マーレ人を皆殺しにして両親を解放したい…。
そうエレンに告げて、エルディア国へ寝返る用意を見せたピーク。
信用の証に敵の潜伏場所を教えると言い、屋上へ向かった彼女が指したのは、エレンの顔だった。
走る緊張。轟音と共に割れる石床。
床下から飛び出す「顎の巨人」、ガリアード。
ピークの欺瞞を悟ったエレンは巨人と化す。
因縁のシガンシナを舞台に、またしても激戦の幕が上がる…。
進撃の巨人 第117話 断罪
別冊少年マガジン2019年6月号(5月9日発売)掲載
マーレの空挺降下
シガンシナ上空に現れた5隻の軍用飛行船からは、マーレの空挺兵士が次々とパラシュート降下をしてきます。装備は小銃・狙撃銃に背嚢といったところで、ぱっと見で100人くらい。
20世紀前半の技術水準に照らせばそれでもかなり無茶して積んでるように感じますね。
ついでに何やらカバーで覆われた重火器も1基だけ投下していますが、これだけでエルディアと全面的に事を構えるにはやや貧弱な戦力という印象。
飛行船から手始めに空爆するでもなく、結局は戦士隊の一点突破に頼らざるを得ないのが今のマーレ戦術の限界でしょうか。
エルディアは立体機動装置も対人向けにチューンしていて、個々の技量で人殺しをすることには意外に長けているんですよね。
マーレ軍は頭上を立体機動で飛び回る兵士相手の戦争はレベリオが初体験で、今回でわずか2度目。
小銃の射程や面制圧力に優位はあるかもしれませんが、高速で飛び回る相手を狙えるわけでもなくシミュレーションも不十分でしょうから、白兵戦になると辛いものがあります。
しかもマーレが普段戦争してる周辺国と違って、エルディアは巨人を持っています。
アルミンの「超大型」は顕現すると街が消し飛ぶのでホームの防衛戦での即応が難しいという弱点があるものの、1人で始祖進撃戦鎚と3能力を有するエレンは相応に巨人化の練度も高く、何を仕掛けてくるか分からないブラックボックス。
それでもなおマーレがこの戦力で降りてくるからには、何かしらの勝算があると考えるべきでしょう。
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よく見るとすごいガリアード
本拠地の屋上で「顎」ガリアードの奇襲をからくも紙一重でかわし、巨人化したエレン。
その隙をついてピークは手枷のついた腕をガリアードに切断してもらい、フリーになったガビを置いて屋上からダイブ。
「車力」へ変じてすぐさま舞い戻りガビを咥え、いずこかへ走り去ります。
ガリアードの精密動作性はすさまじく、瞬時に振り抜いた左手の爪の先端で、ピークの手首だけを手枷から数センチのところで正確に切断しています。
「顎」の身長がちょっとわからないですけど、小柄とは言え8m以上はあるでしょうから、そのサイズの主観で見てピークの右腕なんてボールペンくらいのサイズ。
ちょっと加減を間違えばガビごと胴体切断とか、うっかり首まで飛ばしちゃったメンゴメンゴとなっても不思議ではありません。
非常に小さな的を、しかも傷つけてはいけないガビと密着した状態で造作もなく切断してのける辺り、ガリアードの確かな巨人操作能力が窺える場面となっていますね。
僕の中でガリアードの噛ませ成分が少し薄らぎました。
両雄激突
飛行船からの空挺降下、そして奇襲失敗した「顎」と「車力」が即座に撤退するのを見たイェレナは、マーレに相当の準備があると踏んだのでしょう。
血相を変えてエレンに一時離脱を進言します。
が、エレンは無言で屋上から飛び降り、飛行船の方へ向けてゆっくり移動。
マーレ軍が初侵攻となるパラディへ上陸してくるからには、地理情勢に明るい者の手引きがあることは明白であり、それに該当するのがライナーしかいないと踏んでのことです。
そしてそれは当を得ており、エレンが歩む先の上空では巨人化の閃光が放たれました。
男同士・ライバル同士の因縁に思いが及ばないイェレナはその歩みの意味を計り知ることができません。
しかし僕たち読者には分かります。
同じ釜の飯を食い、騙し騙され、殺し合った終生の友。
結局、エレンとライナーはこういう形で本人同士が直接拳で語るしかないのでしょう。
そこには作戦も軍隊も関係なく、ただ個として向かい合う2体の巨人がいました。
奇しくもシガンシナ、物語の始まりの地です。
こうしてエレンとライナーが格闘戦を見せるのは何度目でしょうか…。
エレンが拳を硬質化させて放つ貫通パンチを習得して以来、もはやライナーの鎧は装甲の役をなさず、ただの重しに過ぎません。
近代火器にも貫かれ、エレン相手にも役に立たず、時代遅れの遺物になりかけの「鎧の巨人」。
そんなものを命がけで継承しようとするガビやファルコには、その姿を目に焼き付けて是非思いとどまっていただきたい。
ライナーは苦し紛れにタックルするくらいしかできることがなく、戦局はエレン優位かと思われましたが…背後から「顎」が襲いかかります。
あ、別にライナーの意を汲んで決着を委ねるとかそういうのじゃなかったんですね。ライナーも普通に2対1で追い込みかけてますわ。
巨人大戦
エレンは「戦鎚」の得意技、地面から飛び出す杭を使って鎧と顎を一手で串刺しに。
やはりエレンの巨人操縦センスには唸らされます。
串刺しで地面から浮かされ身動きできない鎧と顎に、シガンシナ防衛部隊が雷槍を携えて一斉に飛びかかります。
若い訓練兵はバカにしてたけど、やっててよかった巨人相手の防衛訓練!これで殺(と)った!
と勝ちを確信したところで邪魔が入るのはお約束なわけで、今回はエレン側面からの長距離射撃。
高速の弾丸が巨人エレンの頭蓋を貫通し、弾道の軌跡が尾を引きます。遅れて響く轟音。
イェレナら義勇兵ですら唖然とする新兵器、ピーク積載型カノン砲です。
僕は軍事の知識がないので実在の兵器がモチーフかどうかは分かりませんが、第二次大戦頃の火砲をピークに背負わせて自走式にしたような感じ。
さきほど飛行船から投下された重火器の正体がこれ。
一基でエルディアと戦争するには火力不足ですが、長距離からエレンを狙撃して動きを止めるには十分役に立ったというわけです。
恐るべきは観測射もなしに一発でエレンの脳ミソを地面にブチまけるマガトの技量と、カノン砲での精密射撃を可能とするマーレの製造技術でしょうか…。
エレンは動きを止め、それを見た鎧と顎は杭を破壊して脱出。逆にその杭を武器にしてエレンを攻撃します。
慌てて雷装部隊が駆け寄ろうとするも、マーレ軍歩兵部隊の制圧射撃と飛行船からの援護により身動きが取れず。
それでもなお、格闘戦ではエレンが鎧と顎を跳ね返します。
顎は体重が軽すぎるんですかね…身軽な反面、簡単に吹っ飛ばされてしまい組み付くことが難しい。
鎧はもうただ普通に弱くていいとこなし。エレンを組み伏せてうなじに食いつく寸前まで行ってるのに、そこから気合と腕力だけでひっくり返される始末。
初登場でタックル後にゴハァ~と息を吐いて、巨人って機械なんじゃね?とか言われてた頃はあんなに怖くて恰好良かったのに、今やもうヘロヘロで見てて辛い。
そんなライナーにダメ押しの遠距離攻撃がヒット!ギャグ漫画のごとくゴロゴロと後ろへ吹っ飛んでいくライナー。
え、ピークキャノンもしかして誤爆した?w
と思いきや、飛んできたのは弾丸ではなく岩。となると…。その方を見て、涙目で声を漏らすイェレナ。(じゅんっ!)
「後はお兄ちゃんに任せろ」どォォォ~ん!!
そっちがピークキャノンなら、こっちはレーザービームじゃい!とばかりの強肩投擲。
爆煙と共に壁上へ姿を現したのは、「獣の巨人」ジーク・イェーガー。
ついに合流!このタイミング、スパロボの強制イベントかお前は。
かつてのシガンシナ奪還戦でリヴァイに散々にやられて以来、ロートル感ましましでライナー同様いいとこのなかったジークですが、この局面では頼もしい。
敵が味方になるのは少年マンガのテンプレではありますが、やっぱりワクワクしますね。
よく見るとすごい車力
どうでもいいんですけど「車力」がどんどん美人になっててちょっと笑いました。
あれ?こんな女性っぽい顔だっけ…?
↑20巻より。
まさか車力の本体は2人いる…!?と言い出しても不思議はない。
スマホの顔認証通らんでしょこれw
ガビとマガト
ピークとマガトがキャノン砲でライナーたちの援護に入る少し前。
救出されマガトとの合流を果たしたガビは、ファルコがジーク汁を飲まされ捕虜になっていることを知らせます。
ファルコの兄・コルトはショック。あ、コルトいたんだ。存在感なさすぎ。
ピークは明晰な頭脳を発揮し、エレンが今始祖を使わないならジークの存在が鍵であると看破。
ガビの証言もそれを裏付けます。
ならばエレンとジークが接触する前にカタをつける…。
そう臨んだはずの戦いでしたが、時間切れでジークが登板とあいなり、戦局はまた不確定要素が増えました。
ジークが使える駒として、シガンシナにおよそ300のジーク汁入り兵士がいます。
ひとたび咆哮を上げればマーレの歩兵では太刀打ちできず、市街は大混乱と大量殺戮に陥るでしょう。
ピクシスやナイル、ファルコらもそこに含まれています。
ファルコが巨人化して鎧を継承するのが既定路線のように思えますが、
巨人化して自我を失ったファルコの前に誰かがライナーを連れて行って、
のんびり食べて一旦裸の人間に戻るというプロセスを、戦争しながら同時にやらなきゃいけないわけで、これなかなかハードですね。
そもそも、マーレはこの戦闘で何を目的…というか落とし所にしているんでしょうか。
始祖を奪還すれば停戦になるわけではありません。
戦士隊がエレンを食っても始祖の力は使えないわけですからボールの奪い合いになるだけ。
巨人は走って逃げることもできますが、壁に阻まれて兵士たちは退却もできません。
捨て石覚悟の決死隊にしては元帥(※マガトが昇進して元帥になりました)まで出張ってきているという異常事態。
常識的に考えれば、空挺降下はあくまで奇襲にすぎず、後ろに本隊がいて合流するというのが筋です。
今頃は港へ多数の軍艦が寄せてきているのでは?
物量に対抗するためにはエレンとジークも地ならしを発動せざるを得ず、臨んだ形とは異なるシナリオでラグナロクに導かれるのかもしれません…。
つづく