ウォール・ローゼの内側、ウォール・シーナから見て南側の地域に突如として出現した巨人の群れ。
各都市から壁が破壊されたとの知らせは入っておらず、巨人はどこから侵入したのか未だ不明。
しかし肝心なことはそれを各方面へ伝達し、周辺住民を避難させることでした。
非武装で駐留していた104期生たちがそれぞれの方面へ伝令と避難誘導を受け持って馬を駆ります。
壁の破損箇所を確認するため、南方向を目指す班にはコニー・ライナー・ベルトルト。
一方、北方面へ進み近隣の避難指示にあたる班には、この近くの村出身であるサシャがいました。
今回はこの時のサシャの行動が描かれています。
進撃の巨人 第36話 ただいま
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サシャは通りがかった村への伝達を他の班員に委ね、自身は単騎で故郷の村を目指しました。馬の背中でサシャの頭を去来したのは、かつて訓練兵団に入る前、村で過ごした父との思い出です。
この頃からサシャは盗み食いの癖があったようで、父親がそれに手を焼く様子が描かれています。
このシーンでは父娘ともに「方言」で話していますね。
僕は東北人なので詳しくわかりませんが、西日本の言葉のようです。どこ弁でしょうか? 九州のようにも聞こえますが・・・。
サシャ「奪われたんが悪い・・・はよ出てけばいいんに・・・」
父「奪ったんは巨人ぞ? 他に行き場があるんか?」
(略)
サシャ「狩りやめたら私達じゃなくなるやろ!? 何で私らを馬鹿にしてるヤツらのために・・・そんなことせんといかんの!?」
あまりに唐突な方言でちょっと笑ってしまったのですが、本題の会話の内容はというと、
・サシャは森育ちで外の世界の人たちと関わることに抵抗を持っており、今のままの環境で狩猟をして暮らしたがっている。
・父親は革新的な考えで、伝統ある狩猟生活をやめ森を開拓して農場にする方が多くの人の役に立ち、社会への義務を果たせるという意見。
たいていの漫画だとこれと逆の立場であることが多いですが、今回は父親が進歩的で、若いサシャの方が保守派。
古くからの生活を捨てようとする父親に猛反発するサシャですが、父はそれを彼女が臆病だからだと看破します。他人と向き合うのが怖いから嫌なんだろうと。どうやらそれがきっかけでサシャは訓練兵団に入ったようなので、それを認めて克己しようとしたのか、あるいは父への反発が根っこにあるのかもしれません。いずれにせよサシャにそこまで深い考え(理屈)があるようには見えませんので、割りと単純な理由なのだと思います。
そして彼女はそのまま調査兵団に入り、地獄を見て今に至るわけですが・・・そんな事情で故郷へは三年間で一度も帰っていませんでした。
三年の空白のため、サシャが見覚えのない新しい村ができています。恐るべきことに、すでに巨人がそちらへ向かったとおぼしき足あとを見つけたサシャ。急いで駒を進めます。
村では小型の巨人が一体、家の中で静かに「食事」をしていました。
母親がゆっくり生きながら食べられているそばで、身動きもできない少女。そこへ薪割り用の手斧を持ったサシャが巨人のうなじをめがけ後ろから渾身の一撃!
しかし対巨人用の刃と違い、斧ではうまくうなじの肉をそぎ取ることができません。何度斬りつけても巨人の肉は即座に回復し、巨人は意に介さずゆっくりと食事を続けています。
斧がすっぽ抜け、そこでサシャは初めて部屋のすみにうずくまる少女の存在に気づきます。サシャの判断は、母親は諦めて少女を救出することでした。あいかわらずノロノロと食事をする巨人の脇をすり抜け、サシャと少女は家を出ます。
それを見て、今まで無反応だった巨人がゆっくりと家から出てきました。こちらへ向かってきます。馬がびびって逃げてしまい、テンパったサシャは手近にあった弓矢を取ると少女と一緒に走って逃げようとしますが
少女はすでに生きようとする気力がなく、助けに来たこともまるで余計なお世話とでも言わんばかりで走ろうとしません。
その瞬間、サシャの脳裏にフラッシュバックしたのは訓練兵だったころの日常のひとコマ、ソバカスの少女がサシャの丁寧語をからかう場面でした。
訛りが恥ずかしいから無理に丁寧語で取り繕ってるんだろ?と図星を突くソバカスの少女。さらに「狩猟以外の事を知らないから世間が怖い」「兵士を目指したのだって大方親にでも・・・」とかなり鋭い洞察を見せますが、ここで隣にいたクリスタから衝撃の一言が!!
「ちょっと ユミル」
え・・・!?
今回はストーリーの縦軸的には大した展開がない、いわゆる「サシャ回」だと思ってのほほんと読んでいたのですがここで驚愕の事実が判明します。なんとこれまで氏名未詳で「ソバカスの少女」と勝手に呼んでいたあの隊員の名前が「ユミル」。ユミルといえば当然思い出すのは、かつてイルゼ・ラングナーが接触した人語を解する巨人の
「ユミルのたみ ユミルさま よくぞ」という言葉。
今回は名前以上の情報は出てきませんが、ここに来て俄然このソバカス少女ユミルの存在感が増してきた感じです。物語の最初からこの少女の言動をチェックしなおしておいた方がいいかもしれませんね。単なるモブキャラではなかった。何かしらの重要な役割を担っている可能性が急浮上です。
さてそんな唐突すぎる回想は置いといて、現実のサシャは少女へ先に行くよう促すと自分は弓矢を構えて巨人の足止めを試みます。
なんと男らしい・・・。枢斬暗屯子さんのような雄叫びです。サシャの魂の叫びが少女にも伝わったようで、スタコラ逃げてくれました。もしやサシャ本人にびびったのか? あとはサシャが弓で巨人の目を潰して任務完了! 逃げた馬と少女を探して走ります。
そこへ通りがかったのは馬に乗った避難途中の住民の一行。先頭を進むのは三年前に別れたきりの、サシャの父でした。さっきの少女も一緒です。「君の名は。」に匹敵するすごい偶然・・・いや、運命力とでも呼びますかw
「あの子のために巨人と戦っとったのだな・・・?」
「うん・・・」
「サシャ・・・立派になったな」
「お父さん」「ただいま」
~Fin~
「進撃の巨人」にしては珍しく、綺麗で漫画的なエピソードになりましたね。途中「あれ・・・これサシャ死ぬんじゃない?」とビクビクしてました。一回巨人に抱きつかれて生還した例は片手で数えても指が余るくらいしかありませんが、今回は生き延びてくれたのでホッとしています。
今後は脱・丁寧語で同期にもネイティブスピーカーなサシャが見られたりするのでしょうか? キャラ変わってしまうので今までどおりなんでしょうね。多分。