進撃の巨人 ネタバレ考察

(66)願い

ロッド=レイスの口から語られた、ヒストリアの血統が持つ意味。そしてエレンの父・グリシャとの因縁。
己の父が犯した凶行に何の意味もなかったと絶望し、その力をヒストリアへ返そうとするエレン。全てを悟ったヒストリアは巨人化の注射を自らの腕に刺し、閃光と共に新たな巨人がその姿を現す…!

進撃の巨人 第66話 願い
別冊少年マガジン2015年3月号掲載(2015年2月9日発売)

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疑念

ヒストリアは注射針を自分の腕に刺した痛みから、かつてフリーダと過ごした日の記憶を思い起こしていました。

幼少の日、牧場の柵を越えてフリーダの元へ行こうと試みたヒストリア。彼女は柵に出ていたトゲで手を傷めてしまい、それを見たフリーダは鬼のような形相でヒストリアを叱りつけます。

「柵の外に出るなって 言ったでしょ!」

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フリーダおねえちゃん…巨人より怖いよ…夢に出るよこれ…。

ヒストリアはふと疑問に思います。フリーダは巨人を屈服させられる力を継承しながら、なぜ人類を脅かす巨人たちを排除しなかったのか。フリーダは時折ヒストリアの前で人が変わったように取り乱し、「私達は罪人だ!」などと叫び散らした挙句にひどく落ち込んだ様子を見せたと言います。無論、それは叫びの力とともに初代レイス王の記憶を継承した者にしかわからない苦悩。はたから見たら単なるアレな人ですが…。

柵を越えようとしたヒストリアに対し画風が変わるくらいに激昂したのも、レイス王の記憶と目の前の事象が混同されているからでしょうか。レイス王が人類に対し「壁の外へ出てはならん! 貴様らは罪人なのだから!」と命じた記憶が再生されているのかもしれません。

 

さて肩透かしなことに、ロッド=レイスは王の記憶の詳細を知りませんでした。まったくもって使えないオッサンです。

彼が知っているのは、記憶を継承した者は押しなべて巨人を滅ぼすことはせず、人類を今の状態に据え置いたという結果に過ぎません。それが何故なのかは親族といえど聞かされていないようなのです。ロッドの父も、弟のウーリも、娘のフリーダも、皆一様に巨人から人類を解放しようとはせず、その理由を明かすこともありませんでした。すなわち、何か重大な理由があって初代王は壁を作って人類を閉じ込め、巨人を滅ぼさずにおくことで人類が巨人に怯えながら暮らすことを望んだ。フリーダは「私達は罪人だ」と言ったそうですが、「私達」とは人類のことでしょうか? それとも王家のことでしょうか? 人類全てが「罪人」だとするならば、壁は檻であり巨人は看守・獄卒ともとれますが…。

ロッドは叫びの力を持つ巨人を神だと考えています。全てを知り、世界の構造を創り、理を思うまま書き換えられる。巨人に支配されるこの世界は神が創りたもうた箱庭。災いも救いも神の御心のまま、その全てに意味がある。そして、ロッドはウーリと交わした約束を果たすため、その神を現世へ降ろし祈りを捧げることを願っている。これが彼の言う、自分が巨人になれなかった理由。ロッドは神ではなく祈る者でなければならないという、弟との口約束です。なんともフワフワしたスッキリしない拠り所と言わざるを得ません。

急かす父を前に、ヒストリアは注射針を腕に刺したまま逡巡します。神をこの身に宿すのが使命。それが父の望む自分の姿。その代わり、自分は初代レイス王の記憶に支配され「自分」ではなくなってしまう…。

決心

ヒストリアの進むべき道を決めたのは、親友ユミルの一言でした。

「お前…胸張って生きろよ」

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ウトガルド城の見張り塔の頂上で交わしたあの約束が、ヒストリアの脳内に美化120%でフラッシュバック。こんなかっこいい場面だったか?w と首を傾げる筆者を尻目にヒストリアが採った行動は…!

床に叩きつけられ粉々になる注射器。顔面蒼白で絶叫し娘に掴みかかるレイス卿。それを背負い投げで難なくいなし、背中の痛みにのたうつ父を見下ろすと大見得を切るヒストリア。

「何が神だ!! 都合のいい逃げ道作って都合よく人を扇動して!!」
「もう! これ以上… 私を殺してたまるか!!」

ヒストリアは父の鞄から鍵束を取り出しエレンの救出へ。戸惑うエレン。自分は王の器ではない。このまま叫びの力を持っていても巨人を駆逐することなんてできない。ヒストリアに食われて力を継承させるのが唯一巨人を滅ぼすための有効打なのに…!

罪悪感と無力感からもう生きてても辛いだけだと泣き喚くエレンを、ヒストリアはゲンコツで叩いて一喝。彼女は自分を押し込めようとする全てのものをぶち壊し、統制された壁の中の平和ではなく、カオスな地平に登る朝日を望んだようです。これまでさんざんいい子として抑圧されてきた彼女の反動はやはり極端から極端といった様子。おとなしい人ほどキレると何をするかわからない…。理性的とは言えない振る舞いですが、自分の中にある本当の気持ちに正直に向き合った結果なのでしょう。

娘に軍隊仕込みの一本背負いで叩き伏せられ背骨に破壊音が走った中年のオッサンはどうなったでしょうか? 立つこともままならずズリズリと割れた注射器のもとへ這い、家族の名を呼びながら床に広がった薬液を舌で舐め取り…

激しい爆風と閃光。ここで前回のラストへとつながる時系列。巨人化したのはヒストリアではなく父ロッド=レイスだったというわけ。よかった、僕らの天使ヒストリアが戦闘向きのゴリマッチョ巨人にならなくて済んで本当によかった。

ロッドは自分はヘタレなわけじゃなく巨人になれない理由があるんだよーんと言っていましたが、それは体質や器質的な問題ではなく、あくまで個人的かつしょうもない約束に拘泥していただけ。その証拠にいざ事がここに及ぶとあっさり自分が巨人になってしまいます。彼の器の矮小さを目の当たりにして呆気にとられたのは筆者だけではないでしょう。巨人化の薬が注射ではなく経口摂取でも効果があるとわかったのが唯一の収穫ですね。

爆風の中エレンの足枷をはずそうと懸命に鍵穴を探るヒストリア。彼女が選んだ「正直な自分」は、いい子を演じることでもなく、女王の役でもなく、まして神様なんて大層なものでもない。ただエレンの味方でありたい、存在理由を見いだせない弱い誰かを勇気づけてあげたい、ただそれだけを願う少女の姿でした。

爆風で吹き飛ばされるヒストリアをかばったのは駆けつけたミカサ。位置関係からすると奥に撤退した憲兵団対人部隊が先に駆けつけて来そうなものですが、想定外の事態に混乱したのでしょうか? リヴァイ、コニー、ジャン、サシャの姿もあります。

全ての枷が外されると同時に洞窟の天井が崩落。ベルトルト扮する「超大型」を凌ぐサイズの巨人が徐々にその全身を現そうとしています。そこにノコノコと遅れて飛んできたのが中央憲兵、ケニーの部下たち。来るなと制止するケニーですが、言い終わる前に天井が勢い良く崩れ…。

再起

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久しぶりにほぼ勢揃いしたと思ったら、早速逃げ場を失い絶体絶命のリヴァイ班。巨人ロッドはすでに理性をなくしているのか、エレンを食って力を継承する前に崩落に巻き込んでしまう勢いです。このままでは全員潰されて死んでしまう。しかしエレンが巨人化したところで崩落する莫大な土砂の質量を支えられるとは思えない…。

期待と不安の入り混じった眼差しで仲間たちがエレンを見つめています。それから主人公がひとしきり弱音を吐く→仲間に励まされるという少年誌のお決まりなパス回しを経て、最後のシュートはエースストライカー・リヴァイ。

「好きな方を選べ」

ガーン! エレンが思い出したのは旧リヴァイ班と共に巨大樹の森を駆け抜けたあの日のこと。迷い、躊躇し、仲間を信じたことにして、その結果に散々後悔した惨劇。エレンにとって、あの結果は自分を信じることができず人任せにして責任を放棄したことの帰結でした(結果論にすぎませんが)。そして今こそ、自分を信じろエレン!

エレンが見やった床にはロッドの鞄に入っていた薬ビンが転がっており、ラベルには「ヨロイ」と書かれています。(ヨロイ ブラウン と読める)

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エレンは立ち上がりそのビンを掴み取るとロッドへ向かって駆けながらビンを噛み砕き、再び激しい閃光が辺りを包む!

つづく。

余談

今回提示された新しい材料は2つ。

(1)ヨロイ ブラウン と書かれた薬ビン
(2)エレンが別の巨人の薬剤を摂取して巨人化したこと(※)

(※)描写されているのは巨人化にともなう閃光までで、どのように巨人化したのか明確に描かれたわけではない

(申し訳ありませんが本日は執筆時間がないため後日更新させていただきます)

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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