マーレ国では着々と次期「戦士」選抜の準備が進んでいた。
ガビの寿命を犠牲にしたくないファルコは自らが鎧の巨人の後継者になるとライナーに宣言したものの、ここからガビ優位の評価を覆す具体的な打開策はまだない。
周辺国との戦争が終結し久々に故郷レベリオへ帰還したエルディア人兵士や戦士候補生たちは、思い思いに家族と団欒のひとときを過ごすのであった…。
進撃の巨人 第94話 壁の中の少年
別冊少年マガジン2017年7月号(6月9日発売)掲載
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家族との再会
戦勝報告を手土産に帰投したエルディア兵と戦士隊の面々は、壁に囲われたレベリオ収容区で総出の歓迎を受けます。それぞれに家族と抱き合い、無事を喜び合う姿が。
そこにはジークが祖父母と語らう様子も見て取れます。この祖父母はグリシャの両親ですね。ジークは「獣の巨人」の時とは打って変わって目の前の老夫婦に優しい笑顔で接し、じいちゃん、ばあちゃんと親しげに呼びかけます。人情味もあり理知的な近代人という印象。雄叫びをあげながら調査兵団を散弾ぶっぱですり潰し、大笑いしていた巨大類人猿と同じ人物だとは信じがたい。
目が綺麗すぎる…w
ここで新事実。ガビとライナーが親戚だと判明しました。外見の人種的特徴はあまり似ていませんね。親戚一同でテーブルを囲んで帰還のお祝いをしています。ライナーの母親も健在。彼女は名をカリナといい、ガビの活躍と「鎧の巨人」後継者候補として最有力であることを聞いて、一族から2人も戦士を授かるなんて誇りに思うと述べています。ガビの父親がライナーを甥と呼んでいるので、ガビとライナーはいとこ同士ということになります。ガビがライナーに妙に懐いていたのも納得。
夕餉の肴は戦場でのガビの武勇伝。彼女の活躍を家族はみな褒め称え、パラディ島へ逃げ込んだ悪しき一族を絶滅させ世界を正しい姿へ戻す正義の使徒だと賞賛します。
マーレのプロパガンダを盲信している彼らは、パラディ島に逃げ込んだエルディア人一派は残虐かつ悪辣であり、それがいつ巨人戦力を伴って本土へ攻めてくるか分からないと懸念しています。そしてその侵攻を大陸に残ったエルディア人自らが撃退し制裁することで贖罪が果たされ、この地にエルディア人が生きることを許されるのだとか。
いい年こいてそんな与太話をこんこんと説いてしまうライナーの母でしたが、ガビは目を輝かせながら頷き、自分がパラディ島勢力からみんなを守ると決意を新たにします。
ライナーはパラディ島に潜入していた間のことを思い出し、あそこには色んな奴らがいて、自分たちが過ごした日々は地獄だったと述懐しました。エレンたちを騙して兵士を演じ続ける罪悪感が針のむしろのように感じられた…という意味でしょう。母親やガビはライナーが何を言っているか分からないという様子で困惑し、ライナー自身も喋りすぎたとバツの悪い顔です。
この世にはいい人類と悪い人類がいて、攻めてくるのは悪い人類。その悪い奴らをやっつければ世界は平和になる・・・。小学生くらいまではもしかしたら僕もそんな風に考えていたかもしれません。現代日本では幸いなことに思想や報道は自由が保証されていますが、残念ながらレベリオではそうはいかないのです。
パラディ島には悪魔なんていなかった。馬鹿でしょうもない連中がしょうもない人生を送っているだけ。なのになぜそれを皆殺しにするなんて話になるのか。ライナーはかつてエレン誘拐に踏み切る直前、本当のことを知らなければ良かったと吐露していました。これから殺し合いをしようという相手を深く知りすぎることは、素人目からも危険なことに思えます。ライナーの精神が変調をきたしたのも、むべなるかなと言ったところでしょう。
妄執に囚われた母と盲信に殉じようとするガビを前に、ライナーは少し悲しそうな目をするのでした。
ライナーの幼少期
ライナーはベッドに寝転び、しばし昔を思い出しています。
彼の父親はマーレ人だったようです。エルディア人はマーレにおいて不可触民なので、マーレ人とエルディア人で子を儲けるなど論外。この事が露見した場合はおそらく母子共々処刑されるのでしょう。父親の身元や心境は分かりませんが、ともかくライナーは物心ついた時から母子家庭で育った。「自分がマーレ人であったら親子そろって暮らせたのに」と、涙する母の姿を見ながら。
そして孝行息子のライナーは名誉マーレ人の権利を得るために戦士を目指し、同期であったベルトルトやアニ、マルセルらと成績を競うことになります。
ちなみにマルセルのフルネームがマルセル・ガリアード。現在の「顎の巨人」継承者である弟はポルコ・ガリアードが本名です。ピークが前回ガリアードを「ポッコ」と呼んでいた理由がこれで分かりましたが、ポッコが愛称なのか誤植なのかは判然としません。この漫画はちょくちょく人の名前が変わるので何とも微妙なところです。リーブス会長とかね…w
ライナーの同期で戦士候補生として目立っていたのは7人。ジーク、マルセル、ポルコ、ピーク、ベルトルト、アニ、そしてライナーです。
このうち戦士として巨人が与えられるのは6人。読者はすでに知っている通り最終的にポルコが落選するはずなのですが、意外にもこの頃のライナーは実技も学科も最下位で、巨人継承が危ぶまれていました。
この後どのようにしてライナーがポルコを追い抜くのか。前回ポルコがライナーに辛辣な態度を取っていた根っこがここにありそうです。この2人、深いわだかまりがあるんですね。
巨人は「獣」「超大型」「鎧」「女型」「顎」「車力」で6体ですから勘定は合います。この頃は「始祖の巨人」をウーリかその先代、「進撃の巨人」をグリシャが持っていたはず。残りの1体は分かりません。作中に登場してないはず?
ライナーが見上げるのは収容区の壁と鉄条網。その頃パラディ島では、エレンがシガンシナ区の外壁に向かって退屈をぼやいていました。この時点では戦士隊の方が精神的にかなり成熟していますね。ぼけーっと河原で寝そべるエレンがアホガキにしか見えないw
次号ではライナーたちがマーレの戦士として巨人を継承する場面が描かれるでしょうか。まだ当分パラディ島の壁中人類に出番はなさそうです。
つづく
名誉マーレ人とはいったい・・・うごごご!
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今回の疑問。
ライナーは晴れてマーレの戦士となり、「鎧の巨人」を継承して今や戦士隊の副長なわけですが、彼の母親が変わらず腕章をつけて収容区にいるのはなぜでしょう?
見ればライナー自身も腕章をつけており、実家の暮らしも粗末なもので被差別的な扱いは変わっていないように見えます。名誉マーレ市民として特権が許されるはずではないのか?
相応の飴がなければ、好んで寿命と引き換えに戦士へ志願する子はいないでしょうし。なんかよく分かりません。
謎の存在感・黒髪の負傷兵
妙に気になるのが、負傷兵として病院へ連れて行かれる途中に転倒し、ファルコに助け起こされている黒髪の人物。左足を欠損し松葉杖をついています。包帯と黒い長髪で顔が見えないものの、周囲のモブキャラと比べて描写が明らかに浮いています。腕章を逆の腕につけてファルコに直してもらっているのも不自然ですよね。
メタな見方ですが、漫画は誌面スペースに制約がある以上、無意味な描写というのは基本的にありません。例えそれが人物の無言の横顔にしても必ず作者の意図が込められています。
そんな中、この名も無き負傷兵は6コマものスペースを割いて描かれている。何か意味があるのは必然と言えるでしょう。腕章が逆の腕についているということは、おそらくこの人物はそのルールを知らない。つまりエルディア人ではなくドサクサで潜入してきたとは考えられないでしょうか?
(追記)にゃき様から情報をご提供いただきました。
93話の街角のシーンで、この負傷兵と思われる後ろ姿が見られます。
↑左端の人物は黒髪で腕章が右腕についていることから、同一人物の可能性あり。ライナーたちを遠巻きに尾行、監視している?
どうでもいいけどライナーも1コマだけ腕章を逆につけてますね。次のコマで何事もなく正常に戻ってました。ちなみに左腕が正しい。なおコミックスでも直ってませんでしたけど、特に意味があるとは思えませんw