進撃の巨人 ネタバレ考察

(114)唯一の救い

エレンとの合流を目指し巨大樹の森で行動を起こした「獣の巨人」・ジークであったが、リヴァイ疾風怒濤の単騎駆けによりあえなく逃走を阻止される。

あっさりと本体を引きずり出されたジークは身柄を拘束され、荷馬車でいずこかへと運ばれていく道すがら、朦朧とする意識の中で過去の光景を反芻していた・・・。

進撃の巨人 第114話 唯一の救い
別冊少年マガジン2019年3月号(2月9日発売)掲載

ジークの少年時代

はい!
今回はジーク少年時代の回想入りまーーーーす!

なお、「現在」のジークは巨大樹の森から逃走を図るもリヴァイ1人に完敗を喫し、土手っ腹に雷槍を突き立てられ脚を切り落とされた状態で、馬車の荷台に転がされています。失神寸前の夢見心地で記憶が過去に遡ってしまったようです。

久々の登場すぎて説明がないと誰だか分からん、若き日のイケイケ活動家グリシャと、妻ダイナ。お坊ちゃんだった頃のジークも胸に抱かれております。

鐘楼の展望台から街を見下ろしているだけで清掃員にバケツで汚水をぶっかけられ説教されるなど、これでもかと分かりやすい被差別描写の後、ジークはマーレの戦士候補として選抜されることを目指し募兵に応じます。というかグリシャたちが応募させます。この辺りの経緯は、21巻86話~22巻87話を併せて読み返すとよいでしょう。

この時はグリシャの視点から述懐されており、ジークが親の反政府活動を密告した動機については、グリシャとダイナがジークを来るべき革命の寵児として育て上げようと躍起になるあまり過剰な負担をジークへ押し付け、親子の愛情を顧みることがなかったためだと解釈しています。22巻87話より。ジークの肩を支える黒髪の男が先代の「獣の巨人」、クサヴァーです。

27巻107話で、ジークはヒィズルのキヨミ様と会談。そこで自らが真のエルディア復権派であると宣言しています。両親を密告した理由については、レジスタンスの摘発が目前であることを知り、一族が全て楽園送りになる前に通報して自らと祖父母の処刑を避けるため、と説明しています。今回はその時のエピソードを掘り下げているわけです。

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先代「獣の巨人」

トム・クサヴァーは巨人研究者から戦士隊へ入った変わり種で、訓練生だったジークと出会ったのは偶然でした。好奇心から寿命と引き換えに巨人になったと言って憚らないクサヴァー。キャッチボールを通じて仲良くなった二人は次第に打ち解け、現体制への不満を共有する関係になっていきます。

ジークは両親の期待を一身に背負い、戦士候補として選抜されるべく訓練に臨んではいましたが、残念ながら優秀とは言えず、むしろ落第スレスレといった様相です。グリシャは落胆してヒステリックになり、ダイナも苛立ちます。家には居場所がなく、訓練でも落ちこぼれで雑用ばかりやらされ肩身が狭いジークは、似たようなはみ出し者のクサヴァーが唯一の理解者でした。

そんな日々が続き、ジークがうすぼんやりと収容区の変えられない現実を理解しはじめた頃。軍施設の中で官憲たちの噂話が聞こえてきます。グリシャ率いるレジスタンスの摘発が近いという情報でした。

ジークは身の危険を両親へ知らせようとしますが、思想に酔っている彼らは聞く耳を持たず、情緒不安定で目が座っています。このまま手をこまねいていては一族郎党揃って楽園送り。さよならクサヴァーさん…と涙目で告げたジークへ、この研究者は密告の入れ知恵をします。両親を告発することでマーレへの忠誠を示し、自分は助かれと。

この目論見は図に当たり、結果的にジークは戦士候補として隊に残ることができました。ジークは本来戦士になれるような体力がなく、インテリ系だったんですね。

時は流れ、クサヴァーの任期満了が近づきます。ジークは手足がスラリと伸びた美?少年に成長し、相変わらずキャッチボールに興じていました。クサヴァーは戦士隊にいながら巨人に関する研究も続けており、その短い生涯をかけてまとめた成果をジークへ伝えます。

クサヴァーの研究、ジークの閃き

クサヴァーの関心は「始祖の巨人がユミルの民にもたらした様々な影響について」です。

彼の説によれば、「始祖の巨人」はユミルの民の記憶を操るのみならず、「体の構造をも変えてしまうことができる」らしいのです。

例えば、当時の王が「ユミルの民」を特定の疾病にかからないよう体の設計図を書き換えた史実もある…とクサヴァーが言及した時、ジークはふと思いついたことを口にします。

「…じゃあさ、『ユミルの民』から子供をできなくすることもできるかな?」

戦慄するクサヴァーに、ジークは続けます。そもそも僕らは生まれてこなければ苦しまなくてよかったのだ、と。

極めてシンプルな反出生主義の考えですね。この考えは現実にも存在しています。人が生まれなければ、個人の苦しみはもちろん、あらゆる犯罪や環境汚染も起こらない。飢餓も戦争も生まれない。究極のエコは子供を作らないことだと、まあそんな感じです。

そしてクサヴァーもまた、人種差別による悲しい過去を背負っており、自分なんか生まれなければよかったという思いを抱えていました。敬愛するクサヴァーの同意を得て反出生主義の正当性を確信したジークは、強い瞳で宣言します。自分が「始祖の巨人」を奪い、エルディア人を苦しみから解放すると。これがジークの目的なのです。

ジークが「エルディア人を救う」と言いながら、ウトガルド付近で登場して以来一貫して人命を軽く扱っていた理由がこれではっきりしましたね。ジークにとっては、死は唯一の救いです。残酷な世界で生きる苦しみから解放される「贅沢」なのです。自らはあらゆる苦痛を取り払う救世主だと信じ、エルディア人を殺しまくっていたというわけ。

ようやく判明したジークの最終目標は、既にあらゆるフィクションで語り尽くされた安いラスボスの思想でした。今すぐ全員が死ぬわけではありませんが、子孫を残せないようDNAを書き換え、緩やかに絶滅することを目指します。

ジークの過去を知った上でその発言だけを見れば、陳腐ではあるがまあ分からんこともないという感じです。

ただ、イェーガー派がこの「エルディア民族の絶滅」という思想に同調しているとは思い難いですし、そもそものエレンがジークに心から賛同しているかは分かりません。彼の性格からして、抗うことをやめ緩やかな死を選ぶというのは考えにくい。ジークの目論見とは別に、エレンはジークを出し抜いてDNA書き換え能力を利用する算段がつけてあるのではないでしょうか。

回想中、しばらく朦朧としていたジークですが、突如カッと目を見開いたかと思うと自らの腹に突き立てられた雷槍を起爆。慌てて身を翻すリヴァイをよそに荷馬車は爆散。ジークの身体も腹から真っ二つになります。ジークはこれでもまだ死なないでしょうが、すぐに再生できるわけでもなく、よしんば巨人化したところでリヴァイからは逃げられないでしょう。

ジークが何の策もなく自暴自棄になるとは思えませんが、何を考えて自爆したのか、答えは次号をお待ち下さい・・・。

つづく

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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