進撃の巨人 ネタバレ考察

(113)暴悪


拘留地で兵士たちに振る舞われたワインには、ジークの脊髄液が含まれていた。
時ここに至れり。機は熟したとばかりジークは雄叫びを上げ、監視の兵たちはことごとく巨人へと姿を変える。
眼の前で巨人となり襲い来る部下たちを前に、リヴァイは苦渋の決断を迫られる・・・。


進撃の巨人 第113話 暴悪
別冊少年マガジン2019年2月号(01月09日発売)掲載


ジーク脱走、リヴァイ追撃


ジークが監禁されていた巨大樹の森のキャンプ地では、兵士たちの娯楽としてマーレ産のワインが供されていました。それがジーク汁であるとも知らずに…。


どうやらジークとエレンはあらかじめ蜂起の決行日時を打ち合わせていたらしく、それを待ってジークは行動を起こしました。キャンプの警護兵たちを残らず巨人化させてリヴァイへけしかけ、その隙に脱走するつもりです。


今回、ジークが出現させた「無垢の巨人」は、マーレの「楽園送り」によるものとは少し性質が異なり、動きが速く、素体となった人物の容貌を特に色濃く反映しているようです。リヴァイを動揺させて少しでも時間を稼ぐ魂胆でしょう。


少なくとも数十体の巨人、それも数秒前まで仲間だった者たちに囲まれたリヴァイは、超洞察力でワインがジーク汁だったことに気づき歯噛みします。しかし、そこはやはりアッカーマンの末裔。スイッチが入るとあっという間に巨人たちを斬り伏せ、血塗れの旋風となってジークへ追いすがりました。


このためらいのなさ、単騎での戦闘力はジークの予測を超えています。護衛&乗り物として連れていた巨人も一瞬で倒され、半べそで「獣の巨人」を顕現させるジーク。お前の敗因はたったひとつ・・・たったひとつの単純な答えだ・・・『てめーはリヴァイを怒らせた』。こいつだけは怒らせちゃいけない相手だったんだよなあ~、2回戦ったんだからさすがに分かれよジークさんよ~、と僕もページをめくる前に合掌。


「無垢の巨人」の死骸を引き裂き、投げつけながら反撃の糸口をうかがう「獣の巨人」ですが、生憎ここは巨大樹の森の中。立体機動装置をまとったリヴァイが対巨人戦闘を行うにあたり、これ以上ない最高に有利な地形です。だからこそジークの監禁場所に選ばれたわけですからね。その優位を存分に発揮し、上方から木の枝に紛れて落下攻撃を仕掛けるリヴァイ。ジークはなすすべなく、うなじに雷槍4本が直撃。あっさりと本体が引きずり出されます。巨人化からわずか11ページ、圧倒的決着!!


次に目を覚ました時、ジークは馬車の上で揺られていました。土手っ腹には雷槍が突き立てられ、起爆ワイヤーが首にくくられています。ちょっとでも動いたら雷槍が爆発する仕組み。巨人化を防ぐために両足を切り刻まれ、馬車の上でのたうち回・・・りたくても身動きできず泣き叫ぶジーク。息を荒げ彼が発した言葉はリヴァイへの呪詛ではなく、「俺の眼鏡はどこだ?」という、およそ場にそぐわないものでした。


もうお前に眼鏡なんか必要ねえと冷たい反応を返すリヴァイを尻目に、ジークは朦朧としながら幼い頃の記憶へと導かれていきました・・・。少年ジークのキャッチボールの相手はクサヴァーという名らしく、ロイド眼鏡とエルディア腕章をつけ、笑顔でジークと相対しています。次回は唐突にジーク回想編へと突入の模様。彼が両親をマーレに密告した頃の背景が補強されるのでしょうか?


今回ジークは逃げる途中、真意を話したところで分かりはしないだろうな、と呟きました。こういう伏せ方が本作には多いんですよね。ライナーとベルトルトがエレン誘拐に踏み切った時もそうでしたが、行動が明るみに出ても目的が謎なんです。そこに好奇心や想像力を掻き立てられて、つい先が気になってしまう。リヴァイと戦う羽目になったジークは思わず「またかよぉぉ~!」と泣きそうになってましたが、僕も諫山先生の作り出した謎という壁に阻まれて、またかよ~!と叫びたい気分であります。


ジークはどうも「エルディア軍が自己戦力を過大評価している」と思っているらしく、それが今回の行動の引き金でもあると推察されます。常に国家間で戦争に明け暮れているマーレや周辺諸国が本気の連合を組めば、素人集団にすぎないエルディア軍なぞ一夜で灰燼に帰す・・・そんな危機感を持っているようです。ジークのこれまでの言葉を信じるならば、彼が考えていることは最終的にはエルディア人の救済であるはずですが、救うべきエルディア人を犠牲にしても厭わない非情な姿勢は徹底していますね。


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余談 脊髄液入りワインはどうやって作る?


先月号の感想で、僕はこう書きました。


次回おそらくジークはドサクサでここを逃げ果せ、イェーガー派が向かったシガンシナで合流するでしょう。ジークとエレンが共に描き、イェレナが信奉する新世界の姿がそこで明らかになるのでしょうか?


僕「ジークは逃げてシガンシナでエレンと合流する(キリッ!!)」
ま~た余計な恥かかせてくれちゃって、この髭面野郎はよー、もーしょうがねーなーブツクサ


ところでジークの脊髄液って、どうやって採取してワインへ混入したんでしょうね。現代日本の医療技術であれば、吸引用の針を背中に刺してカテーテル(ゴム製のチューブ)でちょっとずつ抜いていくことになるんでしょうが、マーレの技術水準は20世紀前半くらい。まだまだ荒っぽい感じだと思われます。


脊髄液はどの程度まで希釈していいのか判然としませんが、仮に濃度1%が必要だとして、ワインボトル750mlに対し7.5mlの脊髄液を入れると考えます。お弁当の小さなしょうゆパック2つ分くらいです。人間の脳脊髄液は100~150mlくらいが存在していて、24時間で500~700mlほど生産されているらしい(※wikipedia調べ)ので、常に体から湧いて出てはくるようですが、それだけ新鮮な脳脊髄液が人体にとって必要であるとも言えるわけです。


それを生産される端から抜いて行ったら生命維持に支障を来す恐れが強いですから、安全策を取るなら1日に採取できる量は1割程度、50mlといったところではないでしょうか。この量だとワインボトル7、8本に入れておしまいです。100本のワインを用意するのに2週間、1000本だと半年は脊髄液を抜き続ける必要がありますね。


ワインの製造過程から混入するわけではなく、すでに封をしてあるワインに後から加えるのでしょうから、これもまた地道な作業です。栓を抜くわけには行きませんので極細の注射針をコルクに刺してチューッと注ぐ。オニャンコポンですらワインなんか初耳という反応だったので、これらは軍による作業ではなく秘密裏に用意されていた可能性が高い。ジークやイェレナが仲間にも隠れてこっそり大量のワインを用意していたなら、「金田一少年・犯人の事件簿」みたいになっちゃいます。ジーク「やることが・・・やることが多い・・・!」


まあ、本筋とは関係ないんでどうでもいいですけど。


老人と若者と


さて、予想に反してあっさりリヴァイにポカッとやられてテヘヘな状態になってしまった噛ませ犬ジークのことは置いといて、我らがエレンはどうしているのでしょうか?


前回、イェーガー派が向かった先はシガンシナでした。そこではキース=シャーディス教官による訓練兵団の教練が行われている最中。しかし訓練兵たちの士気は低く、聞こえよがしに不満を述べている者すらいます。これからのエルディア軍に必要なのは近代的な重火器の訓練であり、巨人相手の立体機動ではない。人間相手に戦争をしようというのに、巨人と戦う練習をしても意味がない・・・というわけです。さらにはシャーディス教官はもう古い、イェーガー派が実権握ってくんねーかなーなどと言い出す始末。


こんな私語が教官本人にまで聞こえるように飛び交っている時点ですでに規律は崩壊していますが、シャーディスは何も言いません。彼自身もそう考えているのか・・・?


そこへ待ってましたとばかりにフロックが登場。ハンジを人質にし、シャーディスへ銃口を向け、訓練兵たちにイェーガー派への合流を促します。その言葉に乗ってフロックへ恭順を示す者多数。彼らへ向け、フロックは踏み絵代わりとしてシャーディス教官をボッコボコにするよう命じました。


「ヒヨッコ共が何人かかってきたところで相手にならん」


鬼の形相で睨めつけるシャーディス。老いたとは言えかつては調査兵団で団長まで務め、壁外の地獄を味わい尽くした男。ちなみに公式データブックによると身長198cm・体重107kgの巨漢です。こんな若造どもに舐められるほど腐ってはいない、彼のセリフにはそう思わせる凄みがありました。


果たして、シャーディスは即落ち2コマで美しいヤムチャスタイル(※ボロボロになって地面に横たわる様子)を披露し、これで晴れて訓練兵たちは反体制のイェーガー派として認められたことになります。フロックの清々しいゲス味が最近キレッキレですが、彼がどんな凄惨な最期を迎えるか今から楽しみです。


あれ?そういえばエレンはどこに?


・・・よく見たらなんと今回はエレンの出番は2コマ、窓際に腰掛けて物憂げに外を見ながらカッコつけてるだけ、セリフなし!!


アルミンやミカサ、ジャンコニーら104期は地下牢にまとめて拘留されている様子。


イェーガー派はピクシスを頼らず自分たちでジークの居場所を突き止める、といってハンジを拉致しキャンプ地へ案内させようとしています。一方ジークは脱走中に「ちゃんと場所と時間覚えてるんだろうなエレン」と言っていました。これはどういうことか?


うっかりさんでない限り、エレンはフロックたちイェーガー派の面々にはジークとの合流場所や日時を知らせていないことになります。エレンだけがジークとの約束の場所へ行き、他のイェーガー派についてはハンジに案内させて、行き違いの状況を作ろうとしていた。つまりエレンにとってイェーガー派は「使い捨ての駒」だと考えているか、もしくは「危ないからこれ以上はついて来るな」と考えているか、どちらかです。まあ多分後者ですよね。アルミンやミカサを傷つけるような発言もこの推測に矛盾しません。味方を騙し、幼馴染を騙し、ジークと共に使命を背負って何かを為すつもりなのでしょう。


ジークの使命が回想から明らかになることを楽しみに、次号を待ちましょう。


つづく

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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