進撃の巨人 ネタバレ考察

(125)夕焼け

地ならしの行進はまだ始まったばかり。

世界人類の終焉へ向けて歩を進める巨人たちの群れの足元で、取るに足らない人間たちはそれぞれの望みを胸に必死で足掻こうとしていた。

世界の様相がガラリと変わり、追い詰められ、疲弊し、既存の秩序が崩壊した時、人々の本性がむき出しになっていく──。

進撃の巨人 第125話 夕焼け
別冊少年マガジン 2020年02月号(1月9日発売)掲載

ヒッチとアニ

う~ん、1月なのにふらいんぐうぃっちは水着回で海水浴とは素晴らしいなあ…。むさ苦しい進撃の巨人なんか読んでる場合じゃねえなあ…。

というわけで、今回はあまり話が進展しない溜め回・状況説明回ですね。

シガンシナでの市街戦は終息し、目下の危機はエレンが壁から呼び覚ました大型巨人の群れによる地ならし行進です。これはまさに歩く自然災害と呼ぶべきもので進路はすべて更地になりますから、巨人たちに住民を攻撃する意図はなくとも歩くだけで内地に甚大な被害が出ています。硬質化解除による壁の崩落にも少なからず人が巻き込まれており、多数の死傷者がいる模様ですが、エレンの「道」を通した演説によってタカ派住民は勢いづいています。エルディアを守るためにはコラテラルダメージを是認するという主張ですね。

ストヘス区で救助活動にあたっていたヒッチはそうした住民同士の衝突を見て危機感を覚えます。暴動鎮圧用の装備を用意するよう指示を受けた彼女は兵舎へ戻りますが、そこで不審な濡れそぼった足跡を発見。それは地下室から出て、資料室へと続いているように見えました。

何かを予感したヒッチは震える手でドアノブを回し、恐る恐る中を窺います。足を踏み入れた瞬間、後ろから口を塞がれ首元へチクリとした感触。叫んだら喉を切り裂く…。聞き覚えのある声がそう言いました。

ヒッチは流れるような体捌きで声の主を背負い投げ。即座に壁に押し付けてから床に転がし、腕を後ろへ締め上げました。

「力弱すぎておばあちゃんかと思ったわ、アニ」「よりによってあんたか、ヒッチ」

かつての同僚との再会は和やかにとは行かず、アニは傷口を示してヒッチを脅します。ヒッチは今のアニの体力で巨人化できるかは五分だと考えはするものの、リスクを避けてアニの捕縛を諦め、脱走に手を貸すことに。

驚くべきことに、アニは結晶の中で4年間うっすらと意識があったらしく、アルミンやヒッチが話しかけていた内容を覚えていました。ゆえに彼女は外の状況を大体把握しており、浦島太郎ではないとのことです。意識のない女子の前でそこまで詳細に語っていたのかアルミン、ちょっと怖いぞ。

ヒッチはアニを馬に乗せ、二人乗りで街へと出ます。いまだ地ならしが続き、噴煙に覆われた街の空を見上げ驚嘆するアニ。ヒッチは足元も見ろと促し、その先には崩れた家々の下敷きとなった犠牲者や嘆く者の姿がありました。ヒッチはそれを横目に、アニがかつて戦士として行った殺戮行為の意味を問います。

アニはやや自嘲的に生い立ちを話します。収容区で義父に格闘技を仕込まれたこと、それは義父が戦士の家族として名誉マーレ人の待遇を得るためであったこと、アニは義父を恨み暴行して障害を負わせたこと、パラディ島への出征直前に義父がアニに帰ってこいと泣いて懇願したこと。

やや複雑な家庭だったようですが、結果的にアニは義父を父と認め、帰る場所だと認識したようです。それまでは自分の生命も人生もどこか他人事のようだったが、出征直前に本当の家族ができたことで時計の針が動き出し、自分だけでなく他人にも家族や大事な人がいる…と考え始めたアニ。それでも彼女は始祖奪還作戦で大勢の人を殺しました。そのことを悔いてはいるけれど、父の元へ帰るという約束を果たすためなら、また同じことをやる。そういい切ったアニに、ヒッチは軽くショックを受けたような顔をした後、ややあって得心したようです。罵るでもなく、それが聞けてよかった、と告げた表情からは、ずっと知りたかったアニの本心に触れて憑き物が落ちた様子が見て取れました。繊細な距離の友情ですね。個人的には昔のクソ生意気だったころのヒッチが大好きなんですけど、すっかり落ち着いた姐さんみたいになっちゃってまあ。

その頃、話題のアニの父はというと。レベリオでユミルの民が一斉にエレンのお告げを聞き、ここに大型巨人が攻め寄せてくるぞーと恐慌状態に陥っていました。その先頭に立ってゲートの守衛に食って掛かっているのがレオンハート氏です。エレンの演説を聞いたのはユミルの民であるエルディア人だけですから、そうでないマーレ人は何が起こったか分かるわけもなく、暴動鎮圧にかかります。このまま守衛たちに従っていたら全員死ぬ、そうしたらアニとの再会は二度と果たせない…! レオンハート氏はまだ娘との再会の希望を捨てておらず、必死に守衛に掴みかかります。そして銃声──。

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アルミンとミカサ

更衣室でアルミンが立体機動装置を用意しています。ラガコ村へ向かったであろうコニーを追い、現「顎の巨人」であるファルコを救出するためです。

エレンが地ならしで世界を滅ぼしても、九つの巨人の力が消えるわけではない。それを巡ってエルディア人同士でまた争いを始めることは何としても避けたい。そのためにはマーレ軍に残る巨人戦力、ライナーとピークを説得する必要があり、戦意喪失したガビがキーパーソンとなる。ガビに協力させるためにはファルコを救い出すか、少なくとも救い出そうというポーズを示す必要があり、それが今自分にできる唯一の行動だとアルミンは考えています。

そのために、コニーに残酷な決断を強いる覚悟を─ひっくり返った巨人の姿のまま母親を放置しろと告げる覚悟を、アルミンは決めていました。

部屋を出ようとするアルミンに、ミカサは自分はどうしたらいいか問います。憔悴したアルミンが少しは自分で考えてくれと言いかけた時、エレンはどうするのと畳み掛けるミカサにアルミンは激昂。状況は混迷の極みにあり、何もわからないしどうしようもない。兵団は指揮系統を失い政権は崩壊。このままイェーガー派が実権を掌握すればヒストリアをはじめ旧体制の要人や義勇兵、マーレ人捕虜がどうなるかも不透明。この上エレンのことなんか考えている余裕はないと怒鳴り散らした後、自己嫌悪したアルミンは「生き返るべきなのは僕じゃなかった」と吐き捨ててドアから出ていきました。フロックが聞いたら殺しに来るかもしれない台詞。

ドアに背を向けたままアルミンと別れたミカサは、数刻前ここに置いたはずのマフラーが持ち去られていることに気が付きました。おそらくマフラーを置き捨てた118話でミカサ推しのルイーゼが鼻血出しながらパクったんでしょうけど、それがどのように返ってくるのかは謎。ありがちな筋書きとしては、巨人の記憶に意識を飲まれたエレンが自我を取り戻すためのキーアイテムってとこでしょうか。

ミカサはエレンの離反以降は大して活躍もなく意志もはっきりせず、戦闘力以外はからっきしダメダメです。出番もそこまで多くないし、ヒロインが補正で不自然に美化・優遇されないのが本作のいいところだと感じますね。ミカサの自立が大きなテーマのひとつだとは思うので、どこかでエレン抜きでの意志を主体的に選択する瞬間が来るはず。「私はミカサ・アッカーマン!死にたい奴はかかってこい!」どんっ!そしてメインヒロインのアルミンがエレンを救いに向かう時間を稼ぐため、イェーガー派の追手と対峙し殿を務める…う~ん、This is the 少年バトル漫画!

アルミンはガビと連れ立って馬でラガコ村を目指します。ブラウス一家と別れ際、「私の本当の名前…ガビっていうの」。クリスタ×ユミルを想起させる言い回しでカヤにしおらしく告げたガビきゅんでした。もう会うこともないんやろなあ…。

コニーとファルコ

さてその頃コニーは。

意識は取り戻したものの、巨人継承で記憶喪失に陥ったファルコを馬に乗せ、夕焼け空をバックにラガコ村へと向かう途中でした。馬一頭に二人乗りなので速度は出ていません。これならアルミンたちが早駆けすれば追いつくでしょう。

ファルコの記憶は巨人化する前で途切れており、コルトの死も市街戦の結果も知らないまま、気づいたら草原を馬で連れられていたわけで、相当に不安がっています。コニーはファルコを安全な病院に連れて行くと言っていますが、ファルコはファルコでコニーとレベリオ襲撃時に会っていることに気づきつつあり、どこまで騙せるか。

フロックとジャン

フロックは義勇兵らを集合させ、銃を突きつけて「訓示」を与えていました。ジークとマーレ軍が倒れ、エルディア以外に寄りどころがなくなったこと。地ならしによって今から大陸は更地となり、マーレに侵略された復興すべき故国も消滅すること。もう後はないからおとなしくエルディアのために従えと脅迫しているわけです。逆らった1人をフロックは見せしめに射殺。

なぜフロックがここまで専横しているのかといえば、本人いわく自分は「エレンの代弁者」とのこと。10ヶ月前、エレンからこの計画を持ちかけられたフロックは、以後エレンに協力して準備を進めてきた…らしい。エレンが彼を指名しているわけでもなく、フロックの言葉を証するものは何もないのですが、とにかく「神に等しい存在になったエレンの腹心で、エレンの代弁ができるから」というのが彼の権威の根拠だそうです。まあイェーガー派の部下たちがそれでいいならそうなんでしょう。ジャンは困惑してますけど。

フロックは自己陶酔的な使命感に燃えており、エレンが島外の問題を解決する、オレは島内の遺恨を消し去る、と嘯きます。なるほど、フロックは自分とエレンが対等な盟友みたいに思ってるわけですね。そりゃ増長もするか。虎の威を借りて気に入らねー奴を適当に射殺するフロックにはピエロとして無残な末路が待っていることが想像に難くない…。

ジャンの肩に手を置き、フロックはにこやかに語りかけます。もう戦わなくていいんだ。好きに生きていい。ジャンは自由だ、内地で快適に暮らせと。ジャンも相当疲れているのか、「終わった…のか?」とフロックに問い、半ば茫然自失。

ジャンは訓練兵時代から無我夢中で地獄を駆け抜けてきた兵士です。ほとんどの同期を亡くし、今ここに生きているのは奇跡に等しい。シガンシナ奪還戦から生還した正真正銘の生きた伝説の1人です。マルコの亡霊に急き立てられながらチームを率い、巨人と戦い、マーレと戦い続ける日々の中でふと、何のために?と生きる意味や目的を考えることもあったかもしれません。解放されたい、もう許されたいとジャンが思っていたとしても、誰もそれを責められないでしょう。

そんな人間らしい心の弱さを、フロックは巧みに突いたのです。シガンシナ奪還戦の英雄であるフロックに正面から物申せるのは、同じ英雄である104期たちくらいのもの。フロックにとっては戦友であるとともに、目障りなタンコブでもあったでしょう。それを意図的に排除することを目論んだかはこの場面ではわかりませんが、結果的にジャンは思考停止し「え、けど…まじで、降りていいの…?」とでもいうような、救いを求めるような目でオニャンコポンをチラ見しますが、相手は冷たく問うような瞳でただ見返すだけでした。

彼らを遮って口を挟んだのはミカサ。姿の見えないハンジとリヴァイの所在をフロックに尋ねます。

「あぁ…残念ながら ジークに殺された」

うそつけw 実際は瀕死のリヴァイを抱えたハンジが河に飛び込み、そのまま逃げられてますね。「だから後はオレが仕切るぜ」と言いたいのでしょうが、適当ぶっこいて後からハンジが戻ってきたら気まずい。ていうか絶対戻ってきますよね。

ハンジとリヴァイ

撤退するマーレの飛行船と行進する巨人の群れを遠目に見やりながら、お手上げ状態で途方に暮れている二人の人影。マガトとピークです。壁の崩落のドサクサでシガンシナから退避していた模様。その二人に後ろから声をかけたのはハンジでした。武器はないから食べないで、と両手をあげるハンジの後ろには、包帯ぐるぐる巻で昏睡したまま馬車の荷台にくくりつけられたリヴァイの姿がありました。

ハンジはマーレ軍とは敵対関係にありますが、フロックらイェーガー派からも旧体制の要として敵視されているはずです。マーレ軍の侵攻に応戦するため新旧派閥対立はうやむやになってましたけど、事態が落ち着けばフロックによって処刑か軟禁されると思われ、どうにかしないと街へ帰れない状態です。さりとてリヴァイは瀕死の重傷ですしのんびりしてもいられないので、何か打開策を講じるあてがあって偶然見かけたマガトとピークに接触したものと思われます。

さて、この対話で何が飛び出すのでしょうか…?

つづく。

 

ここに来て、敵味方を超えた「地ならしを止めたい」という大きなうねりが徐々に見えはじめましたね。主人公が大活躍するバトルではなく、群像劇の色が濃くなってきました。立場が複雑にこじれてて誰がどう転ぶか分からないので、この先の展開がまだまだ楽しみです。

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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