ここ最近のお話
・リヴァイ班 憲兵団の目を逃れて潜伏中
・エルヴィン 王政府が人類の記憶を改竄していると考え、ヒストリアを切り札にクーデターを計画。トロイの木馬作戦を決行。
・エレン&ヒストリア トロイの木馬作戦でわざと憲兵に捕まる算段だったが目論見がバレてしまい、ガチで拘束された。
・憲兵団 エレンとヒストリアの身柄を拘束した。
・リーブス商会 対人制圧部隊により全滅。会長の息子フレーゲルのみ、現場を目撃しながらも生存している。
「進撃の巨人」第57話 切り裂きケニー
別冊少年マガジン 2014年6月号掲載
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ハンジの仮説
エレンが見た「夢」…巨大樹の上でユミルとベルトルトが交わした会話の記憶…の内容を聞いたハンジは血相を変えてエルヴィンの元へ走っていました。
足元がおぼつかなくなるほど息を切らし駆け込んだエルヴィンの部屋で、ハンジはエレンを使ったトロイの木馬作戦の中止を進言。
その根拠について先を促すエルヴィンに、ハンジは語り始めます。
「…レイスは エレンを食う気だ」
エレンがハンジに伝えた内容は、単行本の12巻に収録されている場面です。夢の割にかなり正確に伝わっています。
ユミルが60年間壁の外をさまよっており、その後ライナー達の仲間を食って人に戻ったことを二人は知りました。
そこからハンジが導いた推論は次のようなものです。
・ユミルが食ったのはライナーの仲間であり、巨人化能力を有した人間である
・巨人にされた人間が、巨人化能力を有する人間を食べることで、対象の巨人化能力を取り込んで制御できるようになる(人間に戻れる)
・ライナーがエレンに巨人を投げつけたのは、巨人にエレンを食わせて能力だけを継承させようとしたから
・レイス卿はエレンを巨人に食わせ、その力を誰かに移すかもしれない
アルミンやハンジなど賢いポジションの推論はメタなシナリオ論として考えるとほぼ当たっているのだろうと思われます。
そして、「叫びの力で巨人をコントロールできるエレンは唯一の存在だから、敵対勢力にも殺されはしないだろう」という楽観論の根拠が崩れたことを意味します。
エレンを失えば手駒として使える巨人はいなくなり、ウォール・マリア奪還作戦が不可能になる。
ハンジはトロイの木馬作戦の中止を唱えますが、時既に遅し。すでにリーブス商会の裏切りが露見して会長が殺された後です。
ここでよくわからないのは、どの時点で「食った」とみなされるかです。
巨人には消化器官がなく、食ったものはペリットにして吐き出す習性がありますので栄養として吸収するわけではありません。
エレンは巨人化能力を有していながら一度巨人の胃袋まで落ちたことがありますが、その際にエレンを飲み込んだ巨人は特に変化していたようには思えません。
であればあと幾ばくかの時間がたてば、あの巨人は人間に戻ったのでしょうか?
ハンジの話をひと通り聞いたエルヴィンは、作戦の続行や中止の判断には触れず(仮に中止を決めたとしてももう間に合いませんが)、レイス卿の領地に放った諜報員からの報告書をハンジへ手渡します。
なぜレイス家の中でも妾腹であるヒストリアが継承権を持ち、王政に身柄を狙われているのか…その報告書にヒントがあるに違いないとエルヴィンは考えているようです。
さて、それじゃ早速中身を拝見しましょうか…と思った矢先、エルヴィンへ出頭するよう中央憲兵からの言伝が。調査兵団の組織ぐるみでの殺人容疑だということらしいのですが。
事を察したエルヴィンはハンジに身を隠すよう指示、以降は独自の判断で行動するよう伝えると、最後にハンジを次の調査兵団団長に指名します。ハンジの手元にはエルヴィンから託されたレイス領の調査報告書が握られていました。
そしてニヤリ(計画通り!)とほくそ笑むハンジ…のような描写はなく、部屋に一人残されたハンジの胸中を窺うことはできません。
殺人容疑
命じられたまま街の広場へ出頭したエルヴィン。中央憲兵の足元にはリーブス商会の長、リーブス・エドワード氏の亡骸が・・・
ん? 会長の名前ってリーブス・エドワードだったっけ?
コミックス13巻より。会長の名前はディモ・リーブスだったはずでは・・・
ディモ・リーブス・エドワード?
まあ会長の名前をそんなに気にする必要もないので見なかったことにします。
話を元に戻すと、リーブス商会の会長とその他2名が喉を裂かれて死亡しているのが発見され、その容疑者として調査兵団が挙げられている。
調査兵団がエレンらをさらったリーブス商会を独自に探り当て、実力でこれを排除。実行犯はエレンを連れて逃亡中というのが憲兵団の描いた筋書き。
無実を明らかにするために調査兵団は全員出頭しろ、というのが憲兵団からの指示でした。これに従えばリヴァイ班も捕らえられてしまいますから、要求を呑むわけには行きません。
従わなければエルヴィンは犯罪者の汚名を着ることになります。
会長の亡骸に寄り添う家族へ声をかけ、会長の無念は必ず晴らすと誓うエルヴィン。シガンシナ陥落時のチンピラヤクザみたいだった商会のボスが、その最期はかなり敬意をもって扱われています。この漫画で最も扱いが良くなった人物ではないでしょうか。
そんなやりとりを路地からこっそり窺う人影は、会長の息子フレーゲル。ハンジは彼を屋根の上に連れ去ると、詳しい話を聞き出します。
そして真実を明らかにして戦おうと鼓舞しますが、フレーゲルは徹底して拒否。自分はコソコソ逃げ回りながら生きていくのがお似合いだと抗弁します。
なりふり構っていられない状況のハンジは強引に彼を拉致。あんたらはもう負けたんだと言うフレーゲルへ、ハンジが放った一言。
「何言ってんの? 調査兵団は未だ負けたことしかないんだよ?」
細かいことを言えば「人類が今日 初めて巨人に勝ったよ」とリコが涙した、トロスト奪還作戦での成果はありましたけどね。野暮なことは言わないってことで。
2日後。出頭を拒否したリヴァイ班は殺人犯として手配され、彼らは変装しながら路地裏を隠れ歩いていました。
張り込みによって、エレンとヒストリアを移送中と思われる不審な棺を抱えた葬儀屋を発見したリヴァイ班はその奪還を目論みます。
すっかり巨人相手ではなく人間vs人間の構図になってしまった「進撃の巨人」。
「やはり、最後の敵は同じ人間だったな」 ネルフを自衛隊に襲撃された際、冬月副司令が漏らした言葉が思い起こされます。
ジャンは人間を相手に戦うことに葛藤していました。巨人相手に戦って食われて死ぬ覚悟はしていた。人類を救うために。なのに暴力で人を従わせたり殺したりするのは御免だと。
コニーやサシャも口が重く、深刻な表情でその言葉を受け止めます。リヴァイがヒストリアを脅して従わせたやり口にも内心で不満があるようです。
ミカサは目的のためには冷徹で合理的なスタンスを崩しません。エレンのことがあるのでもっと感情的になるかと思っていましたが、かなり冷静に最善策を判断しています。
ミカサの「最善」という言葉を見てピンときた人は、かなりの進撃ウンチク野郎ですね。「最善策にとどまっていては敵と上回ることはできない」とはエルヴィンの訓示です。それで第一次女型捕獲作戦は失敗しました。
切り裂きケニー
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ミカサの言葉を受け、腹をくくったリヴァイ班の同期たち。不審な棺桶2つを運ぶ葬儀屋を尾行し、あわよくば棺の中身を奪還する体勢。
リヴァイはなぜ都合よく葬儀屋の通るルートを予想できたのか? それは実働部隊の思考の癖が自分に似ているからだと、兵長は感じていました。
そしてその癖は幼少期にある人物から仕込まれたもの。例えばこうして尾行する時は見晴らしのいい高台から…
そう思い当たった瞬間、乱暴に屋根へ駆け上がってきた人影が一つ。
リヴァイが隣にいたニファに逃げろというよりも早く、人影が放った銃弾がニファの顔面を吹き飛ばします。頭の半分がなくなる大威力で即死!それだけの銃を両手で2丁扱う、超人的な膂力と射撃センスの持ち主は・・・やはり黒コートの男。
かつて都で切り裂きケニーと恐れられた大量殺人鬼、リヴァイの育ての親、対人制圧部隊隊長、そしてヒストリアの母を殺した男。ケニー・アッカーマンです。
ケニーとその部下により、葬儀屋を取り囲んでいた調査兵団を皆殺しにされたリヴァイ。ケニーと久々の対面ですが、その顔は敵愾心に満ちていました。
リヴァイ抜刀!つづく!