エレンとベルトルトを背負ったまま夕日に向かって逃走する鎧の巨人。
クリスタを拉致して鎧の肩に乗るユミルの巨人。
それを馬で追撃する3兵団の混成部隊。
エレンの助力なしに、調査兵団は人間だけで鎧の巨人を止めることができるのか…
「進撃の巨人」第48話 誰か
別冊少年マガジン2013年9月号掲載
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猛追
鎧の巨人がエレンを背負って巨大樹の森から抜け出るのを見るやいなや、エルヴィンは全隊に追撃を指示。森で巨人と交戦中の憲兵団からは、こちらを助けず見殺しにするのかと罵倒されますが、人類の一大事です。構ってられません。
「何かを成し遂げられる人は 何かを捨てることのできる人だ」キリッ! byアルミン
ジャンやアルミンと共に馬で駆けるミカサは、壁の上でベルトルトとライナーの殺害を躊躇し絶命に至らなかったことを激しく悔いていました。今度はどんな手を使っても必ず殺す。邪魔をするならユミルごと…!
リヴァイ兵長が負傷でお休みの今回、戦力の要はミカサですがここしばらくの彼女は大した活躍をしていません。巨大樹の森で女型と交戦した時は感情に流されピンチに陥り、街中でのアニ捕獲作戦の時から「話しあうだけ無駄、さっさと殺して片付ける」的なことを度々口にしますが、それを実行できた試しがない。やはり強すぎる設定のキャラは作中での扱いが難しいのでしょうか。スペック通りの強さを安定して発揮させると「もうあいつ一人いればいいんじゃないかな」状態になってしまいますからね。
ユミルとクリスタ
口からクリスタを吐き出し握りしめたまま、うなじから自分の頭だけ突出させたユミル。巨人化の練度が高まるとこういうことまでできるようになるのですか。若干涙目でむせてますので、感覚としては喉に指を突っ込んで吐くようなものかもしれません。
ユミルはクリスタを懐柔しようとしますが、説明が要領を得ず反発されます。とても60年以上生きてるようには思えない子供じみたやり取りで、読んでる側からするとこの上なくもどかしい場面です。そこちゃんと説明してよ!っていう。
クリスタはライナーとベルトルトがユミルを脅して無理やり協力させているのだと考え、自分はユミルの味方で共に戦うと言います。ベルトルトが最上級に情けない顔で「逆だ・・・」とつぶやくのが今回の笑いどころ。ユミルに捨て身の脅迫をされてクリスタ誘拐に協力したのは彼らの方でした。
手を離すことはできないとユミル。その理由を彼女はこう言います。
「正直に言うと・・・お前をかっ攫ってきた理由は・・・私が助かるためなんだ・・・」「私は昔こいつらの仲間から『巨人の力』を盗んだ こいつらの力は絶対だ 壁の中にも外にも私の逃げ場はない」「このままじゃ私は殺される でも・・・お前をヤツらに差し出すことに協力すれば・・・」「私の罪を不問にしてくれるよう こいつらが取り合ってくれると言った・・・お前が壁の秘密を知る壁教の重要人物だからだ」「この世界の状況が変わった時 お前といれば近い将来・・・保険になると思っていた」
(中略)
「頼むよヒストリア・・・私を・・・!私を助けてくれ!」
さて、これはどう読むべきなのか。
前回まで時間をかけて交わされていた会話の内容とは食い違いが多すぎます。ユミルは自分がライナーらに付いて行けば助からない(食われる)ことをすでに覚悟しており、一方で「この世界には先がない」ことも承知しています。
だからこそクリスタだけはこの世界から救いたいと考えてライナーたちに協力することを決めたはずなので、自分が助かりたいという今回の発言とは明らかにムジュンしています!
クリスタを連れ去る理由がユミル自身の利益のためだと方便を使い、クリスタのお人好しスイッチを入れさせ協力を促している、と考えるのが妥当でしょう。
戦闘開始
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鎧の巨人はそれほど速く走れず、ついに追撃部隊がライナーに追いつきます。エレンは目を覚ましベルトルトの背で暴れますが、手足を拘束され猿ぐつわを噛まされており決定力はありません。すでに両手の再生は済んでいるようです。ライナーの脚に斬りかかるハンネスですが、速度を犠牲にしてでも硬質化を解かない鎧の巨人に文字通り刃が立ちません。
一応鎧の隙間にアンカーは刺さりますがユミルがご丁寧にワイヤーをはずして放り投げるというような防御策を取っています。今のところ彼女は兵士を叩いたり掴んだりして積極的に殺す気はないようです。
そこへ瞬く間に斬り込んでくる一陣の旋風。本作メインヒロインのお出ましです。ミカサはユミルの目を一刀で潰し、返す刀でベルトルトへ肉薄しますが後数十センチのところでライナーに阻まれ、態勢を立て直したユミルが邪魔立て。
やはりユミルから排除する・・・!
明確な殺意でユミルへ襲いかかるミカサの前に身を挺して飛び出したのはクリスタ。彼女はすでに拘束を解かれていますが、自分の意志でユミルを守るために行動しています。ユミルを殺すなと懇願するクリスタですが、ここでもミカサは悠長に問答を始めてしまいました。やっぱりミカサって優しいんだなあという印象を持ちます。
「私が尊重できる命には限りがある」
この作品に繰り返し登場するテーマの一つですね。世界は残酷だから戦って勝たなければ生きられない。そして勝つために何かを選び、何かを捨てなければならない。
ミカサは本気だとクリスタは悟り、ユミルに抵抗するなと呼びかけます。案外素直に沈黙するユミル。エレンの救出の障害となるならクリスタごと斬り捨てそうなミカサを前にしては退かざるをえません。
ベルトルト・フーバー
巨人からの攻撃がなくなったところで104期メインキャストの集結。ベルトルトはエレンを担いだままライナーの頸動脈のあたりに乗り、ライナーの両手で守られています。そこへ群がる同期たち。
ジャン、ミカサ、コニー、アルミン。・・・結晶化したアニと、別行動しているサシャは蚊帳の外です。サシャは今頃父親たちと夕飯の支度でもしているのでしょうか。
思い思いの問いかけを放つ彼ら104期ですが、ライナーは沈黙。ミカサはまたも「躊躇しない」と口にしますが、お前ついさっきもユミルを殺せなかっただろ!と突っ込まざるを得ません。いつからこんな口だけ番長になってしまったのかw
ベルトルトは寄ってたかってイジメられた普段おとなしい子がブチ切れる様相そのままに怒鳴り返します。
「誰が人なんか殺したいと思うんだ!!」
ベルトルトたちが単純な快楽殺人者や破滅思想のシンパでないことは明白で何かしらの事情があり、それは壁の中の住人を大量に殺害することと大局的に見て天秤にかけられるようなことであるはず。その理由が何なのか全然見えてこないのでじれったいのですが、「世界に先がない」といった発言から、要するに彼らはこの世界の行く末を知っている。近くこの世界には何らかの避け得ぬ災厄が起こり、人類が全て死滅するはずです。彼らの探し物(座標)がそれを阻止するために必要な行動なのか、あるいはその災厄自体が彼ら(巨人組)の世界を維持するために必要なアーキテクチャとして組み込まれているのか。
例えば現実世界の私達は豚を養殖して食べます。豚の群れからすると人間は理不尽な捕食者であり、壁の中で囲われた「家畜の安寧」も出荷の日に終りを迎え、群れは全て死にます。畜産というシステムはそういう設計になっているわけですが、そこへ人間が何らかの手段で豚に乗り移り、豚の社会で何年も生活したらどうなるでしょうか。仲間の豚さんに「お前人間だったのかよ、裏切り者!」と罵られたら・・・誰が好きで豚を殺したいもんか!と叫びたくなるかもしれませんね。ベルトルトが抱えているのはそういう葛藤ではないかと思うわけです。
この苦悩と孤独を誰かにわかってほしい、自分の存在を見つけてほしいと涙を流すベルトルト。ユミルもその言葉に感じ入るところがあるようです。
巨人側からの攻撃はありませんが、鎧を剥がす手段もなく膠着状態に陥る追撃部隊。このままどこまで逃げるつもりなのか・・・と思われたその時、ライナーの行く手正面方向から巨人の群れが出現!先導しているのはエルヴィン団長が率いる部隊です。
どうやら鎧の巨人が遅いのをいいことに馬で先行し、巨人を集めて誘導してきたようです。この群れにライナーを襲わせる算段なのでしょうか?
怒りか後悔か、久々に口を開け歯噛みする鎧の巨人。次号、大混戦!
本日(8/9)、コミックス11巻と巨人中学校の2巻が発売になっています。
ガイドブックOUTSIDE攻は一ヶ月延期で9/9発売だそうです。アニメ原画集が23日。
あとは非公式ですが謎本が何冊か出てますね。興味あるので筆者も買ってみます。