進撃の巨人 ネタバレ考察

(85)地下室

宿敵・超大型巨人を今度こそ討ち果たし、シガンシナ区の奪還に成功した調査兵団。
しかし獣の巨人と鎧の巨人を取り逃がし、遠征部隊はほんの一握りを残して全滅。戦果と引き換えに失ったものは余りにも大きい。
死んでいった兵士たちの遺志に報いるため、ここで歩みを止めるわけには行かない。
彼らはいよいよ、謎の核心に迫るべくイェーガー宅の地下室へと向かう。そこに隠されていた真実とは・・・。

進撃の巨人 第85話 地下室
別冊少年マガジン2016年10月号(9月9日発売)掲載

生き残った者

戦闘終了から4時間が経過。シガンシナには動くものの影は見当たらず、調査兵団の生き残りは全部でたったの9名でした。

エレン、ミカサ、アルミン、ジャン、コニー、サシャ(意識不明)、リヴァイ、ハンジ、フロック。

作戦行動中に死亡した主要人物はエルヴィン、マルロ、モブリットらが挙げられます。

団長の後任にはハンジが就き、リヴァイがエルヴィンではなくアルミンに巨人化薬を使用したことに含むものはありつつも、リヴァイの判断を尊重すると明言。エレンやミカサが軍規違反を犯し上長に逆らった件については一旦保留とします。

リヴァイはエルヴィンとの友情ゆえに敢えて死に場所を与え、ハンジはリヴァイに免じて割り切っているのですが、瀕死のエルヴィンを担いで運び込んだフロックの胸中はいかばかりでしょうか。彼は少し離れた場所で遠眼鏡を覗きながら生存者を探しており、会話には入ってこず、表情も窺うことができません。内心は相当面白くないんじゃないかなあ・・・。

彼は真面目かつ「運命」「使命」といったヒロイックなワードに弱そうなだけに、これが政治サスペンス寄りのストーリーなら思いつめて謀反するタイプなのですが、さすがに本作の筋としてはそれほど重要ではないかもしれません。この激戦から生きて帰った伝説の9人の一人として壁の世界で教科書に載ってもおかしくない立場とは言え、ストーリー的にはこのままモブとしてフェードアウトしそう。

ともあれ、生き残った者は皆それぞれに託された責任があり、全員がそれを果たすことが先決であると、話は綺麗にまとまります。

広告

地下室の中は

さて話が一区切りついたところで、ハンジは隊を二つに分け、地下室の調査と壁上での見張りを命じます。地下室へ向かうのはエレン、ミカサ、リヴァイ、ハンジ。残るアルミン、ジャン、コニー、サシャ、フロックはお留守番です。

あれだけの激戦にも関わらず、エレンの生家はほぼあの日のまま、更なる災禍は免れていました。

超大型巨人が蹴り飛ばした壁門の破片でペチャンコに押しつぶされた家屋。苔むし、辺りは低木や草に覆われていますが、およそ記憶にあった通りの姿です。

瓦礫を除けると地下室の入り口を覆う鎧戸が現れ、下へ続く階段は無事に残っていました。

グリシャと交わした会話の断片が頭の中を去来するエレンですが、これらは巨人化能力の継承によるグリシャ由来の記憶ではなく、純粋なエレン本人の思い出。

不安と期待の入り交じる表情で地下室の扉の前に立つエレン。後生大事に首から下げていた鍵を使おうとしますが、鍵穴に合いません。顔面蒼白で狼狽えるエレンを尻目に、リヴァイはこともなげに上段蹴り一発で木の扉をぶち破って中へ侵入します。

蜘蛛の巣が張った地下室は、机と戸棚、木箱が並んだ一見ごく普通の作りでした。薬ビンや本棚をチェックするも、そのどれもがごく一般に壁の中で流通しているものであり、異常は見られません。描写はありませんがホコリとカビ臭さが充満していると思われ、リヴァイ兵長がブチギレ寸前であると推察されます。これがギャグ回なら真顔で「まずは掃除だ」とか言い始めてもおかしくない。まあこういうネタって記号化してやり過ぎるとクドいんですけどね。

変わった所が見当たらず焦って部屋の中を探していたミカサが、机の引き出しに鍵穴を発見。エレンが父から託された鍵は、果たしてこの机のものでした。

二重底になった引き出しからは3冊の本が見つかり、エレンはいささか緊張しつつも、ミカサと手を携えて一冊目の表紙をめくります・・・。

あってはならないもの

扉ページには、1枚の写真が挟まれていました。

一同はそれに目を奪われます。「人が描いたとは思えないほどの精巧さだ」と。

・・・そう、壁の世界に「写真」は存在せず、それは異界からもたらされた未知の技術によるものだったのです。

記録されていたのは近代的なモーニング姿の若い男性とドレスを着た女性、そして幼児の3人。家族の肖像と思しき写真の裏には、グリシャの字でこう書かれていたそうです。

「私は人類が優雅に暮らす壁の外から来た」「人類は滅んでなどいない」・・・と。

そしてエレン達は何事かを知り、兵団本部の街へ無事に帰還。ウォールマリア奪還成功の報がもたらされ、市民は歓呼に湧きます。

しかし人類に大きな進撃をもたらした英雄であるエレンたちの表情は描かれておらず、無言の後ろ姿に影が差すばかり。重苦しい雰囲気に押しつぶされそうです。

160909_01

彼らは3冊の本を読み、一体何を知ったのでしょうか・・・?

つづく。

箱庭 

なるほど、このパターンでしたか。

壁の世界は作られた箱庭で、実は外に文明社会が広がっている系の舞台設定。

いよいよこの世界の構造が明らかになりつつありますが、トリックとしては珍しくないので特別な驚きはなく、答え合わせのようなものです。本作は熱心なファンによってありとあらゆるパターンが想定されているので、諫山先生が物語をぶん投げず最後まで整合性をつけようとする限りは、どんな展開になっても全くの予想外ということはないでしょう。

壁の外には文明社会があるということで、ジークが近代野球を知っていたのも納得。写真を見る限りでは我々読者が暮らす現代に比べると少し時代が古く、19世紀~20世紀前半の近代ヨーロッパに近い印象を受けます。

写っているのは夫婦と幼児ですが、紳士は若かりしグリシャでしょうか。婦人と、膝に抱えられた子には見覚えがありません。この写真の家族が一体どんな運命によって弄ばれたのか。それがグリシャの行動をどのように決定していったのか。謎解きが加速する次号から目が離せません。

作中に高次元の文明があって存在を秘匿されている場合、箱庭の扱いは「高次文明によって管理される実験場または家畜」とか、「遺伝情報を保護するための隔離施設(方舟)」「宗教的な理由で機械文明を捨てて自然の中に引きこもった集団」といった例があります。人類を脅かしていると思われた巨人たちは、実はさらに大外にいる敵から壁の中を守っている存在だったとか、秘密を守るために身内が操っていたとかがお決まりのパティーン。具体的な作品名を出すと壮絶にネタバレとなるので言えませんが、映画や漫画ではちょいちょい見かける設定ですね。

実際、本作においても巨人はもはや単なる異質な脅威ではありません。ヒトを薬で変化させた姿だし、壁を支えているのも巨人の力だし、人類を洗脳して意思を統率したのも巨人の能力。つまり人為的に開発されたツールです。じゃあその巨人なる道具は誰が何のために作ったんだ?という、かつてハンジが唱えた疑問に改めて立ち返る時期が来たわけです。そして恐らくはその答えがグリシャの本に書かれている。

それを知ってしまったエレンたちの胸中は複雑で、英雄として凱旋したもののそこには笑顔はなく、何か重大な決意を秘めているように見えます。ベルトルトやライナーたちが壁の人類を悪魔の末裔と呼び、この世界には先がないから皆殺しにしてもいいよねと判断した理由を知ったことで、巨大な葛藤に苛まれることになっているのかもしれません。

次号より、グリシャの本の中身はおそらく過去の回想となるでしょう。彼がどんな宿業を背負って壁の世界を訪れ、血の惨劇を巻き起こした後に自らの命を捧げてエレンを巨人にしたのか。歴代の王はなぜ巨人を滅ぼさずにおいたのか。「進撃の巨人」における最大の秘密が暴かれる今後の展開、早く知りたいような、知ってしまいたくないような、ワクワクともったいなさとが入り混じった不思議な気持ちです。

広告

別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

Return Top