エレンとヒストリアを狙った誘拐事件。だが連れて行かれたのは囮で変装したジャンとアルミンだった!
武装したリヴァイ班が取り囲む監禁場所。誘拐犯たちに明日は来るのか・・・!?
進撃の巨人 第54話 反撃の場所
別冊少年マガジン2014年3月号掲載
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ヒストリアが見た「おねえちゃん」の夢
今回は唐突な回想から始まります。
農作業の休憩中でしょうか、牧草ロールの傍らに腰掛け本を読む幼きヒストリア。鼻水垂れてます。
その隣で本の読み方を教える、長い黒髪に麦わら帽子の女性。
前回エレンの記憶にフラッシュバックし、エレンが一瞬ヒストリアと見間違ったあの人物です。
ヒストリアは彼女を「おねえちゃん」と呼んでいて、ふたりの顔つきは似ていますが本名や関係は不明。
年齢はヒストリアと一回り以上離れているように見えます。
この世界は辛く厳しいことばかりだから、皆から愛される人になって助け合いなさい――。
「おねえちゃん」はヒストリアにそう諭し、そして立ち去ります。
彼女が自分の額とヒストリアの額をくっつけると「ピリ」と電流のようなものが走り、不思議なことにヒストリアから「おねえちゃん」の記憶は失われていました。
「ごめんねヒストリア もう時間になっちゃった」「今日も私のことは忘れてね また会う日まで」
よだれを垂らし夢から覚めるヒストリア。エレンと一緒に待機している部屋のテーブルでうたた寝していたようです。夢の内容はもう忘れてしまいました。
今頃リヴァイ班は誘拐犯のアジトに攻め入っているはず。部屋でふたりきりの中、沈黙に耐えかねたエレンは巨人の硬質化能力を使えないことをヒストリアに詫びます。
ユミルを早く助けたいのに、遠回りさせてすまないと。
しかしヒストリアの考えでは、ユミルは自分の意志でライナーたちの側についているのだから、助けるというのは違う。ユミルにもう自分は必要ない。自分に残っているのはよくわからない出生の事情と役割だけで、自分がどうしたいのかもよくわからないとのこと。
ずっと演じていたクリスタ・レンズの仮面が剥がれたとき、彼女自身は空っぽで誰からも愛されたことがなく、、今まさに命がけで作戦を遂行している仲間の安否にすら思いが及ばないような無感動な人間だった。
こんな自分を見て皆は失望しただろうと自己の内面について露悪的な物言いをするヒストリアですが、エレンはばっさり切って捨てます。
何もしなければ食われて死んでおしまい、内面について悩んでいる暇なんかないと。これは現代日本とは対照的ですね。私達は物質的に満たされているからこそ自己の実現や人間関係といった、生存とは関係のないステージで悩んでしまいます。明日食べるものがなければ考えてる余裕なんてないのです。
そしてエレンは「以前のクリスタは笑顔が不自然で苦手だったが、今のヒストリアはそうじゃない、普通のヤツだ」「今のお前は何かいいよな」と不器用ながらもストレートなフォロー。これにはヒストリアも思わずときめいちゃう!ミカサが居合わせなくてよかったと安堵する筆者でありました。
別に人間なんてそれが普通なんじゃないの?という主旨のセリフは前にアニが言ってましたね。不正やズルいことに流される悪人やクズであっても普通の人間、私はそんな弱い存在であっても人間と呼ばれたい…。アニは何に流されていたのでしょうか。
誘拐犯のアジトで
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誘拐の実行犯はリーブス商会。そのボスが直々にエレンとクリスタを検分するとのことでお出ましになりました。
どこかで見たような強面の太っちょハゲ。熱心な読者ならひと目でわかるでしょう、トロスト区が巨人に攻められた時、荷馬車を門につっかえさせて騒ぎを起こした挙句ミカサに脅されてブルっちまったあのオッサンがまさかの再登場。ご健勝何よりでございました。名前はディモ・リーブス!公式ガイドブックにも名前がなく「商人」としか載っていなかったのに、出世しましたね。
余裕シャクシャクで登場した割にはミカサとブランク明けのリヴァイにボディガードもろともなぎ倒され、拳銃で悪あがきを試みるもサシャの弓で銃を使用不能にされあえなく御用。
どうでもいいですが、アルミンを撫でまわしていた誘拐犯はアルミンが男だとわかっても幻滅せず、新たな性癖に目覚めてしまいました。同人誌出版決定!後ろのほうのページで涙目になるアルミンをジャンがなぐさめる様子(ついでにサシャとコニーが笑いをこらえる様子)が見て取れます。
リヴァイはリーブス会長をトロスト区の壁の上に座らせ情報を引き出そうとします。意外にも暴力なしの紳士的な話し合い。同じシチュエーションでニックを脅したハンジの方がよほど狂ってましたね。
リーブスがゲロった情報によると、今回の件は取引でなく脅されて従っただけ。中央憲兵により財産と生命を奪われたくなければ服従するしかなく、リヴァイ班の潜伏場所(山小屋)の夜襲と今回の誘拐に失敗したのでもう猶予はない。恐らく主だったメンバーは始末され、家族は路頭に迷う。
その窮状につけいるためリヴァイが切ったカードは、エレンとクリスタの身柄引き渡し。交換条件として(1)調査兵団と共に権力に立ち向かうこと、(2)調査兵団を信用すること、(3)商会が入手した食材や嗜好品を優先的に調査兵団へ回すこと。
要するにリーブス商会のコネクションや情報・流通網を取り込み味方につける方が、誘拐犯として処罰するよりも有用であるとの判断です。ミカサは感情的に許しがたいと言った風ですが、特に異を唱えるまではしませんでした。
交渉成立です。
人間相手の戦いの始まり
後日・・・リーブスは実際よく働いているようで、エレンらを狙う憲兵が乗る馬車を崖から落とし行方不明にさせ、リヴァイやハンジらへ引き渡す工作を行っていました。憲兵が目覚めた時、彼の前には拷問道具を手にしたリヴァイとハンジが待っていました・・・。
ちなみにこの憲兵の名はジェル・サネス。ニック司祭を拷問死させたと目されている中央第一憲兵団の兵士です。彼は何を知っているのか。
王都ミットラスへ出向いたエルヴィンが尋ねたのはピクシスの部屋。王がエレンとヒストリアの身柄をなりふり構わず確保しようとしていることを訴え、住民や壁の安全を守るために王政を打倒し兵団が実権を握るべきだと、クーデターの相談です。
それを黙って聞くピクシス司令。彼の返答は・・・? 続く!
なお、今回初めてこの壁の中の王らしき人物が登場しました。
セリフなし。王冠のデザインがしょぼいせいもあって威厳が微塵もないw
身なりは思っていたような豪奢なものではなく簡素。どちらかと言うと研究者や技術者のような出で立ちです。
熱心に何事かを会議する家臣達を前にして気だるげな視線に頬杖と覇気は感じられず、何か別のことを思っている様子が見て取れます。
この描写から直感的に察知できたのは、王も本意で王の地位についているわけではなく、何かに縛られているのだということ。
それが例えば血筋や家柄のような個人的なものなのか、それとも世界の枠組みに関係するような大きな役目なのか・・・。
この風情から、王は時間や次元を超えた別の世界を知っているような雰囲気を筆者は感じました。いつもの当て推量ですけどね。
・絵本には何が書いてある?
冒頭で「おねえちゃん」がヒストリアに与えた絵本。
この世界の文字は現代のカタカナを上下ひっくり返したものに近いことは周知の事実ですが、この本には何が書いてあるのでしょう?
挿絵が古代エジプト風で笑ってしまいましたが、りんごを持った少女とフードを被った悪そうな人物・・・「白雪姫」でしょうか?
【追記】
読者の方からメッセージを頂きました。
挿絵の少女はおそらく北欧神話に登場するイズンを意識したものだと思われます。
イズンの手からでなければ食べていれば不死になるリンゴを受け取ることができない。アース神族の神々はそれを食べていました。また、イズンは胡桃に変身させられたこともあります。
アニメのEDに登場する転がる胡桃。クリスタのモデルはイズンだと思われます。
ありがとうございました。
イズンは北欧神話の女神で、若返りをもたらす金のリンゴの管理人ですね。
イズンが巨人に誘拐されてしまい、神々は不死のリンゴが食べられず困ります。
彼女の奪還に向かったロキは魔法でイズンをクルミに変え、無事連れ帰った…というのが大筋です。
興味のある方は解読に挑戦してみてください。