獣の巨人によって政権幹部が端から巨人にされ、さらに地ならしによる海外世界の終焉を目の当たりにし、体制が大きく変わったパラディ島は、いまやイェーガー派の代表であるフロックが独裁政権を敷いたかのように見えた。
追われる身のハンジとリヴァイは撤退が遅れたマガトらと出会い、両手を上げて話し始める。
コニーは巨人を継承したファルコをドサクサで誘拐して逃亡し、アルミンとガビがそれを追う。
硬質化が解かれ自由を取り戻したアニはヒッチと共に市井に紛れ逃亡を図る。戦友でも敵でもあった同期たちとの再会は、すぐそこに迫っていた。
それぞれの立場と思惑が交錯し、一つの目的へと連なりはじめようとしている──。
進撃の巨人 第126話 矜持
別冊少年マガジン 2020年3月号(2月7日発売)掲載
ハンジとマガト
本誌の発売日を忘れてたので更新が2日ほど遅れました。ごめんなさい。
ヨダレたらしながらボーッとソシャゲの周回イベント走ってる場合じゃなかったw
さて、地ならし発動を見て戦域を離脱したマガトとピークは撤退するマーレの飛行船団に置き去りにされ、途方に暮れていました。そこへ声をかけたのがハンジとリヴァイです。
ハンジは旧体制の中心人物としてイェーガー派に追われる身、リヴァイも同様ですがこちらはジークを捕縛した際の自爆によって重傷を追い、一命をとりとめたものの歩くことができず板に括られて馬車で運ばれています。リヴァイの顔には額から顎まで縦断する大きな裂傷があり、右手は第二指・第三指が根本から欠損。顔も含め全身包帯でグルグル巻の状態でした。早くまともな手当をしなければ感染症も怖いのですが、アッカーマンだから平気みたいなノリなのか「ジークを殺す」などと死にぞこないの分際でイキっております。
そんな彼らがマガトとピークに声をかけたのは、ジーク殺害という目的が一致しており、共闘できると踏んだからのようです。ハンジはジークがエレンに取り込まれて生きていると考えていて、ジークを刈り取ることで王家の力を排除し、地ならしを止めることができると説いている模様。それが実現すれば、マガト&ピークはマーレ本土を守ることができる。リヴァイはジークへの私怨を晴らせる。ハンジは地ならしを示威に留まらせ、本来描いていた威力外交の形に収められる。皆の思惑は一致するわけです。
マガトはある条件のもとに共闘を受け入れます。その夜、ハンジは秘密裏にジャンに接触して何事かの企みを伝えていた模様。それがこの後で明らかになります。
ラガコ村
巨人化前からの記憶がないファルコを連れて馬でラガコ村へやってきたコニーですが、いまだ迷いはありました。眼前の素直な少年を、母のために犠牲にしていいのか。その結論はまだ出ないままです。
テントの幕を開けると、オアエリ…と言ったあの時のままの姿で、母ちゃん巨人が仰向けに転がっていました。テントで日光を遮っただけで構造部にはたいした補強もされていないようですが、大丈夫なんでしょうかこれは。
コニーは肝心なところで知恵が足りず、ここから自然にファルコを母ちゃんに食わせる段取りが整っていません。もたついている間に早駆けしてきたアルミンとガビが追いつき、ファルコに警告します。切羽詰まったコニーは強硬手段に出てしまい、ファルコを腕力で確保。はしごを使ってテントの梁へ登り、母ちゃんの口へファルコを突き落とそうとします。
アルミンはガビに「コニーを許してやってくれ」と呟き、立体機動で梁へ飛びつくと、しばらく押し黙ったあと「行動で示すよ」と母ちゃんの口へダイブ!
コニーは井戸の説話「今人乍見孺子将入於井 皆有怵惕惻隠之心(幼児が井戸に落ちようとしているのを見たら、誰でも哀れに思って咄嗟に助けようとするじゃろフォフォフォ、これすなわち性善説じゃよ by孟子)」を体現せしめ反射的に跳躍。母ちゃんの口に落ちる寸前のアルミンを抱えて救出します。すっかり毒気を抜かれたコニーは、誰かを犠牲に母ちゃんを人の姿に戻しても結果苦しめるだけだと悔悟を口にします。母ちゃんを人の姿に戻すのは諦め、母ちゃんに誇れる兵士になりたいと決意を新たにしたコニー。「だから・・・、困っている人を助けに行こう」
うん、彼らしいシンプルな言葉ですね。具体的に何を指すのかはよくわかりませんが、とにかく雨降って地固まる、めでたしめでたし!
ファルコが「え、この人オレを巨人に食わせて殺すつもりでここまで連れてきたの…?え、まじで…?」とドン引きしてもまったく無理からぬ状況ですが、記憶を失っているファルコにガビが継承前後の出来事(コルトやポルコの死)を教えたために混乱し嗚咽。コニーなんて眼中にありませんでした…。ん?ということはもしかして、ファルコは自分がガビに告ったことも忘れているのか!?
その後、彼ら一行は無事に全員揃って街へ帰還。次の行動は民家でゴロ寝してるはずのライナー説得です。ガビやファルコと共に話して味方に引き入れ、マーレと協調して混乱を収める糸口にするつもりでしょう。ガビによればライナーは消耗して数日は昏睡しているはずとのことで、現地へ行く前に出店で食事をとることに。
アルミンとコニーが腰掛けたすぐ隣の席で、フードを被った女がパイをガツガツ頬張っています。「あ!? アニ!?」
さすがにちょっと都合良すぎて筆者も苦笑いが隠せませんでしたが、まあそんなわけでアニとアルミンは無事再会。アニはヒッチに書き置きを残してアルミンらに同行します。アニに裏切られ、マルロに先立たれ、そしてまたアニに置いていかれる。ヒッチはいつも誰かに置いていかれるポジションです。4年間話しかけてくれてありがとう、そう記された手紙を読む表情は髪に隠れて窺い知ることはできず、一人で食べるには多すぎるパイと、2つのジョッキだけがテーブルに残されていました。
なんか本作でのヒッチの出番はこれで終わりな気がする…。気のせいであって欲しい。
ミカサとジャン
ミカサは重傷者の収容された病棟を訪れていました。簡素な入院用ベッドの主はルイーゼ。例のミカサファンです。
ミカサが彼女を訪ねた理由はマフラーを返してもらうため。ルイーゼは先の市街戦で腹に致命傷を負っており、もう長くはないようです。このマフラーを持って逝きたいと願うルイーゼに、そっけなく「返して」と手を伸ばすミカサ。くう~!それでこそ私のミカサ様よぉ~!と、きっとルイーゼは内心絶頂していることでしょう。ミカサへの憧憬を言い募るルイーゼを背中越しに一瞥しただけで立ち去るミカサ。
ここでも一顧すらされず、ルイーゼは役どころがよくわからない不憫な扱いでしたね。おそらくこれにて退場、お疲れ様でした。合掌。
ミカサが外に出ると、イェーガー派…というかフロックが広場で高らかに世界への勝利宣言を行っているところでした。続いて彼らは砦の屋上にて、捕らえた義勇兵の代表としてイェレナとオニャンコポンを処刑しようとします。銃殺の執行役はフロックと、ジャン。
イェレナの罪状はジークに加担し安楽死計画を押し進めたこと。オニャンコポンは安楽死計画とは無関係ですが、フロックに反抗的で忠誠を誓わなかったため見せしめだそうです。間接的に多くの兵士をジーク汁の餌食にしたイェレナはともかく、生意気だからオニャンコポンも殺すなんて感情的な処刑をしていたら人望はどんどん薄れるような気がしますが、エレンの威を借るフロックは全能感に酔って自分の姿がまるで見えてませんね。最近の調子こき方がワンパターンでイタいw
ジークという神を失ったイェレナはもう何も話す気がないらしく、じっとうつむいたまま処刑を待ちます。オニャンコポンはなおイェーガー派を罵倒し、理不尽に踏みにじられることの悲しみを知ってるはずだろうと叫びました。それを銃声で制したのはジャン。立て続けに4発、オニャンコポンの足元へ撃ち込みます。
それを合図にしたかのように、突如として「車力の巨人」が姿を現し、見物人の群れを上空へ巻き上げながら突進。ジャン、イェレナ、オニャンコポンを捕食して逃げ去りました。慌ててミカサへ応戦を命じるフロックですが、彼女の姿は見当たりません。何かがおかしい。フロックはここに来てようやく、自分が裸の王様にすぎないと気づかされつつあるようです。
当のミカサはといえば、騒ぎが起きている砦の反対側で馬車に乗り込んでいました。他にはアルミン、コニー、ガビ、ファルコ、そしてアニの姿が。ジャンの銃声を合図に、武器や食料を盗み出して脱出する手はずです。104期とマガトはハンジを通じて手を組んでおり、車力は陽動と、ジャンや捕虜を連れ帰る役目を負っていたわけ。大罪人であるイェレナも救出したのはマガトの意向らしいのですが、彼が何を目的としているのかはまだ分かりません。
ジャンはあのままイェーガー派に残れば内地で夢のぬくぬくライフが待っていたはずですが、「骨の燃えカスが俺を許してくれねえ」などと、どこまでもマルコに殉じる所存。人生の選択を常に自分のせいにされ、草葉の陰でさすがのマルコも仰天してるかもしれません。「いや、許すから!そこまで言ってねえから!」と。
集結
こうして、戦力は結集しつつあります。アルミン(超大型)、ミカサ、ジャン、コニー、アニ(女型)、ガビ、ファルコ(顎)、ピーク(車力)、ハンジ、リヴァイ。彼らは民家に隠れて寝ていたライナー(鎧)を叩き起こし、世界を救いに行くぞと急き立てます。このメンツで始祖に飲まれたエレンを止め、地ならしを止め、神ではなく人の手による和平を成すのがミッションというわけです。エレンが持つ巨人は始祖・進撃・戦鎚の3つ。ジークの獣も取り込んでいるらしいので4体。それを除く5体の巨人がここに集いました。巨人大戦の再来。
アニの復帰から合流まで尺を取らずあっけなく叶ってしまったのでちょっとギャグっぽくなってしまいましたが、やはり仲間に加わっていると嬉しいものです。ライナーとコニーらが再会する場面では、ほんの短いやり取りの中にも敵味方を超えた絆や友情の片鱗を感じることができます。敵だけど信用している、といった様子でしょうか。まあ状況が変わって今はもう敵同士というわけでもないのですが。
旧主役勢が揃い踏みする様はさすがに壮観で、SSRばかりを並べたデッキのような威圧感がありますね。