ここ最近のお話
・リヴァイ班 リーブス商会と結託し中央憲兵を監禁、拷問。ヒストリアが王家の血筋であることを吐かせる。
・エルヴィン 王政府が人類の記憶を改竄していると考え、ヒストリアを切り札にクーデターを計画。ピクシスへ内応を持ちかける。
・エレン 巨人化の練度は上がっているが壁の穴を塞ぐための硬質化は糸口すら掴めず。
・憲兵団 エレンとヒストリアの身柄拘束を目論んでいる。
「進撃の巨人」第56話 役者
別冊少年マガジン 2014年5月号掲載
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明け方
エレンは夢を見ていました。
今日の夢ははっきりした内容で、ベルトルトとユミルの会話の記憶です。そして目が覚めても覚えていました。
エレンがそれをメモしてハンジに見せたところ、ハンジはどこかへ飛び出して行ってしまったようです。
伝令
リヴァイ班の隠れている関所跡には、エルヴィンから伝令の早馬が到着していました。
伝令役のニファが一息ついたところで、リヴァイはその内容を催促します。
リーブス商会の面々が同席しているのを 見て機密を口にすることを躊躇するニファですが、リヴァイは信頼関係が重要だとそのまま続けさせます。
商会の跡継ぎであるフレーゲルの生意気な態度にも寛容に接するリヴァイ。
粗暴で神経質で近寄りがたいと評される彼の人柄からは少し意外な印象も受けますが、リヴァイに人望があるのも確か。硬軟を使い分けて人心を掌握してきたのでしょう。
さて本題である革命の段取り…すなわちヒストリアを女王に即位させる方法…を伝令が口にしますが、当のヒストリアはキョトンとした顔で事態を飲み込めていません。
リヴァイらはサネスから聞き出した「レイス家が真の王家」という情報をエルヴィンには伝えましたが、本人やその他の班員へは話していなかったようです。
その場で寝耳に水のごとく自分が王家の血筋であり、革命の目的は女王として即位することだと知らされたヒストリアは絶句、狼狽。
リヴァイはヒストリアの精神状態に理解を示しながらも結論は「やれ」の一言。
震えながら拒否しようとするヒストリアの襟首を両手で掴み宙吊りにしながら、嫌なら力づくで従わせる、拒否したいのなら俺と戦い逃げてみろと宣告するリヴァイ。
ここからはリヴァイの演説ターンです。
リヴァイの演説
床へ落としたヒストリアを見下ろしながらリヴァイは自分の考えを述べます。
明日も無事で食事をし、ベッドで眠れる保証はどこにもない。
いつ巨人が攻めてこないとも限らず、明日全員生きているかどうか分からない。
そんな恐怖に怯えた暮らしから逃れようとして自分たちは戦っているのに、それを邪魔しようとする勢力がある。
そんな連中は自分が皆殺しにしてもいい。仮に人間同士が殺し合いをすることになっても、巨人に食われる地獄よりはそちらを選ぶ。
なぜなら人類同士の争いなら人類が全滅することはないからだ。
だが、自分たちが政権を獲ればそんな争いも止めることができる。
これから巨人や戦争によって死ぬ予定の者の多くを救える手段が目の前にある。
従うか戦うか今すぐ決めろと決断を迫るリヴァイ。
その迫力の前にヒストリアはやりますと答えるしかありませんでした。
「私の…次の役は女王ですね…? やります 任せて下さい」
ヒストリアはずっとクリスタ・レンズという役を演じてきました。優しく素直で明るい美少女、誰からも好かれる「女神」クリスタ。
母を殺され、家を追放され、居場所がなかったヒストリアは周囲から好かれながら美しく死ねるようにクリスタを演じ続けてきました。
それを見抜き言い当てながらも等身大で隣にいてくれたユミルはもう帰ってこず、そのせいで少しヤケになりそうだったヒストリア。そんな彼女にエレンは「今のお前も嫌いじゃない」的なイケメンワードを投げつけていました。罪です。
そんなこともあって少し平静を取り戻したように見えたヒストリアでしたが…ここにきてこの上ない強烈なプレッシャーが襲います。
どうせずっと本心なんか隠してきた。役が「女神クリスタ」から「女王ヒストリア」になっただけ…。
顔面蒼白、定まらない視線のまま任せろというヒストリア。
クリスタという呪縛から解かれ、また別の仮面を被せられてしまうのでしょうか。
段取り
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さて、ようやく伝令の本題です。ここまででこのブログ記事が1500字もあります。書く方も読む方も大変です。
伝令のニファが読み上げた紙面の内容は大方次のような内容でした。
(1)エレンとヒストリアを中央第一憲兵に引き渡す。
(2)リーブス商会に護送部隊を尾行させ、ロッド・レイス(ヒストリアの実父=本当の王)の居場所を探る。
(3)エレンが巨人化してその場を制圧、レイス卿の身柄を確保。
(4)巨人や壁の真実について情報を引き出し、クーデターをそのまま進めるか判断。
(5)続行の場合は傀儡(フリッツ王家)からヒストリアへ王冠の譲渡、新体制を樹立。
(6)背後の心配なく壁内の連携を取り、エレンを核とするウォール・マリア奪還作戦を実行。
エルヴィンは己の無知に謙虚で、レイス卿から引き出した情報により相手方に理があると判断すれば(4)の段階で兵を引くつもりのようです。
作戦始動
エレンとヒストリアの身柄引き渡しはその後すぐでした。
リーブス会長の息子フレーゲルは、父親が黙ってリヴァイに従うのが気に入らないようです。赤面しながらヒストリアをチラ見しシャドーボクシングを始めるフレーゲル。こういうバカで無能なドラ息子はたいていトラブルを呼びこむポジションですね。
会長は商人として人を見る目を養えと息子に諭し、ヒストリアに対してもリヴァイを擁護します。女王になったらリヴァイを殴ってみろと、冗談で元気づけようとする会長。巨人襲撃に際し荷馬車の前で啖呵をきっていた時とは別人のように朗らかでいい奴になってしまいましたね。ヒストリアは無言でうつむいたままですが…。
会長は巨人化するための小型の刃をエレンの全身に仕込むと猿ぐつわを噛ませ、憲兵たちの到着を待ちます。
現れたのは黒コートに黒い帽子、黒ネクタイとまるで葬式に行くかのような出で立ちの男。ヒストリアの母をナイフで殺害した実行犯その人でした。
黒尽くめの男は会長を外へ呼び出すと、唐突にひとつの質問をします。
「リヴァイ・アッカーマンって男を知ってるか?」
これまでリヴァイ兵長の姓が明かされていないのは理由があると散々言われてきました。実は王家の人間だとか、みなし子だからあだ名しかないとか…。
この男が口にした名が本当なら、リヴァイとミカサの関係は…。
男は続けます。
「リヴァイには色々教えてやったもんだ あのチビは俺の誇りだよ」
そして手慣れた動作で会長の喉を背後からナイフでかき切ってしまいました。5年前、ヒストリアの母をそうしたように。
部下らしき女が近寄り男へ声をかけます。
「アッカーマン隊長」
エレンに仕込んだ刃物はすでに発見され、エレンとヒストリアは憲兵団の手によりさらに強固な緊縛がされていました。
他の商会のメンバーも皆殺しにされたようです。ただ一人、小用のために中座し、木陰で父の死を目撃したフレーゲルを除いては。
移送中は対人立体機動装置を身につけるよう部下に命じた「アッカーマン隊長」。
憲兵団の中でも汚れ仕事を担う「対人制圧部隊」を率いているようです。
次回はリヴァイを過去の宿業が襲うのか? つづく
余談
最近進撃の巨人の専門情報誌のようになっている別冊少年マガジンですが、今月から電子書籍が配信されています。(講談社のプレスリリース)
別マガは平気で人を撲殺できるくらいの厚さと重みがあり購入時と収納時にかなり苦労しますので、お使いの端末によっては電子版もアリなんじゃないでしょうか。
あとは関連コミックスも出版ラッシュです。
進撃の巨人本編(13)、悔いなき選択(1)、Before the fall(2)、巨人中学校(4)。
特に本編13巻はユミルが去った後のヒストリアの様子が数ページ加筆されており、その他の場面も例によってちょこちょこ変わっています。
よりマニアックに楽しみたい方はコミックスを手に取ってみてはいかがでしょうか。