進撃の巨人 ネタバレ考察

(83)大鉈

「進撃の巨人」の象徴ともいえる超大型巨人との決戦を制し、鎧の巨人も打ち倒したものの、その代償はあまりにも大きい。激しい戦いを終え、ようやく一息つけるかと思いきや、生き残った調査兵団員たちを大きな選択が待ち受けていた・・・。

進撃の巨人 第83話 大鉈
別冊少年マガジン2016年08月号(7月9日発売)掲載

ジーク

四肢が切断され巨人化できない状態で転がされているベルトルト。気を失っているようです。

民家の屋上で黒焦げのアルミンを前にしばし感傷にひたるエレンでしたが、その余韻を吹き飛ばす衝撃音が右手より響き、噴煙が上がります。

そこには・・・「四つん這いの巨人」に乗り、元気に走り回るジーク戦士長の姿が!

エルヴィン隊全滅と引き換えにしてリヴァイはジークに迫りましたが、すんでの所で仕留め損ねて四つん這い巨人(そろそろ名前をつけて欲しい)にジークを掻っ攫われ絶望的な追撃戦に身を投じました。ジークに巨人の群れをけしかけられて結局追い切れなかったようです。

ジークは超大型や鎧と合流するつもりだったのか、戦局を確かめにきただけか、いずれにせよエレンと初対面を果たします。エレンはジークが獣の巨人だとは知りませんし、ジークとライナーたちの関係についても無知。それゆえベルトルトに刃を向けて人質にしようと試みますが、ジークが本気でエレンを蹂躙しようとしたなら恐らくベルトルトは人質の役に立たないでしょう。

エレンと対峙したジークの顔に浮かぶ表情は、邪悪な笑みでも怒りでもなく、驚き。そして口から紡がれる言葉は恫喝ではなく哀願、切なる申し出でした。

ジークはエレンの姿を認めると、父親と似ていないと言って驚きます。そして一呼吸おき、次のように続けました。

「信じて欲しい 俺はお前の理解者だ」
「俺達はあの父親の被害者…お前は父親に洗脳されている」

エレンの目からは、ジークと、父・グリシャ=イェーガーの顔が瓜二つに見えます。呆然とするエレン。ジークがその真意を語る前に、壁上に人影が姿を表しました。リヴァイです。

幽鬼のようにユラリと立ち、全身に浴びた雑魚巨人の返り血は蒸気を吹き上げ、視線の定まらない目でジークを補らえます。けしかけた巨人の数が多かったことがリヴァイの足場を増やし、結果的に彼に利することになったのでしょうか。

ジークが乗る四つん這い巨人はかなり機敏に動ける身体能力と知性を持っていますが、さすがにリヴァイと正面切ってガチンコやらかす戦力ではありません。ジークもまだ失った腕が再生しておらず、ここで巨人化は不可能。というわけでジークに残されたのは撤退の一手。

「エレン、いつかお前を救い出してやるからな」

そう言い捨てて一目散に遁走します・・・。

ライナー

さて、ミカサの雷槍で爆破され彼方へ吹っ飛んだライナーはどうなったのでしょうか?

ハンジの手によってベルトルトと同じように四肢を根本から切断され、目隠しして転がされていました。やはり巨人の中身に対しては常に大怪我をさせておけば安全という手法が確立されていますね。

ハンジはライナーの持ち物から金属製のケースを取り出すと、中身について問い質します。ライナーによれば中にはユミルがクリスタに宛てた手紙が入っているとのこと。

ライナーたちに着いて行くことを決めたユミルは結局この戦いの場には現れませんでしたが、すでに食われたか、もしや脊髄だけの姿にされているのか、四つん這い巨人はまだ複数の木箱とタルを1個背負っていますからその中にいるのか・・・。この場では開封されませんでしたが、いずれ明かされるであろう文面には、生き方への熱いメッセージだけでなく事実の告白を期待したいところです。

ハンジはライナーに尋問に応じるか否か尋ねます。ライナーは少しの間を置いたもののきっぱりと拒否。ハンジはすぐさま首を押さえてブレードで切断しにかかりますが、それを慌てて止めるのはジャン。巨人化薬を使う際のエサとして利用価値があるのではと具申します。

調査兵団はすでに巨人化薬の仕組み・・・注射と、脊髄液の経口摂取によって巨人化能力を持った人間になれること・・・を一般兵まで周知しており、またリヴァイが注射を持っていることも知らされていました。

しかし、今それを悠長に行っている余裕はあるのか?ここは兵団の拠点ではなく敵地。そしてハンジたちはエレンやエルヴィン、リヴァイらの状況は分からない。だからこそ念を入れてここはライナーをさっさと始末しておくべきだというのがハンジの考えですが、ジャンは食い下がります。

結局、ハンジはライナーの処断を保留しミカサへ伝令を言い渡しました。注射薬を持ってくるのに何か不都合があれば信煙弾を打つように、それを合図とすると。

命の選択

すでに敵はなく、ミカサはあっという間にエレンの元へ到着。そこで見たのは疲労困憊したリヴァイと、黒焦げになったアルミンに向かって泣き叫ぶエレン。そしてその黒焦げの人物は…かすかに呼吸しているではありませんか。

アルミンがまだ生きていることに気づき、必死に命の火を消すまいとエレンが声をかけます。これで注射をしてベルトルトを食わせれば本作のメインヒロイン・アルミンは生き返る! やったね!!

筆者は82話の記事でこう書きました。「まさかまさか、瀕死からの巨人薬使用でライナーかベルトルトを食って復活!やったね!なんていう展開が待っているのか?」・・・と。その通りでしたね。あの状態で生きてるのもちょっと都合よすぎですが、まあいいでしょう。

何かを考えながら、ゆっくりと注射薬を取り出したリヴァイですが、その表情には未練が感じられます。言わずもがな、彼がこの薬を使って可能性をつなぎたいのはアルミンではなく・・・。一本しかない薬を今ここで使って良いのか、それに迷っているようです。

いずれにせよミカサは瞬時に状況を見て取り、薬は今ここで使うべきだと直感します。すぐさま信煙弾を打ち、それがそのままライナーの死刑宣告となります。

リヴァイは注射セットをエレンに渡そうと手を伸ばしますが、エレンが箱をつかむより一瞬早く、第三の人物がその場へたどり着きます。81話で獣の巨人の散弾攻撃で落馬したものの九死に一生を得、そのままフラフラとどこかへ去っていったあの兵士です。兵士が背負ってきたのは・・・土手っ腹に大穴を開けられ重傷で意識不明のエルヴィン団長!

筆者は81話の記事でこう書きました。「巨人たちへ挑みかかるリヴァイが豆粒ほどに見える距離で、一人の兵士が立ち上がり、生き残りを探してフラフラと歩き始めます。彼がエルヴィンを見つけてリヴァイの元へ送り届けることになるのか!?」・・・と。その通りでしたね。筆者はもはや素直に作品を楽しむことができない体質になってしまったようです。

エルヴィンに息があることを確認し、リヴァイは立ち上がるとハッキリ宣言します。その薬を使うべき人物の名を。それも大ゴマを使って。

その結果がこれです。

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涙目で抗議するエレン。そして背後からはブレードを抜き必死の形相で歩み寄るミカサ・・・場に緊張が走ります。

ハンジ

信煙弾を見たハンジたちですが、それに気を取られた所へリヴァイから脱走してきた四つん這い巨人が猛突進。噛みつかれそうになったハンジはジャンが救出したものの、ちゃっかりライナーは奪われてしまいます。

ガスも戦力も不十分で、ハンジは追撃を断念。

んも~~~~~~~~!!! またこれで振り出しに戻るのかよ~~~~~!!!

一進一退がもどかしく、筆者は思わず頭を抱えてしまいました。あれだけド派手に雷槍ぶちかまして決着したのに、また仕切り直すのか! あくまでエレンとの決着ではなければいけないのか?

ライナーも魅力的なキャラクターですから積極的に退場を願っているわけではありませんが、ここが死に場所でなかったらもう和解共闘ルートの予感しかしません。世界の真実が明かされ、本当の敵が姿を見せてからの総力戦エンド! わだかまりを乗り越えて手を取り合い、新しい未来へと進む若者たち・・・ってやかましいわ!

読者はそれでいいんでしょうけど、エレンをはじめ単純に巨人に近親者をぶっ殺された恨みのパワーでこれまで過酷な訓練に耐えてきた兵士たちは納得しないでしょう。壁の中はそういう綺麗事を笑って受け入れられるような優しい世界観ではありませんので、何かハッキリとした落とし前は必要です。余談ですがそういう因果応報の物語を求めている方には「狼の口 ヴォルフスムント」という漫画作品をお勧めします。筆者のお気に入りです。

このシガンシナ奪還戦において隠れた敢闘賞はこの四つん這い巨人でしょう。調査兵団の接近を察知しジークらへ伝え、ベルトルトが隠れた樽を運搬し、ジークの所へ砲弾がわりの岩を運び、超大型・鎧の巨人・獣の巨人と撃破されているのに一人だけ無傷で生き残り、そしてリヴァイやハンジからも逃げ切る。攻走守を兼ね備えた、超優秀な人材と言えます。顔は変ですけどね!

 

さて、リヴァイとエレン・ミカサの我の張り合いは次号に持ち越されます。目の前に横たわる三人。アルミン、エルヴィン、ベルトルト。誰を殺し、誰を生かすのか?

大局的に見て、理はおそらくリヴァイにありますが・・・。「進撃の巨人」そして諫山先生の究極のメッセージとも言える決断を楽しみに、次号へつづく!

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■父親の「洗脳」

ジークは作中に置いて物語を予想外の方向へかき回すトリックスターとしての立ち位置が明確なキャラです。今回はグリシャが黒幕だよ~ん的なニュアンスを漂わせて去って行きましたが、グリシャは確かに怪しい行動が多すぎました。キースを褒めまくって彼を心酔させる場面など、まるで新興宗教の教祖様のようです(18巻71話)。

出自不明なまま突如壁の外に現れ、キース=シャーディスに取り入り、シガンシナの街を伝染病から救って名士となり、カルラと結婚して子を設け、そしてレイス家の儀式に乱入してほぼ皆殺しにした後、エレンに巨人化薬を打って自分を食わせた。その目的はいまだ不明。エレンに受け継がれたはずの記憶も完全には戻っていない。

グリシャが実は生きていて、自分の死を隠しながら何かの計画を進めていたら?という前提で考えると、やっぱり怪しいんですよね、伝染病の特効薬をグリシャが持っていたことなんか特に、自作自演じゃないかという疑惑が晴れない。

一応エレンの記憶ではグリシャの服をまとったバラバラの遺体が描写されているのですが、「記憶」なんかのファクターが出てくると人物の主観が信用できなくなります。ライナーの人格障害によるトリックの例がありますからね。(本人が自覚していないパターン)

またグリシャの肉体はエレンに食われても、記憶や精神体としてエレンの中で生きているという解釈はできなくないわけで、そこから人格を再現して器に移すことも可能なのかもしれない。まあこういった、現実には想像しない技術について仮定のまま話を進めるとキリがないんですけども。

ちなみにキースは、エレンの顔は母親によく似ていると言っています(18巻71話)。ジークが父親に似ていないと驚いたのも道理というわけです。

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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