前回の記事の続きです。
ライナーとベルトルト、二人のこれまでの行動を振り返っておさらいしてみます。
彼らは一体これまでどのような発言や行動をとってきたのでしょうか?
なお、当然ながら物語の核心に触れるネタバレを含みます。
未読の方はご覧にならないことを強くおすすめします。
(別マガ2012年12月号~2013年3月号まで)+22巻までの展開を踏まえて加筆しています(2017/04)
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ウトガルド城で巨人に襲われた時、ライナーは率先して仲間を守るために働きます。ベルトルトは「悪いクセだ」と苦い顔。
「お前にはもっと大切な使命があるだろ、忘れんなよ」と言いたいのでしょう。
ライナーの心中がわかるモノローグは結構珍しいです。なぜならその正体は巨人であり、エレンや読者とは別の視点で世界を見ているから。
しかしここでは本心から巨人の侵入を防ぎ、自分の身が危険であることに焦っています。これに騙された読者は僕を含め多かったわけですが、実は人格障害でライナー本人も真面目にそう考えていたというトリックでした。
危機に瀕したライナーの脳裏をよぎる回想。
マーレの戦士隊として任務を帯びパラディ島へ潜入した際、野をさまよっていた「無垢の巨人」(ユミル)に遭遇、為す術もなく棒立ちするライナーを庇ってマルセルが捕まります。
彼らはみな「九つの巨人」の 能力者であり、選抜の上で訓練を受けてから敵地へ送り込まれている特殊部隊ですから、普通に考えれば知性のない無垢の巨人にむざむざ殺されるとは思えません。なぜマルセルはそのままユミルに捕食されたのか? ライナーやベルトルトがそれを看過したのはなぜか? 詳細は分かりません。
巨人ユミルは割りと素早い動きをするので、見通しの効かない場所で彼らを急襲した後、マルセルを気絶させて持ち逃げしたのでしょうか。無垢の巨人の行動原理は「人を捕食すること」ですが、その場でゆっくりマルセルを食べていれば戦士たちならいくらでも対処のしようがありそうなものです。
ライナーとベルトルトが執着する「故郷」、マーレ国。困難な任務を果たし、そして帰る。ただそれだけが彼らの生きる目的です。
絶対帰るぞ!と言った途端にまた身を挺して飛び出すライナー。どこまでも頼りになる兄貴です。自分の腕を一本犠牲にし、最後には窓から塔の下へ飛び降りようとします。
ここで飛び降りればおそらく否応なしに巨人化してこの場から逃亡し、行方をくらますしかないと思われます。目撃者を消すくらいなら最初から助けなくていいわけですからね。
兵士だから命をかけて人を助けるのは当たり前・・・そう言い放つライナーにベルトルトはまたも冷ややかな視線。
「昔のライナーは戦士だった。今は違う」
そう言われても何のことか分からないといった体のライナー。無自覚な記憶の混濁が深刻なレベルに達しています。
大ゴマを使った割に、次の回で何事もなかったかのように忘れられたシーン。
巨人化したユミルに見覚えがあって驚愕するライナーとベルトルト。あいつ、あの時俺らを襲ってマルセルを食った巨人じゃねーか!
しかし、この回想が事実ならやはりユミルはその場でマルセルを食ってますよね。そしたらその場で蒸気を吹き上げて人間の姿に戻ってしまうのではないのでしょうか? ライナーとベルトルトがそれを見逃すわけもないのですが、事実2人は巨人ユミルはハッキリ覚えているのにユミル本人の顔を知らなかったので、マルセルが捕食された時にユミル本人を見ていない。ちょっと不思議ですよね。
ユミルの活躍で巨人の群れを撃退した後、ライナーはエレンを呼んでこともなげに言い放ちます。あまりの緊張感の無さにエレンも読者も間を外されて「へっ?」となってしまいました。
ライナーとベルトルト(とアニ)は人類を消し去ることが目的。でもエレンを見つけたからその必要はなくなった・・・
彼らはエレンがいれば故郷に帰れる、一緒に来てくれと言います。え、なぜ?
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ちょっと整理します。
彼らは少し前にトロスト区へ侵攻しました。
ベルトルトが壁を蹴破り、アニが巨人の群れを呼び寄せたと思われます。
その時点での目的は「壁中人類の皆殺し」です。
それがライナー達の目的であり、達成することが「故郷へ帰る」ことにつながっていたはずです。
そのためにトロスト区からウォールローゼをぶち破り、人類をさらに一歩後退させるべく攻めこんだ。
ですがその後タックルで壁を突破する役の「鎧の巨人」は現れず、エレンが巨人化して大岩を持ち上げ、壁の穴を塞ぎます。
この時、エレンの変身を見ていた者の中に巨人の内通者がいて、マーレの戦士達にとって想定外だった「九つの巨人」エレンの出現により、計画の変更を強いられたわけです。
巨人のサンプル殺害事件が起こり、エルヴィン団長は壁の中に「敵」がいる疑いを持ちます。
その後、エレンはリヴァイ班へ編入され壁外調査に出たところを女型の巨人に拉致されそうになります。
女型の目的がエレンの誘拐であることが確定し、アルミンによってその正体がアニである疑いが強まったためエルヴィン団長はエレンを囮に街中での女型捕獲作戦を決行、これを成功させます。
一方その頃、離れた場所で軟禁状態にあったライナーとベルトルトは予定外の巨人が攻めてきたことに面くらいながらも調査兵として振舞っていました。本国とは長らく連絡を取っておらず、しびれを切らしたマーレがジーク戦士長を送り込んできたわけです。(長期の潜入計画に際し連絡手段は考えていなかったのか?という疑問は残ります)
ウトガルド城で獣の巨人が率いる群れの襲撃を受けライナーは負傷。ユミルが巨人化し応戦しているところへ、女型の捕獲を終えたエレンやミカサら別働隊が到着。アニが捕まったことはライナーたちには伏せてあります。
一息ついたところでライナーが「自分とベルトルトは巨人で、エレンが一緒に来てくれるなら故郷に帰れる」と言い始めます。
つまりエレンがいることによって彼らはマーレに帰還する理由を得るわけです。エレンが「九つの巨人」を持っていることは確定的であり、ジークも近くに来ていることから、エレンをジークに引き渡せばひとまずの成果にはなると考えたのでしょう。
「進撃の巨人」 では女型の巨人の正体が明らかになった辺りから色々な事実が明らかになっていますが、それらをつなぐ線は巧妙に隠されています。
・女型の巨人はアニだった!→なぜエレンを狙った?なぜ巨人化できる?
・壁の中に巨人が詰まっていた!→壁は誰が、何のために?
・ユミルが巨人!→なぜ巨人化できる?「ユミルさま」との関係は?
・クリスタの本名はヒストリア、貴族だった!→どういう家柄?
・ライナーとベルトルトが巨人だった!→なぜ侵攻した?どこから来た?
毎回、連載を読んでいて何かしら驚かされるのですが、結局今のところそれらが描く世界の絵が見えてこないのでワクワクしたりジリジリしたりさせられます。この話の構成は秀逸。
エレンの協力をとりつけようとするライナーですが話は噛み合わないまま平行線をたどり、結局はエレンを力づくで連れ去ることを決意。ベルトルトも呼応します。
ここでライナーは戦士に戻っていますね。スイッチがよく分からん。
異変を察知したミカサの瞬速の斬り込みをなんとか防ぎ、二人は巨人化。エレンとユミルを誘拐しようとしますが、
エレンも巨人化し応戦。エレンたち104期とライナー・ベルトルトの決定的な別れとなります。