アニメの感想記事ではこれから先のことにはあまり触れないようにしてます。
進撃の巨人セカンドシーズン28話「南西へ」
原作では9巻の37~38話に相当しますが、やや端折り気味。当サイトの原作感想記事→37話・38話
主要メンバーはまだ別行動が続いていますね。状況を整理しましょう。
大きく分けて「壁に開いた穴の状況を調べに行ったナナバ班・ゲルガー班」と、「エルミハ区からウトガルド城を目指すことになったエレンたち」に分かれています。
【ゲルガー班】コニー・ライナー・ベルトルト
コニーの生家があるラガコ村を調査。家屋は破壊されており身動きの取れない巨人が1体取り残されてはいるものの、人の遺体や血痕などは見当たらない。住民が無事避難したようにも思えるが、不自然なことに馬小屋に馬がつながれたままであった。村を出て南側から壁に沿って北西へ進んだが壁の穴も巨人も発見できず、進行方向から対向するナナバ班に出会う。
【ナナバ班】クリスタ・ユミル
西回りに壁を伝って南下するも異常は見つからず。夜間で疲労もあるためゲルガー班と合流し、近くに見えたウトガルド城址で休息を取ることになった。
【エレンたち】ミカサ・アルミン・リヴァイ・ハンジ・ニック司祭
ストヘス区から馬車で移動しエルミハ区へ到着。押し寄せる難民を見て動揺したニックは良心の呵責とウォール教の誓約との板挟みになり、精一杯の譲歩としてクリスタが教団の監視対象となっている重要人物であることを明かす。彼女は壁の真実を知ることができる立場にあるという。前線へ赴いたクリスタを保護するため、ニックとケガ人のリヴァイを置いてエレンたちはウトガルド方面へ向かう。
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意味深な会話が増える
ファーストシーズンの終盤、アニが女型の巨人だったことが判明し、敵対する何者かの勢力が巨人を操っていること・壁の中に潜入していることは確定的になりました。それまでは「理不尽な捕食者である巨人と人類との生存競争」でしかなかった物語がサスペンス味を帯び、セカンドシーズンは「敵勢力の目的や裏切り者の正体は?」という謎解きが知的好奇心をグイグイ刺激してくるステージとなっています。
今回でも物語の伏線となる怪しい会話が増えており、初見ではおそらく意味が分からないと思いますので、なるべく先の核心的なことには触れずに考えてみましょう。
①「ユミルが憲兵団に入る権利をクリスタに譲ろうとした」とは?
訓練兵団の習わしにより、卒業時の成績優秀者10名のみが憲兵団に進むことを許される。作中での憲兵団は前線から離れた内地で安穏と利権を貪り、賭け事に勤しむ姿が描かれている。そこまでの甘い蜜を吸いたいとは言わずとも、巨人との命のやり取りを避けたいとの願いから憲兵団を志す者は多い。104期はミカサ・ライナー・ベルトルト・アニ・エレン・ジャン・マルコ・コニー・サシャ・クリスタの10名で、うち憲兵団を志願したのはアニだけ。調査兵団一本のエレンに影響を受けて流された者が数名いた。
卒業式の場で名を呼ばれ戸惑いを隠せないクリスタの表情からも窺えるように、本来であればクリスタは10位に見合う成績ではなく、誰の目からもユミルの方が優秀だったらしい。ユミルは何かしら工作を行って順位を入れ替え、憲兵団に行ける権利をクリスタに譲ろうとしたのだ。
結果的にクリスタは調査兵団を志願したためユミルの苦労も水泡に帰すこととなったが、クリスタの中ではわだかまりが残っていた。下手をするとユミルの生死にも関わることで、ただの友情が理由ではあるまい。だとすればその理由は?
「…私の…生まれた家と関係ある?」
クリスタはウォール教団によって監視がつけられている重要人物であることが、(婉曲的な表現ではあったにせよ)ニック司祭の口から明らかになった。ここではまだ具体的な身分は明かされていないが、クリスタは壁の世界において真実を知ることが可能な政治的存在である。
クリスタは意を決して、けれどやっぱり恐る恐る肩を縮めながら、親友にそれを問うた。
「ある」
そう言われてショックを受けたクリスタではあったが、ユミルは自分のためだと続けた。クリスタの生まれと関係はあるが、命令されて不本意に付き合っているわけではない。要はこれまでと関係は変わらないのだと。
②「どういうことだ、ユミル お前…?」←こっちのセリフだよw
あまりに前後が欠落していて、アニメで初見の人は絶対理解できないこの場面。多分、次回の冒頭で回想されるのだと思いますが。
ウトガルド城の描写がスッパリ落ちているので、ハンジがニックの口を割らせてサシャの伝令を受けている裏で何が起こっていたか視聴者にうまく伝わっていないように感じました。
唐突にライナーがユミルに詰め寄り、ギョロリと目だけで振り向く彼女のリアクションからは不穏な空気しか伝わってきません。夜中に盗み食いが見つかって修羅場ってるようなほんわか作品だったら良かったのですがw
原作ではユミルの重要な「うっかり」とライナーのリアクションについて、それぞれの意図を考えるのがとても楽しかった回でよく覚えています。
以下、この場面の原作を少しだけ解説。
ウトガルド城には最近まで誰かが住んでいたような形跡があり、ウイスキーの瓶には酒好きのゲルガーでさえ見たことのない、読めない文字のラベルが貼られていた。
とりあえず一夜の寝床を確保したゲルガー班&ナナバ班の一行は各自休憩を取り、ライナーは食糧箱を漁るユミルに声をかける。ユミルはその缶詰を見て軽口を叩くが、それが不自然なセリフであったことに本人とライナーが気づき、視線を交錯させる…!
まあこんな感じです。原作ではこのちょっと前に「ユミル」という名前が判明した頃から急激に彼女の存在感が増してきて、何か重大な秘密を握っているに違いない、こいつの言動を最初から洗い直そうというブームが起こったものです。
缶詰に何が書かれていたのか、アニメより先に知りたい人は38話の感想記事をどうぞ。
現在公開可能な情報
松明
一見、原始的であるが、落としてもすぐに灯りの消えない松明は夜間の作戦行動に適しており、長時間燃え続ける素材を用いた松明が調査兵団の標準装備となっている。
オラの村には電気がねえ!というわけで壁の世界には電灯がありません。ゆらゆらと揺れる火の照明は陰が濃く出て雰囲気あります。都会で暮らしていると夜でも明るすぎるくらいで本当の夜の暗さは忘れがちですが、現代日本でもちょっと田舎に行くと街灯も信号機もない山道があったりして本能的な恐怖を呼び起こされます。
僕は夜の山道を歩いていて迷ったことがあるのですが、そうそうクマが出るような場所でもないのに、ガサガサと茂みが揺れる音が本当に恐ろしかったのを覚えています。見えない・正体が分からないというのはそれだけで怖いものなんですね。暗い山道で人里の灯りを見つけた時の安心感を疑似体験したければ、「ダークソウル」シリーズをプレイしてみるのがいいんじゃないでしょうか。