進撃の巨人 ネタバレ考察

(96)希望の扉

ライナーの視点で語られる、シガンシナが壊滅した「あの日」の物語。

幼き戦士たちは何を思い、どのようにして壁の世界に地獄をもたらしたのか。

寿命を奪われ、世界に憎まれ、強大な力と困難な使命をその小さな体躯に宿し、彼らはパラディ島へ到達した。

翌朝、マルセル=ガリアードが「無垢の巨人」であるユミルに襲われ、死亡するという事態が起こる。

暗雲が垂れ込める始祖奪還計画に、残り3人の戦士たちはどのように希望を見出すのか…。

進撃の巨人 第96話 希望の扉
別冊少年マガジン2017年09月号(08月09日発売)掲載

口論

パラディ島へ渡り、壁に到達する前にキャンプをはったライナー・アニ・ベルトルト・マルセルでしたが、日が昇った途端にユミルに出くわしてマルセルが死亡。ライナーは無我夢中で、仲間を顧みずに遁走します。

いくぶん走ったところで、息を切らせて追いついてくるアニとベルトルト。襲われた時点ですぐにあの巨人(ユミル)を押さえれば良かったのに、あまりに唐突だったためライナーがパニックを起こし、釣られてベルトルトも逃げ出したのでアニも雰囲気に飲まれてしまったようです。恐怖やパニックは伝染すると言いますからね。

戦士たちは未熟ゆえにわずか1日にして貴重な「九つの巨人」の1柱を失う失態を演じ、計画には大きな狂いが生じます。隊の指揮はマルセルが担う手はずであり、司令塔を失ったことでアニはこの作戦は失敗と判断。人に戻っているであろうユミルを回収して引き上げることを提案します。

ベルトルトも無言で同意しますが、それを引き止めたのはライナー。真っ先にパニックを起こして逃げ出した当事者で、おそらくこの事態に対し最も重い叱責を受けるであろう立場です。アニいわく、帰国すれば「鎧の巨人」を剥奪されるだろうとのこと。つまり死んでポルコあたりに交代させられるわけです。ライナーの脳裏には母の顔がチラつき、必死に作戦続行を主張します。

「顎の巨人」は走力に長けており、逃げられるとすんなり回収できるかどうかもわからない。手ぶらでおめおめ逃げ帰ったら3人とも連帯責任で処刑される恐れだって高い。じゃあどうするの!? 成果を持ち帰るしかないでしょ!と口角泡を飛ばして大演説をぶちあげるライナー。

他の2人はしばらく黙って聞いていたものの、そこまで考えてるならパニクって逃げんじゃねーよと至極真っ当に批判するアニは、納得行かずイラ立ちをつまさきに載せてライナーを一通りボコします。なすがままにされ地面に転がったあと、顔面血だらけでユラリと幽鬼のごとく立ち上がったライナーは背後からアニに飛びつくなり、だいしゅきホールド(裸絞め)。

ライナーが決意したのは、自分がマルセルになるということ。マルセルはライナーを弟ポルコの身代わりとして戦士にしたことに罪悪感を抱き、ライナーを庇って死にました。グズで意気地なしのライナーはここで死に、マルセルの代わりに頼れるリーダー役を務めるべく生まれ変わることを誓います。思えばこれがライナーの人格障害のはじまりだったのでしょう。

壁への侵攻

ライナーとベルトルトを抱え、パラディ島を内陸へ向けて進む「女型の巨人」。叫びでモブ巨人を大量に呼び寄せ後ろに引き連れています。本来であれば「顎の巨人」と交代でメンバーを運搬するはずだったのですが、マルセルが潰えたことでアニに負担がかかり体力は限界。しかし鎧や超大型は運搬や移動には適さず、また壁を崩す役割のために消耗を抑えなければなりません。ここはアニに踏ん張ってもらうしかない。足を止めればモブ巨人に自らが襲われてしまいます。

息も絶え絶えに走り続け、ようやく壁が見えたところでライナーが巨人化してスタンバイ。ベルトルトが壁に走ります。間近で見るウォール・マリアの威容に息を呑むベルトルト。いくら超大型巨人とはいえ所詮は一個の生物にすぎず、戦備えの強固な守りを突き崩せるのか確信を得るには遠く及びません。

しかしベルトルトの背後では、叫び続け走り続けたアニが疲労困憊で昏倒。遠くからはアニが呼び寄せた「無垢の巨人」がライナーの予想を超える数の群れをなして迫ってきます。引き下がることはできない。光とともにその姿を表した超大型巨人。ベルトルトは壁越しにシガンシナの街を覗き込みます。密集した街区。驚きこちらを見上げる人々。その中には幼い日のエレン、ミカサ、アルミンの姿もありました。

ベルトルトはあえて何も考えず、ただ黙ってシガンシナの扉を蹴破ります。その先に仲間たちの希望があると信じて。

そして扉には大穴があき、無垢の巨人の大群が雪崩を打ってシガンシナに殺到。ここから壁の人類史上最悪の日が始まり、エレンたちの物語が幕を開けることになったわけです。

アニが避難所の毛布の上で目を覚ました時、すでに作戦の第一段階は終了していました。シガンシナは陥落し、それまで平穏を享受していた無知な住民たちは、突如として降ってわいた理不尽を受け止めきれずにいます。同じ避難所にはエレンたちが身を寄せ合う姿もありました。

故郷から遠く離れた壁の中で、同士はわずか3人だけ。本当の戦士になることを改めて仲間とマルセルに誓ったライナーです。

今回、シガンシナ侵攻時に女型の巨人が姿を見せなかった理由が明らかになりましたね。パラディ沿岸部からひとりで走り続けてライナーとベルトルトを運び、「無垢の巨人」を呼び寄せたせいで体力を大きく消耗していたから、というのがその理由。壁を蹴破ってすぐ巨人化を解いたベルトルトと共に、壁上でシガンシナの陥落を待っていたようです。

農地で

それから1年経った秋口。

農地開墾の賦役を課せられていると思しきライナーたち3人は、同僚のオッサンが語る「あの日」の出来事に聞き入っていました。オッサンいわく、

ウォールマリアの南東にある山村で暮らしていて、壁が破られたニュースよりも先に巨人の侵攻にあった。明け方に地響きがして窓を開けると、そこには巨人の姿があり、その後は無我夢中で逃げてよく覚えていない…。

このエピソードは4巻16話でベルトルトがエレンに語った「体験談」と全く同じです。妙に細部がリアルなアリバイだなと感じていましたが、他人の実体験をそのまま流用していたとは、改めてベルトルトの記憶力と演技力には感服させられます。

170809_01↑オッサンの回想

170809_02↑4巻16話より、ベルトルトの「体験談」

巨人の顔まで一致しているとはベルトルト恐るべし。役への入り方がハンパじゃありません。「彼岸島」の宮本明(初期)を超える妄想力と言ってもいいでしょう、このムッツリ腰巾着野郎!

このオッサンは村で唯一の生き残りだったようですが、その冬に絶望に耐えかねたのか首を吊って世を去りました。住民が全滅した村…。ベルトルトたちはそれに乗じて出身を偽り、背乗りしていたわけですね。

あっという間に季節は巡って、翌夏。相変わらず開墾に精を出すファーマーたち。この2年の間、アニは密かに女型となってウォール・シーナへ短時間の潜入を繰り返し、情報を集めていました。

それによって分かったことは、壁に君臨するフリッツ王家をはじめ権力者たちは「ユミルの民」ではなく、他人種系エルディア人であるということ。つまりアッカーマン家と同様に「始祖の巨人」の支配を受けないため、真の王家から機密保持の見返りとして厚遇されていると考えられます。ここでは触れられていませんが、強固な誓約があると言うウォール教の幹部もこの手合いか。

「始祖の巨人」を擁する真の王家は表舞台に立たずどこかに隠れているため、いち難民であるアニが簡単に接触できるわけもなく、唯一考えられる方策は中央憲兵として王宮に近づくことでした。

残された10年の寿命を訓練や兵役で消費することにアニは難色を示し、壁を破壊して回れば防衛のために始祖が出てくるだろうと主張します。 しかしウォール・マリアを破壊しても王家が動かなかったことや、仮に王が本気になったら壁の中の巨人が全て動き出し、たちどころにライナー達がひき肉にされてしまうこと、更に報復としてパラディ島から本土へ侵攻する可能性があることなどから、ライナーはリスクが高すぎるとしてアニを押しとどめます。

この時点では既に「始祖の巨人」はグリシャによって強奪され、真の血筋であるレイス家はロッドとヒストリアを除き皆殺しになっています。残念ながらアニの意見が通ったとしても望む結果は得られなかったでしょう。

結果的にライナーの意見が通り、3人は訓練兵団に入ることになりました。そして図らずも、無自覚のまま「始祖の巨人」と「進撃の巨人」を身中に抱えたエレンに邂逅します。世間はなんと狭いことか!

23巻と「キャラクター名鑑」が別マガと同日に発売

本日(8月9日)付けでコミックス23巻と、キャラクター名鑑が発売になっています。索引があるので、当サイトのようなブログ書いてる人にはとても便利。ただ図鑑より諫山先生のインタビューの方がメインになってるような気がする…w

170809_03

170809_04ユミルは完全に「死亡」表記で、生存説は終了。人物図鑑は身長・体重・誕生日、名シーンが話数付きが記載されています。これまでのストーリーをおさらいするのに丁度いいかもしれない。 

進撃の巨人 キャラクター名鑑   


進撃の巨人(23)

コミックスはマーレ編の冒頭(91話)から。

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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