進撃の巨人 ネタバレ考察

(72)奪還作戦の夜

クーデターにより政権を奪取しヒストリアを即位させた兵団でしたが、ヒストリアが王座についただけでは結局のところ核心的な情報は見つけることができず、次の一手はシガンシナの奪還となりました。

物語はいよいよ大きな転機に向けて動き始めます。

進撃の巨人 第72話 奪還作戦の夜
別冊少年マガジン2015年9月号(8/8発売)掲載

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エルヴィンの執念

ウォールマリア奪還作戦の準備は着々と進み、本日その全てが整いました。

主目的は人類生存領域の回復(シガンシナの壁を塞ぎ巨人を駆除すること)、およびグリシャ・イェーガーが残した地下室の謎の究明です。

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昂揚し、景気付けに肉を食おうなどと話しながら退室する調査兵団の幹部たちをよそに、リヴァイだけが浮かない顔をしていました。リヴァイは、エルヴィンが片腕を失っていることから巨人と遭遇した場合に運良く生きて帰れる確率は低いと考えています。

調査兵団を支え、様々な策を弄し、他の兵団も引き込んでクーデターを成し遂げた立役者であるエルヴィン。右手を失いハンディキャップを抱えたままの彼をむざむざ死地へ送ることは、政権運営や兵団の指揮系統にとって得策とは言えません。

しかしエルヴィン本人は自らが最前線に臨むことを譲らず、自分でなければ作戦成功率が下がると跳ね除けます。リヴァイはそれが建前であることを知っており、本当は団長の個人的な妄執がその原因であることも分かっています。

エルヴィンが調査兵になり真実を知りたいと願ったきっかけは、教師であった父が壁の秘密に言及し憲兵団に粛清されたからでした。それ以来彼は執念深く機をうかがい、王権を打倒しヒストリアという傀儡の樹立までやってのけたのです。

しかし単に権力の座についただけではエルヴィンが求める真実は手に入らず、その核心はどうやらグリシャだけが知っていた。その彼が隠していたものこそ、世界に失われた歴史を表す記録なのではないか。だからこそ、彼は自分がそこへ赴きたいと考えています。兵団のため、世界のため、そんなものはどうでもいいのです。すべては己の知的好奇心を満たすため。父によってかけられた呪いを解くための個人的動機に過ぎません。

リヴァイはその判断を「信じる」ことに決め、扉を開けて去って行きました・・・。

前夜祭

出陣の前祝いとして表向きには非公表で集められた調査兵たち。テーブルには肉、酒がズラリ。壁の世界では家畜を飼うだけの土地がなく、肉はたいへんな貴重品です。

目の色を変えて我先に手を伸ばす兵士たち。その中で戦場よりも殺気立ち、一際騒がしいのはサシャ&コニーの周辺。

ローストビーフの塊と思しき物体を両手で抱えむしゃぶりつくサシャと、それを後ろから裸絞めにして意識を奪おうとするコニー。白目をむき唸り声を発しながら肉塊に噛み付く妖怪芋女から肉を奪い取ったジャンですが、サシャはすでに意識がないにも関わらず本能でジャンの手を食いちぎろうとする始末。巻き添えで殴られて鼻から大量出血するマルロに対し、ミカサは正面から鳩尾を殴られてもビクともしません。

ひとしきり暴れまわったサシャは結局数人がかりで柱に括りつけられ、ようやく沈静化したのでした。

 

今回のエピソードは第3話「解散式の夜」と対になっており、あの時との状況の違いに懐かしさを感じるよう描かれています。作中ではわずか3ヶ月前の出来事ですが、連載期間で言うと6年近く経っていますので懐かしいのも当然でしょう。ミーナやトーマス、マルコ、フランツやハンナといった面々はいなくなり、ライナー、ベルトルト、アニは敵対してしまいました。

一方、変わらない光景もあります。

エレンとジャンは些細な口論から殴り合いに発展。ジャンがミカサに横恋慕してエレンを責めるのも変わらずです。あの日はミカサがそこへ割って入りましたが、今はアルミンと並んで笑顔で見守るだけ。これまで育んできた絆がなせるワザなのでしょうか・・・。

結局サシャは柱に縛られ猿ぐつわを噛まされたまま恨めしそうに足をばたつかせて呻くだけで、何も食べることなく宴を終えましたとさ。

 

夜は更け、軒先に腰を下ろす幼なじみの3人。彼らはまだ誰も欠けていません。

あの頃はがむしゃらに「力」を求めていたエレンですが今はすっかり毒気を抜かれてしまい、「他人に嫉妬しても仕方ないよな、それぞれができることをやって協力しようぜ」的な発言。おっさん臭くなったなあ・・・w

まあ、実際にはこの場で誰よりも強大な力を持ってるのはエレンなので自信や自惚れが無意識のうちに余裕を生んでいるのかもとも考えましたが、それは少し意地悪な見方でしょう。素直にここしばらくの激闘をくぐり抜ける中でいろんな経験が彼にそう言わせたとしておいた方がよさそうです。

 

最初に壁の外を見たいと思ったのはなぜだったか・・・そう、子供の頃、アルミンとエレンが二人で隠れ見たご禁制の書物。塩の湖、炎の水、氷の大地、砂の雪原。そこに書かれている世界をひと目みたい。抑えられない探究心から彼らは調査兵団に入りたいと願い、それは本来の望んだいきさつとは違う形で実現してしまいました。

そんな思い出話を戸板越しに聞いていたのはリヴァイ。

この場面をより深く味わうために、スピンオフコミック「悔いなき選択」を手に取ることをおすすめします。リヴァイのかつての友、イザベルやファーランが願ったことは何だったか。かつての自分たちとエレンらの姿を重ね、リヴァイは何を思うのでしょうか・・・。

出陣の朝

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出発は非公開ではあったのですが、肉の仕入先であるリーブス商会の若き会長フレーゲルから情報が漏れたようです。街路は調査兵団の見送りに出た市民で賑わっていました。

税金の無駄遣い、巨人にエサをくれてやるだけの組織と罵倒されるのが常であったエルヴィンにとって、これだけ好意的に見送りがあったことなど記憶になく・・・。エルヴィンは市民に応え壁上から雄叫びを上げるや、そのまま全隊へ進軍を命令。調査兵団最大の作戦がいよいよ始まります!

 

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シガンシナで夕日をバックに待ち受けるのはライナーとベルトルト。しばらく見ないうちにライナーがちょっと美形に、ベルトルトがややワイルドになっている気がします。

今号はつかの間の休息にほっとさせられる回でもあり、また物語がここで転機を迎えるよという明確な区切りでしたね。

次号からはまた陰惨な展開が待ち受けていることでしょう。

つづく。


今号の別冊少年マガジンの目次前半。進撃!巨人中学校が2話、進撃の巨人が2話、スピンオフが2話・・・もう進撃の巨人関係だけ別の雑誌にまとめちゃえばいいんじゃないかなw

mokuji

08/07に最新17巻が発売されてます。収録範囲は67話~70話。巨人化したロッドレイスとの激闘、ケニー・アッカーマンの逡巡が見どころです。

進撃の巨人(17) (講談社コミックス)

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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