂け、さほど彼の面影を感じさせるような姿ではありません。ジークの命で「鎧」に襲いかかり、がっぷり四つに組めるところを見ると、そこそこ大きく戦闘力も高そうな巨人です。

ファルコの攻撃を防ぎながらエレンを無力化するのはライナーだけでは困難で、即座にファルコを始末してエレンに集中せざるを得ないわけですが、ライナーはそれを決断することができません。その迷いの隙にエレンは組み敷かれた姿勢から逃れようとし、慌てて足首をつかんで倒れ込んだライナーは首が無防備に。ファルコは即座にうなじへ噛みつきます。やべェ!

ライナーが焦った瞬間、矢のように飛来した弾丸が「獣」のうなじを貫きます。青天の霹靂とばかりに目を見開く一同。壁上ではフロック以外の兵士は全滅し、マーレ兵に警護された「車力」は再びフリーになっていました。

「今度こそ仕留めた 確実に・・・」

蒸気を噴き上げ、骨の山と化す「獣の巨人」。マガトの狙撃スキルは佐藤和真(このすば)を超えるというのか?

続けざまにエレンへ砲口を向けるマガトですが、そこへ駆けつけたのは雷槍オプションのアルミンと、二刀流ミカサ。アルミンの放った雷槍がマガトの砲座を後方から直撃。これは逝ったか?

超回復はじめ何でもありの巨人ならともかく、鉄の棺桶に乗ったマガトがこの爆発に耐えられるとは思えないのですが…。砲座の装甲がめちゃ厚くて堅いとかいう理由でギリギリ致命傷でセーフなのか? ピークがカイジのぐにゃあ~みたいになっててちょっと笑いました。

捕食

ほんのすぐ先で崩れ去る「獣の巨人」の肉体を呆然と眺めるエレンとライナー。これで「王家の血を引く巨人」は失われ、現状では「不戦の契り」を破ることができなくなりました(最速でヒストリアの出産を待ってからになります)。本侵攻作戦の任務は完了です。

ライナーは安堵し、このまま「鎧」をファルコへ移して、ファルコとガビだけでも国へ帰らせようと考えます。張り詰めた糸が切れて腑抜けになっちゃいましたね。「獣」の死はあくまで今すぐの始祖発動を回避したに過ぎず、それで即座に戦争が終わるわけではありません。エルディア兵たちが黙って見逃してくれるわけでもない。ファルコがライナーを食って人間の姿に戻っても、すぐそこにエレンがいて、さらに捕食されてしまう可能性がある。

問題は山積してるわけですが、ライナーももうメンタル限界だったんでしょう。静かに目を閉じ、硬質化を解除してファルコに身を委ねようとするライナー。いただきま~す、と歯を立てようとしたその時、ライナーの後ろに佇む人影を見てファルコはそちらへ反応します。

右側頭部を失い立つのがやっとの状態で現れたのはポルコ=ガリアード。エレンにドォ!ドォ!ドォ!と殴られただけでしたが思いのほか重傷で、もはや巨人化も傷の回復もできないらしい。致命傷です。死期を悟ったポルコはファルコのために身を呈し、ライナーやガビの前で捕食されました。意外なことに、ファルコが継承したのは「鎧」ではなく「顎」です。

ライナーはそれを見て我に返ったのか再びエレンへの攻撃を再開しますが、エレンは巨人の肉体を硬質化させつつ地面に根を張り、ライナーの腕ごと巻き込んで縫い止めます。自分は本体だけ脱出して走り出し、その向かう先は「獣」の死骸・・・。

蒸気を噴き上げる骨の陰にうずくまっていたのはジーク本体。乾坤一擲の騙し討ち返しです。読者の誰もが思ったでしょう。「やっぱり」と。

余力を振り絞り拘束を脱した「鎧」が一足飛びにエレンへつかみかかるも、これはジャンとコニーが雷槍で阻止。「エレンの真意はともかくとりあえず救出して、後のことはそれから問い質す」という合意にしてはなかなか踏み込んだ行動だと思います。重傷のジークがすぐそこに倒れてるわけですから。接触させたら何が起きるか分からないですよ。

二人がかりなら片方が雷槍で「鎧」を牽制、片方は立体機動でエレンを確保って感じがベターかなと思いますが、ともあれこの場面では雷槍2発で「鎧」を昏倒させます。もはや巨人は彼らにとって大した脅威ではないんですね。

疾走

さあ、邪魔する者はもういません。あとはほんの10数m、エレンが二本の足で駆けるだけでジークの手に届きます。

誰もがそう考え、正面しか見えなくなっていた。エレンが街の角を飛び出す。

・・・その角の先にいたのは、焼け死んだコルトの傍らで彼のライフルを構えたガビでした。

驚き目を見張るエレン。救援は間に合いません。そして彼女は涙のあふれる目でエレンを見据え、歯を食いしばり、迷うことなく引き金を絞ります。

残り数メートル。

ガビの放った銃弾は即座にエレンの頸部を貫き、衝撃でその頭と胴とを切断せしめます。エレンとジークが互いに伸ばした手は結ばれることなく、エレンの頭部は宙を舞い、ジークは目を見開き絶叫するのでした・・・。

つづく


このご時世に、主人公の首が飛んで宙を舞う少年漫画ってなかなか貴重ではないでしょうか。エレン本体の見た目は人間そのものでゾンビや獣人ではありませんし、切れてもすぐにくっつくわけでもありません。ナイフでめった刺しにした挙げ句ノコギリで切断するような残酷描写は当然NGと思われますが、銃でスマートにぶっ飛ばすのはいいのか? この辺の線引きは会社ごと、雑誌ごとによっても分かれるところなので結構興味がありますね。僕は一律の表現狩りには反対でゾーニング支持なのですが、別マガは(一応)少年誌ですし、これだけ知名度のある作品にしては結構度胸ある描き方するなあと感じました。

ちなみにガビが撃ったのはコルトが背負ってた大口径の対巨人ライフルですが、見た目は現実の対物狙撃ライフルにそっくりです。それをしゃがんだまま肩保持で扱い、走る目標に命中させるガビの筋力と技量には驚かされますね。

銃弾で首がちょん切れるのか?と思われるかもしれませんが、対物ライフルで使われる50口径の弾を人体の硬さを模したゼリーに撃つと、こんな感じになるそうです。頭に当たっていればスイカ割りのようになったんじゃないでしょうか。


(音でかいので注意してください)

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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