進撃の巨人 ネタバレ考察

(86)あの日

奪還したシガンシナ区、エレン生家の地下室でついにたどり着いたグリシャの秘密。
机の引き出しに隠されていた手記の内容は、壁の外に広がる世界の真実だった―。
これまで様々な憶測を呼び、ファンの間で熱い議論が交わされた世界の構造が、今号ついに明かされる。

進撃の巨人 第86話 あの日
別冊少年マガジン 2016年11月号(10月8日発売)掲載

グリシャの手記

時はグリシャの少年時代まで遡ります。

壁の世界とは異なる町並みを、グリシャは妹のフェイと並んで歩いていました。

空を見上げれば、そこには当たり前のように飛行船が浮かんでいます。壁の中では空を飛ぶための発明や思想は禁制とされているため、この一点においてすでに全く異なる体制下であることが窺えますね。

グリシャは背格好からして小学校高学年くらいでしょうか。なかなかに賢しく、飛行船が水素によって浮かび、電池式モーターでプロペラを回して進むことなどをフェイに説明しています。

悠々と空を進む飛行船を、目を輝かせながら見上げ嘆息するフェイ。高い壁の向こうに飛行船の姿が隠れ見えなくなると、グリシャは彼女の手を引き、発着場を見に行こうと誘い出します。

しかし発着場は壁と鉄柵で囲われた街区の外にあり、グリシャたち兄妹は母親から外には出ないように言いつけられていました。制服姿の見張りの横をすり抜け、怒号を無視して街区の外へ出る二人。外にも街が続いていますが、こちらは建物が立派ですし歩いている人の服装も綺麗です。

通行人がグリシャたちを見て「ドブネズミ」「穢れた血」などとこれ見よがしに悪態をつくこと、兄妹が大きな腕章をつけていることから、彼らは被差別階級として壁で囲った街区の中に隔離されているのだ、ということが分かってきます。史実ではナチスドイツがユダヤ人に対してこのような標識(ダビデの星)を義務付けていました。グリシャの姓であるイェーガーなどもドイツ的ですから、この舞台は第二次世界大戦期のドイツがモチーフと思われます。見たとこ文明レベルも概ね合致しているようです。

161008_01

隔離エリアの外で冷たい目で見られながらも、幼い兄妹はすぐに捕縛されるようなことはなく、川の土手に上ると着陸した飛行船がよく見えました。

が、その様子を河原で休憩中だった官憲らしき二人に見咎められ、外出許可証を持たない彼らはその場で制裁の対象となります。妹を庇って二人分のリンチを受けるグリシャ。官憲の話から、グリシャたちは「エルディア人」であること、隔離されたエリアが「レベリオ収容区」と呼ばれていることが分かります。

妹は先に家へ帰す、と言って一人の男がフェイを連れて行きますが、恐るべきことにそれがグリシャとフェイの最期の別れとなりました。

翌日、河原で血まみれの遺体となって発見されたフェイ。彼女を連れ去った男は知らぬ存ぜぬの一点張りで、グリシャ兄妹の両親に対し子供が無許可で収容区から出た非を責めます。そしてその叱責は血筋絡みのそもそも論となり、父親は権力を前に逆らうことが出来ず、ご指導ありがとうございますと礼まで述べる始末。

これ以上の不利益を避けるための処世術とは言え、まだ幼く純粋なグリシャの目には父の姿がひどく醜悪に映り、いわく「目眩のするような憎しみを覚え」たと述べています。

世界のなりたち

グリシャの父は警察に「お前んとこのガキ、よ~く教育しとけや」と凄まれ、それを愚直に実行します。家に帰ってからのお勉強タイム開始。

この世界のあらましを説明してくれるという、読者にとっては大変ありがたいオッサンです。ありがとうグリシャのお父さん!

昔々1820年前、ユミル・フリッツは悪魔と契約して巨人の力を手に入れました。ユミルは死してその巨人の力を9人に分け与えると、その子らがエルディア帝国を打ち立てて、当時の大国・マーレを征服。ユミルの子らは征服した敵国に対し民族浄化政策を続け、それが他国の反感を買います。

161008_02

マーレ国は1700年にも渡る長い雌伏を経て、腐敗したエルディアに内戦が起こるよう工作。ユミルの子孫に代々伝えられてきた「9つの巨人」のうち7つの力を手中に収め、エルディアに「巨人大戦」を挑み勝利、復権を果たしたのが80年前(グリシャの少年時代から起算)。

戦争に負けたユミル直系フリッツ王家は東の離島・パラディへ逃亡し、そこに巨人の力で三重の防壁を築きあげました。つまりエルディアの王様と残党が逃げ込み、壁の中に籠城している・・・というのがエレンたちの世界の実態です。

島へ渡ることができず見捨てられたエルディア人はマーレ国によって被差別民としての扱いを受けており、そんな中で生まれた一人がグリシャでした。

レジスタンス

グリシャは無事に成長し18歳の青年となっていました。政府当局への恨みを燻らせながも、父に言われた通りおとなしく過ごし、収容区の診療所で働こうとしていた頃。エルディア復権を唱えるレジスタンスが彼に接触してきます。

妹・フェイのむごたらしい死の真実(マーレ当局による遊び半分のリンチ)を知らされたグリシャは激怒し、打倒マーレに賛同。レジスタンスへ参加してその熱に煽られていきます。

ある夜、レジスタンスの集会所に一人の女性が訪れました。フードを脱いだ女性はダイナ・フリッツと名乗り、自分がエルディア王家の血縁であると明かします。王家は敗戦時にほとんどがパラディ島へ落ち延びましたが、それを拒み大陸での再起を窺う分家があったようで、その最後の生き残りがダイナです。

王家に伝わる歴史書や巨人にまつわる情報の数々は、グリシャたちレジスタンスを鼓舞し勢いづかせるに十分なものでした。

本家フリッツ王がパラディ島へ持ち去った始祖の巨人の力があれば、他の全ての巨人を従えることが可能となる。巨人の戦力を操れば戦争に勝つことは造作もなく、マーレを滅ぼし大陸はふたたびエルディアのものとなる・・・!

争いを嫌い離島へ引きこもったフリッツ王家から始祖の巨人を取り戻し、大陸へその力を呼び戻すこと。ダイナを新たな女王として擁立しエルディアを復興すること。それがグリシャ率いる(いつの間にかちゃっかりリーダーになってるw)レジスタンスの目標です。

グリシャがレイス家の地下洞窟に忍び込み、一族を皆殺しにしてまで巨人の力を欲したのはなぜなのか?
その動機の発端がここにあります。グリシャから見れば王家は臆病風に吹かれて壁に引きこもった裏切り者であり、力を持っていながら大陸の同胞を見殺しにしたも同然。王家が始祖の巨人の力を用いていたなら、エルディアが戦争に勝っていたなら、妹は死なずに済んだのに・・・。

そしてダイナとグリシャは、け、けけけ、結婚~~w
仮にも王家の末裔と、いち若手医師が!
まあ王族は皆死んで彼女しか残ってないみたいですし、血を絶やさないことが今は肝心なので別にいいか。

問題はその次です。二人の間には世継ぎとなる男児が生まれ、エルディアの勝利を願ってジーク(勝利)と名付けられました。前号で衝撃的に登場した一枚の写真、そこに写っていた家族の正体は、若かりしグリシャと、王家の血を引く妻ダイナ、その子ジークでした。

獣の巨人であるジークがグリシャに似ていたのも至極当然、実の息子だったのです。ジークはシガンシナでエレンをグリシャの被害者だといい、救い出したいと申し出ました。この二人は異母兄弟ということになります。いかにしてジークとグリシャは袂を分かったのか?

広告

募兵

さて数年が経ち、赤ん坊だったジークが、サルのぬいぐるみや積み木で遊ぶように成長した頃。

マーレ政府がエルディア人を対象に「戦士」候補を募ると触れ回ります。表向きはパラディ島のエルディア残存勢力が宣戦布告してきたから、という理由ですが、実際は化石燃料が豊富なパラディ島を占領するための特殊戦力が必要となったためでした。

島へ逃げ去ったフリッツ王家は80年に渡り沈黙を守っているものの、彼らは今なお大量の巨人戦力を壁の中に眠らせており、正面から攻め込んで資源を奪うのは困難と思われます。

そこでマーレは島へ少数精鋭の決死隊を送り込み、フリッツ王家から始祖の巨人の力を奪うことを画策。投入する新たな巨人戦力を育成する上で、5歳から7歳までの子供を募集しました。見返りは「名誉マーレ人」の資格、つまり自由市民になれる権利です。なぜわざわざ敵の同胞であるエルディア人から巨人の後継者を募集するのかはちょっと分かりませんが、基本的に使い捨ての消耗人材であることや、巨人化が必ずしも成功するとは限らず死亡するケースなどが考慮されているのかもしれません。また対象が7歳までの子に限ることから、洗脳や刷り込みが容易という判断もあるでしょう。

(16/11/09追記 87話によると、そもそも巨人化できるのはエルディア人だけ、とのことです。)

この選抜に応じたのがライナー、ベルトルさん、アニたちであることは自明。つまり彼らの親も虐げられたエルディア人で、自分の力では体制に抵抗できず、子を差し出すことで市民権を得た。アニが幼い頃から戦闘技術を叩き込まれていた理由がこれ・・・と思いたいのですが、ちょっと年代計算が合わない。(※後述)

この募兵の知らせを聞きレジスタンスは焦ります。島に隠れている王家から始祖の巨人の力を奪い取りたい、という目論見は彼らとて同じ。マーレとレジスタンス、早い者勝ちの競争になってしまいました。

考えた末にグリシャが決断した方策は、ジークを応募させること。エルディアの未来を息子に託し、敵国の戦士として育つよう仕向けたのです。

しかし、ジークはマーレに忠実に育ちすぎました。うまくスパイとして働いてくれれば良かったのですが、そこはやはり幼さゆえか。詳細は明らかにされていませんが、戦士候補に選ばれてから数年後、ジークは両親を反体制派として政府へ通報します。芋づる式にレジスタンスは逮捕され、その全員が「楽園」送りとなったのです・・・。

その場面の詳細は次号につづく。

 

(16/10/10追記 読者の方からのご質問)
エルディア復権派の中に気になる人がいます。
最後にエルディア復権派は全員楽園送りにされましたよね?
もしかしたら巨人と同一人物なのではないかと思うんです。
気のせいかもしれないですけど一応見て下さい。
161010_10

161010_11

(筆者の回答)
仰る通り、そっくりですよね。
私もおそらくこの人が楽園送りされてああなったのだと感じました。

それどころか、カルラやハンネスを殺害した巨人がダイナ、という展開まであると思っています。
(こちらは髪型が似ている程度なので考え過ぎかもしれませんが…笑)

「楽園送り」にされた後の壮絶なエピソードがおそらく次号で判明するはずですから、
楽しみに待ちたいと思います。

 

用語のおさらい

今回は世界観に関わる専門用語がいきなり増えて、さっと読んだ時点ではファルシのルシがコクーンでパージみたいな感じ。設定が練り込まれている長編のサーガにはこういうことがよく起こります。アルスラーン戦記とか、銀英伝とか、イムリとか…というわけでおさらいしましょう。

■エルディア人…
ユミルを祖とし、巨人の力でかつて大陸を制覇した民族。かつて滅ぼした国によって再び征服された。現在は被差別階級として壁で囲われた収容区で暮らし、腕章をつけることを義務付けられている。

■レベリオ収容区…
マーレ国の体制下で、エルディア人を隔離している街区。高い壁と門で区切られており、武装した警察ないし軍が見張りをしている。許可なく外出した場合は暴力による制裁、もしくは罰として労役が課せられるようだ。

■マーレ…
古代に隆盛した大国。かつてユミルの民率いるエルディア帝国に征服されたが、グリシャ少年時代のさらに80年前、エルディア帝国との「巨人大戦」に勝利し現代に復権を果たす。文化レベルや様式は20世紀前半のヨーロッパに近い。

■「楽園」…
エレン達が住んでいるパラディ島のことをマーレ国ではこう呼んでいる。「楽園送り」といった表現から島はエルディア人の処分先と推察され、モブ巨人として送り込まれるようだ。普通の人間からすれば、知能の低い巨人と化して半永久的に彷徨うのは死よりも恐ろしい処刑である反面、辛いことを考えなくても済むようになる「楽園」なのかもしれない・・・。

■ユミル・フリッツ…
最初の巨人。創世神話では悪魔と契約してその力を授かったとされる。死後9つの巨人に分かれてエルディアを建国し、マーレ国を征服したという。
ベルトルトがエレンたち(パラディ島へ逃げたエルディア人の子孫)を「悪魔の末裔」と呼んだのはこのためと思われる。

■ユミルの民…
巨人化能力を持つ、ユミルの血を引く子孫たち。エルディア人とほぼ同義のようだ。イルゼ・ラングナーにモブ巨人が「ユミルの民、よくぞ」と発した理由がここから推察できる。壁の中の人類も、うろついている巨人も、元は同じエルディア人=ユミルの民なのだ。

■民族浄化…
他国を征服したエルディアが行ったとされる同化政策。敵対的な民族を殺害したり、強制的に妊娠させたりして自分たち以外の民族や文化を消滅させることを目的とする。この行為は1700年間にも渡って行われ、エルディアが他国より誹られる理由となった。
ただし、戦争に勝利したマーレ国によるプロパガンダである可能性が作中で示唆されている。

■九つの巨人…
エルディアの開祖ユミル・フリッツはその死に際し巨人の力を9分割して民に分け与えたとされ、それが子孫へ代々受け継がれていると思われる。モブ巨人との発生の違いは明確でないが、作中に登場する突出した能力を持つ巨人はエレン・超大型・鎧・女型・獣・ロッドレイス・アルミン・ユミル・グリシャ・四つん這い…くらいか。

 

世界のすべてだと思っていた舞台は、実はほんのちっぽけな島でしかなかった。
大陸では戦乱が起こり、逃げだした王家と臣民が仮初の安寧を求めて築いた壁の街。
エレンはそこで生まれ、何も知らずに育った。
壁の向こうには確かに海があり、そのまた向こうには父が暮らした世界がある。
世界の真実を知ったエレンは、父の悲願が詰まった巨人の力を胸に抱え、何を思うのか・・・。

これまでの話で欠落しているのは、当時戦乱から逃げて島に引きこもったとされる145代フリッツ王の視点ですね。壁を作った張本人。
おそらく彼も言われているようなただの臆病者ではなく、何らかの事情を抱えていたのだと思われます。だからこそ、その記憶を継承した島の王家は始祖の力を使おうとしなかった。後継に好戦的な者がいれば大陸へ乗り込んでマーレに喧嘩売っててもおかしくありませんが、そうなっていないことを考えると、引き篭もらざるをえなかったのではないでしょうか。

さて今回で一気に世界の背景が明らかになりました。霧の半分くらいが晴れた感じでしょうか。この事実を踏まえて一巻から読み返してみると、きっと新たな発見があるはず。マーレの戦士視点で読むと、壁の中の諍いが実にちっぽけなものに感じられてきます。ジャンプSQの人気作「7thガーデン」の天使たちもこんな気持ちで住民を「小人」と見下しているのでしょうか…。

いまだ明らかでないミッシング・リンクの覚え書き
・島へ逃れたフリッツ家からレイス家へ巨人の力が渡され、フリッツ家が傀儡化した経緯
・グリシャがいつ誰を食って能力を手に入れたのか、なぜエレンに座標を託したのか
・ユミルの出自と楽園送りになった経緯、彼女の生死
・マーレの戦士たちの目的が、始祖の巨人奪還だけでなく「壁中人類の死滅」にまで及んでいる理由

年表

今回明らかになったピースを埋めておきましょう。以後は常体で。

少年時代のグリシャの年齢は明かされていないが、父親が巨人大戦は80年前だと言っているのでそこから起算すると当時は823年となり、シガンシナでグリシャが医師として活躍した記録がある830年から7年しか遡れない。

そしてジークがグリシャを密告したのは7歳の時だから、830年でジークは7歳以上であり、823年には生まれていなければならない。ちょっと無理がある。

これを解決するには、グリシャの父が語った「80年前」が誤植ですわメンゴメンゴ、とするのが無難だ。コミックスでしれっと修正されているかもしれないので注目したい。

なおジークが幼稚園児くらいに成長した頃にグリシャが「80年前」と言っているので、こちらが正しいと考えれば大きな問題はない。ただしこの場合、楽園送りになってから壁外でキースに発見されるまで数年のラグが発生するため、グリシャは「楽園」をモブ巨人としてさまよい歩き、何者かを食って人間に戻ったことになる。この経緯は次号で描かれそうだ。

ちなみに、アニやライナーたちとジークが同年代には見えず一回り程度の差はあるように思えるため、マーレの戦士の募集は継続的に行われていた可能性が考えられる。

年代850から出来事
743-107人類が巨人から逃れ壁の中に王国を築いた(王政の歴史)
巨人大戦によりエルディア帝国が敗北、残党はパラディ島へ逃亡(マーレの歴史)
810頃?
(※)
-37グリシャ少年時代(年齢不詳)
フェイがマーレ当局により殺害される
※...父親の言う「80年前」は無視し、青年期グリシャの発言を元にしている
816頃?-34グリシャがレジスタンスに参加(18歳)
817頃?-33グリシャがダイナ・フリッツと結婚(19歳頃?)
818頃?-32ジーク誕生
823頃?
(※)
-27ジークがマーレの戦士候補として選抜(5歳ごろ)
※...グリシャの「80年前」という発言がある
825頃?-25ジークがグリシャら反体制派を通報し楽園送りとする(7歳)
830-20グリシャ、シガンシナの壁外にてキースに保護される
グリシャがシガンシナを伝染病から救う
  グリシャ、カルラと結婚
835-15エレン誕生
845-5シガンシナ区がマーレの戦士に襲撃され壊滅
グリシャがレイス家の礼拝堂を襲撃し座標を簒奪、エレンに巨人化薬を使い自らを食わせて力を継承させる
850現在104期訓練兵が解散
マーレの戦士によるエレン略取(未遂)

こんがらがってきた!

広告

別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

Return Top