クーデターにより政権を掌握し、背後から刺される心配のなくなった調査兵団はいよいよ5年前のあの日に失われたシガンシナ区、およびウォール・マリア領域の奪還を目指し進撃する。
目的は領地奪還、そしてイェーガー家の地下にグリシャが隠していた秘密…(おそらくご禁制のエロ本)を探し当てることだ。
進撃の巨人 第73話 はじまりの街
別冊少年マガジン2015年10月号(9/9発売)掲載
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シガンシナへの帰還
グリシャがもったいぶって隠していた地下室が実はエロ本の倉庫だったらこの物語はどうなるのだろう…。
グリシャ:「(エロに対する)探究心は人に言われて抑えられるものではないよ。エレンももうこの本の価値がわかる年頃だ。帰ってきたら秘密にしていた地下室(のエロ本)を見せてやろう」…などと30秒くらい妄想にふけってしまいましたが、多分そんなことはないはず。
さて、今号は前半がナレーションによるポエム、後半はモノローグが多く戦闘シーンや謎解きの場面はありません。「道中は特に大きなトラブルもなくシガンシナに着いたよ」とだけ理解していただければ、あとは読まなくても大筋の理解には支障のないエピソードだと思われます。
とはいえ、物語の大きな目標のひとつであったシガンシナ区への帰還が実現したことはエレンたちにとって大きな意味を持ちます。
ようやく辿り着いたシガンシナ区。こうして見ると低層の住居がビッチリと街区を埋め尽くしており、大きな建造物や公園といったスペースは全く見当たりません。それどころか目抜き通りすら見えず、この世界でいかに土地が貴重なものかよく分かります。
兵団は巨人が不活化する夜間に行軍してきましたが、新月の闇の中で山を通り抜けるのは調査兵たちであっても簡単ではなく、シガンシナへ到着した時にはすでに日が昇りかけていました。わざわざ新月の夜を選んだのは、かつて月の明るい晩に、コニーとヒストリアがウトガルド城で遭遇した敵…獣の巨人が率いる巨人の群れという事例を考慮したためです。今回も敵の中に夜行型の巨人がいるかもしれないと。
月は太陽の反射光であり、いわば日光と同質なものではないか? 夜でも動ける「新種」の巨人は微量な光をエネルギー源にできるのではないか、というのがハンジの仮説。本作ではアルミンとハンジの仮説がはずれた試しがないため、おそらくそういったことなのでしょう。
用いている巨人化薬の違いが能力や特性の違いとして現れるのでしょうか。獣の巨人はライナーの故郷ないしそれに類する場所から来ていると考えられるため、この世界の巨人化とは異なる技術を持っている可能性があります。獣の巨人は立体機動装置も知りませんでしたから、文化的には異質な存在です。
作戦開始
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さて、シガンシナの壁にとりついた調査兵団たち。ここからいよいよ作戦開始です。
段取りとしてはまずエレンの硬質化能力を使って壁を塞ぎ、新たな巨人がシガンシナ区内へ入って来られないようにします。その後ゆっくりと壁内の残敵を掃討し、イェーガー家の地下室を目指す。ライナーとベルトルトはエレンの身柄を狙っているが、調査兵団は全員フードを被り顔が見えにくいようにしているため簡単には判別できず、特定される前ににエレンは壁を塞ぎ終えるだろう…ということのようです。
よくわからないのは、超大型や鎧の巨人であれば壁が塞がれてもまた破壊できるのではないか?という懸念にどう対処するのかという点と、彼らが巨人化して全力で襲ってきたらどう対抗するのか、具体的な戦術が不明な点です。事実ウトガルド城ではエレンと兵団がいても敵2体に歯が立たず、エレンとユミルをむざむざ誘拐されてしまいましたからね。新兵器の巨人絶対殺す装置(仮)は壁に設置して巨大な杭を打ち下ろすものでしたから知能のある相手には使えませんし、少数での速度重視編成のため荷馬車で大掛かりなトンデモ兵器を運んできた様子もありません。最終的にはリヴァイとミカサ、そしてエレン頼みのぶっつけ作戦なのでしょうか。
超大型はネタが割れてしまえば単にでかいだけの木偶ですから、高温の蒸気にさえ気をつければ今の兵団でも十分に戦えそう。一方鎧の巨人は単体での戦闘力がかなり高く、硬質化が機能している限り兵団のブレードでは致命傷を与えることは難しい。したがってまたしてもエレンとの格闘戦にもつれこむ可能性が高いのですが、エレンが硬質化と壁を生成する能力を習得しているためこれを利用して何らかの奇襲をかけることでアドバンテージを取れるかもしれません。
また、シガンシナの中に巨人の姿がまったく見えないのが不気味です。壁の穴は開いたままですが、ただの一体もいないのはやはり不自然。何らかの罠がすでに張られていると考えるべきでしょう。
胸にこみ上げるものをこらえ、立ち止まりたい欲求を押さえて外門へ急ぐエレン。空中で右手に歯を立て巨人化の構えを取る彼の様子を、どこか閉所の覗き穴から活目凝視するベルトルト。
待ち受ける彼らの戦術とは? そして姿の見えないユミルと獣の巨人はどこにいるのか?
波乱の次号へつづく。