進撃の巨人 ネタバレ考察

(115)支え

リヴァイの手で腹に突き立てられた雷槍を、自らの意志で起爆したジーク。
四散する肉体、喪失する意識。
走馬灯の中で彼が見た過去、そして決意。
無念のまま息絶えたジークの亡骸に近づく一体の巨人。
そして驚くべき現象が起こる・・・。

進撃の巨人 第115話 支え
別冊少年マガジン2019年4月号(3月9日発売)掲載

今回のストーリーラインは

①ジーク、死んで謎の少女に出会う
②リヴァイ死亡確認!
③イェレナとピクシス
④ピーク、エレンへ銃を向ける

の4本です。とっ散らかっていますが順番に見ていきましょう。

ジークの走馬灯

前回のラストで、ジークは土手っ腹に突き立てられた雷槍を自ら起爆し、乗っていた馬車ごとリヴァイを吹き飛ばしてしまいます。これにどんな目論見があったのかと言えば・・・特になかった。

ワン・オア・エイトの賭けだったらしく、河原に上半身だけで横たわったジークは目も耳もやられており、だめか・・・死ぬのか・・・と諦めに思考を覆われつつ、そのままブラックアウトします。脊髄の下半分が吹き飛ばされたジークの身体からは一筋の蒸気すらも出ておらず、再生する様子はありません。雨足が強まり打ちつける中、開かれたままの双眸からは光が失せ、周囲には動くものもなく・・・ジークは息絶えたように見えます。

その直後、ジークの近くに「無垢の巨人」が一体現れました。今までどこに潜んでいたのか? 巨人は膝立ちでジークへ這い寄ると、自らの腹を両手で裂き、はらわたの奥へジークの身体をズブズブとしまい込みます。巨人の正体も目的も全く分かりません。

ジークは無念の走馬灯を見ていました。

ジークはクサヴァーから「不戦の契り」を回避し始祖の力を発現させる抜け穴を教わりますが、その実現のためには協力者が必要でした。抜け穴とは「始祖」と「王家の血を持つ巨人」との接触であり、ジークは後者で、始祖が力を解放するための鍵にしかなれません。目的を同じくし、信頼できる協力者が始祖の力を持っていて初めて、ジークの「エルディア人安楽死計画」は実現可能となります。

おさらいですが、「安楽死計画」とは始祖の道を通じて全てのエルディア人へ肉体の改変コマンドを打ち込み、子孫を残せなくすることで緩やかに民族浄化を行うという内容でしたね。これに賛同し信頼できるエルディア人を探し出して始祖を継承させた上で、その人の意志にエルディア人の命運を任せるしかないとは、結構リスキーですしハードルも高い。そもそも始祖の所在すらハッキリ分かってない状態でこれですから、計画としてはかなり遠大と言えます。

父代わりとして精神的な支えであったクサヴァーを継承の儀で食った後、始祖奪還計画の後詰としてパラディ島へ出向いたジークは、そこでライナーとベルトルトからエレン・イェーガーなる少年の存在を知らされます。グリシャが楽園送りを生き延び、パラディ島で子を設け、王家から始祖を奪って息子へと継承させている・・・。グリシャがエレンの中でいまだレジスタンスを"続けて"いることを知ったジークは、一人悲嘆に暮れていました。腹違いの弟が、自分と同じようにグリシャに洗脳され、利用されている。それを救ってやらなければならない・・・。

そしてシガンシナでエレン本人と対峙したのが21巻、83話です。

シガンシナ奪還戦の辺り、ジークの視点に立って読むとまた別の味わいがありますので再読をおすすめします。読むたびにちょっとした発見があって面白いですよ。

ジーク、ライナー、ベルトルト、ピークが揃っていてなおシガンシナでまさかの敗北を喫し撤退した後、エレンたちは生家の地下でグリシャの手記から世界の真実を知りました。ジークはイェレナを介して秘密裏にエレンと接触し、己の意志と計画を伝えました。エレンはそれに応じる恰好で、負傷兵の姿でレベリオへ独断単身にて潜入。ジークと再会を果たします。

エレンは式典でヒストリアの手に口づけをした際、それまで不鮮明だったグリシャの記憶が蘇り、教会地下洞窟でフリーダらを皆殺しにした場面を思い出していました。(22巻90話)

その時のエレンの鬼気迫る表情の意味が、当時の僕には理解できませんでした。90話の感想記事では驚くべきことに、このくだりについては一切触れていません。僕のことですから、おそらく考えるのが面倒でスルーしたのでしょう。チッ、反省してまーすw

で、エレンがジークへ語った内容によれば、この時エレンはグリシャの行動(と、エルディア人や巨人の存在そのもの)に対して否定的な感情を持ったらしい。そしてパラディVSマーレの戦争という小さな枠組みで戦力として活躍するのではなく、世界のありようそのものを変革するために自分の命を使いたいと強く考えるようになっていきます。

そこへ、イェレナの接触があり、ジークの思想と計画を打ち明けられたエレンは驚くほどすんなり安楽死計画へ賛同を示します。レベリオで会ったジークに「兄さん」と呼びかける始末。心強い理解者を得て思わず涙ぐむジーク。

ん?ここでガッチリ握手して始祖の力を発動させればよかったのでは・・・?

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エレンの真意はいまだ見えず

ここからは回想ではなく時系列のおさらいですが、この後エレンはファルコに手紙の運び屋をやらせてレベリオへ調査兵団を呼び寄せ、パラディへ宣戦布告したタイバー公を殺害し「戦鎚」を捕食。ジークを表向きは新生エルディア国への協力者(地ならし発動のための部品)として亡命させ、兵政権へ身柄の受け入れを求めた。

しかしザックレーらはその力を危険視し、独断専行が危ぶまれるエレンともども処刑して巨人を別の兵士へ継承させようとしたので派閥が割れ、英雄エレンの下で地ならしの抑止力をもって外交的勝利を収めようとしているのがフロックたちイェーガー派。他方、地ならしは必要と分かっていても、腹の底が知れないエレンとジークにその引き金を委ねるのは危険だと足踏みしているのがザックレーら守旧派。結果的には守旧派の危惧は当たっているわけですが、ジークやイェレナは元よりザックレーらの動きを想定しており、ジーク汁ワインを兵団へばら撒いてある。

イェーガー派はまずザックレーを暗殺。蜂起してハンジ団長を拉致し、ジークの身柄引き渡しを求めて拘留地まで案内させている途中。軟禁状態にあったエレンは自力で脱獄しフロックたちと合流。ハンジを拉致るついでにアルミンをボコり、ミカサを泣かせ、ジャン・コニー・ガビ、おそらくファルコも一緒にシガンシナへ連行。ジークはエレンとの待ち合わせに出向こうと脱走を試みるも、リヴァイによってまたも計画を阻まれ、待ち合わせの場所へ行けなかった。リヴァイの操る馬車でいずこかへ運ばれていく途中で自爆、今に至る・・・。

ここまで読んでいて疑問点は4つです。

①エレンのモノローグがないので、安楽死計画への賛同が本心か演技か分からない
②ジークの口ぶりではエレンと会う日時と場所は決まっているのに、エレンがハンジに拘留地までイェーガー派を案内させようとしている理由
③なぜジークとエレンはレベリオで対面した時に始祖の力を解放しなかったのか?
④リヴァイはジークをどこへ連れて行こうとしていたのか?

脱獄以降、エレンはあからさまに露悪的な振る舞いをしていて、何を考えているかいまいち分かりません。グリシャらの記憶によって人格に影響が出ている可能性もありますが、少年時代の彼の性格からは考えられない変わりようです。ジークに賛同するエレンの言葉をジークはすんなり受け入れていますが、エレンが本心で安楽死計画を願うものでしょうか? 戦え、戦えと、脱獄前に独房でつぶやいていた彼がですよ。ハンジに「何と戦うの?二回戦もあるの?」と適当なツッコミを入れられていますが、これも伏線ではないでしょうか。アルミンやミカサにわざと嫌われるような事を言ったり、何か真意があるように感じるんですよね。

ジークは脱走する際、エレンが待ち合わせの約束を覚えているか不安を口にしていました。一方でエレンはジークの居場所を探そうとしています。この行き違いが意味するものは一体・・・?

↑113話より。「場所と時間覚えているんだろうなエレン」

↑27巻。「ジークの居場所を特定する」

↑112話。「お前らがジークの居場所を教えるってんなら オレ達は争う必要はねぇ」

悪ぶって恰好つけてるエレン、まさか約束の場所忘れちゃったの・・・?

まあこのくだりは前にも書いたのですが、エレンはハンジにイェーガー派を拘留地までゾロゾロと案内させて時間を稼ぎ、その隙に単独でジークと接触するつもりだったのではないか、と予想しています。実際、今回フロックはハンジを連れて雨の中行軍していますが、エレンはシガンシナの兵営と思われる施設でガビに「ファルコを助けたければ協力しろ」と持ちかけていて、別行動を取ってますからね。

で、タイミング良くピークがガビを救いに突入しエレンへ銃口を突きつけている場面で次号へ続くわけですが、おそらくエレンは手間が省けたとばかりにガビを渡し、ファルコもすんなり返すでしょう。エレンがガビに要請した「協力」とは侵入者をおびき出すことですから、既に目的は達しています。

問題はおびき出した後に何をするかですが、捕らえて始末するような単純な目的ではないはず。それなら別にエレンが直々にガビのところへ来る必要はありません。交渉や伝言など隠れた目的があると推察されます。

そもそもピークが単身でパラディ島にいる理由もよく分かりません。マーレ本国ではジークは裏切って亡命したと考えられていますから、それを始末する目的で潜入しているのか。ガビやファルコはまだ候補生ですから現役の戦士であるピークが命がけで助けるほどの重要性はないはず。

ピークがいくら巨人とはいえ、敵の本丸でエレンと直接対峙して敵対行動を取るのはかなり無謀と考えられることから、ピークはピークでエレン相手に何かを伝えるとか持ちかけるとか、隠れた目的があるのではないでしょうか。もしかするとマーレの工作員としてではなく別の立場でここにいるのかもしれませんよね。実はピークもジーク側とか。

そもそも戦士隊はエルディア人です。身内を人質にされ、名誉マーレ市民の待遇と引き換えにマーレに従っているだけです(ガビのように洗脳教育を受けている場合もありますが)。ジークの出奔を知り、自分たち戦士隊も協力してマーレに反旗を翻そうぜ!と盛り上がっている可能性も無きにしもあらず・・・と考えたのですが、ピークがパラディのエルディア国にすり寄る気なら、エレンの護衛をいきなり刺殺してるのはおかしい。

とすると、事前に戦士隊とエレンの間で密約があり、その隠れた思惑を実行するため、工作員の所在をガビを使って突き止めようとしていたのかもしれない。ハンジを騙し、ジークやイェレナを騙し、イェーガー派を騙し、幼馴染や104期も騙し、本当に手を結んでいるのは戦士隊! どんだけ周到な策士なんだエレン!・・・と、適当な思いつきを適当に書き散らかしたら話がそれてしまいましたが・・・どこからでしたっけ・・・そうそう、ジークが自爆して無垢の巨人にくぱぁされた後です。

ジークの走馬灯は終わりを向かえ、意識の最後のひとかけらが潰えようとしたその時、彼の目に見慣れぬ少女の姿が映りました。擦り切れた服に水桶を抱え、茫漠とした砂漠のような場所で、土をこねてジークの失われた身体を作っていきます。美しい空には幾本もの光がまるで道のように・・・。

そしてジークが目を開けると、なんということでしょう。そこには蒸気を吹き上げて溶けおちる無垢の巨人と、そこから這い出る傷一つないジークの姿が! しかも雨が上がってチンダル現象で光が差し込む演出つきです。この世界に神が降臨なされたのじゃ・・・。

なぜいきなり無垢の巨人が出現してジークを再生させたのかはよく分かりませんが、この少女が最初のユミルなんでしょうね。

リヴァイ、死亡確認!

その少し前。

拘留地の近くまで来ていたフロックらは雷槍の爆発音を聞き、音の原因を探ろうと隊の向きを変えていました。

やがて四散したジークの身体、吹き飛んだ馬車、そして無垢の巨人に遭遇。何が起きたか理解できずボーゼンとするフロック。さらに河原に血塗れで転がる兵士を見つけ、慌てて駆け寄るハンジ。抱き起こした兵士の顔は額の右側から顎にかけてザックリとえぐれ、目から鼻から血を噴いて意識を失っています。

「死んでるよ」

ハンジはリヴァイを抱えて死亡を告げます。雷槍が至近距離で爆発すると内蔵がズタズタになるんだよね~事故で見たわ~、外傷が大したことなくても内蔵がね~、あーこれは死んでるな~間違いなく死んでるな~(チラッ

フロックは冷たい瞳でハンジとリヴァイを見下ろし、自分が脈を確認すると言います。ハンジは冷や汗タラリ。バレバレですよ団長・・・。フロックがリヴァイに手を伸ばそうとしたその時、ちょうどジークの走馬灯の上映時間が終わり、無垢の巨人が勢いよく蒸気を吹き出しました。通常の巨人が死ぬ時と異なり、噴出した蒸気が内側へ吸い込まれるように消え、その中心から立ち現れたのは・・・すっぽんぽんのおじさん!! ちょ、前隠して前!とフロックらが思わず赤面した一瞬の間隙を突き、ハンジはリヴァイを抱えて増水中の川へ決死のダイブ。何名かが馬で下流へと追っていきますが、まあ逃げ切るでしょう。漫画ですからね。

再生したジークは澄み切った瞳で「行こう、俺達はただ進むだけだよな、エレン」などと供述しており、「ザッ」という効果音を背負って全裸で歩き出しましたが、そのままパトカーの後部座席に乗り込むクソコラが簡単に作れそうだなと思いました。つーかどこに行くの・・・w

ジークは普通にイェーガー派と合流してしまったので、さっきまで僕が熱弁を奮った、フロックたちを出し抜いてエレンはジークと密会するつもりで~うんぬんの説は途端に信憑性がなくなりました。

イェレナとピクシス

イェレナはピクシス、オニャンコポンら数名と共に食卓を囲んでいました。すでにジーク汁の存在は明るみに出ており、大方の予想通りイェレナはそれを脅迫の材料にして政権を操るつもりのようです。

この反乱によってジークとエレンは邪魔されることなく接触を行い、地ならし実験をもって諸外国へ抑止力をアピールする。やれやれ・・・と、ピクシスは無邪気にも考えているわけですが、彼を見据えるイェレナの瞳はどこまでも昏いまま。ジークの寝首をかこうとしたピクシスらには神罰が下るであろうと、料理には一口も手を付けないまま、冷たく言い放つのでした。

ジークのエルディア人安楽死計画が明らかになった今では、イェレナがそれに心酔しているのは不思議な気もしますね。彼女はエルディア人ではないですし、安楽死計画がかなったとして直接の関係はありません。

彼女は祖国復興を夢見ているはずなので、エルディア人が絶滅した後で空いた土地に国でも作るつもりなのか? いや、空いてる土地は強いものが取るに決まってますから、やはりイェレナの立場で見れば、エルディアに力をつけさせ、協力して恩を売り、マーレを滅ぼして溜飲を下げた後、エルディアの後ろ盾で祖国を復興するのがベターではないでしょうか。

ジークの走馬灯の中でも、イェレナは仲間たちに対し「マーレを打倒すべく団結し機会を待つ」「マーレを討つために巨人を利用する」と演説していますから、ジークの最終的な目標地点とは大きくズレているように思えますが・・・。途中からジークを崇めること自体が生きる目的になっちゃった系かな?

 

ジークの目的が明らかになった今、もっぱら気になるのはエレンの真意ですね。

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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