進撃の巨人 ネタバレ考察

(79) 完全試合

爆煙と共にその姿を現し調査兵団の前に立ちふさがる脅威、「進撃の巨人」の看板である超大型巨人。

無力化したもののおそらく戦線復帰してくるであろう鎧の巨人と、離れて様子を見守る獣の巨人ことジーク戦士長。

過去最大の敵戦力を前に、調査兵団は残されたメンバーでどう戦うのか・・・。

進撃の巨人 第79話 完全試合
別冊少年マガジン2016年4月号(3月9日発売)掲載

臆するアルミン

顕現した超大型巨人はシガンシナ区の民家を破壊しはじめます。家屋をアンダースローですくい投げて砲弾代わりに使い、建物の陰に隠れた巨人エレンや104期たちをあぶり出す作戦のようです。

超大型出現時の爆風に巻き込まれてハンジ隊の生死が不明な今、104期部隊の指揮を執るのはアルミン。観察眼に優れた彼が導く奇策で一気に形勢逆転かと思いきや、皆の期待の眼差しにテンパった彼は撤退しエルヴィンと合流することを提案。それが難しいと指摘されると今度はジャンに指揮を代わってくれと言い出します。このいくじのなさが妙にリアルで人間臭く感じられますね。

そりゃ仲間の生死どころか下手すると人類の存亡すら肩にかかっている戦いの最前線で、超大型巨人が暴れているのを眼前にして指揮経験のない人間がいきなり大活躍できるとは思えません。これまではアルミンの作戦が図に当たりすぎていてちょっと都合いいよな~と感じていましたが、ここにきて顔面蒼白でヘタレてしまったのは個人的には逆に好感触でした。

エレンに次ぐ第二の主人公として大きな成長を見せるジャン。曰く、「俺は状況は読めるが打開策は浮かばない」。生存のために対症療法的な危機回避はできても、超大型というイレギュラーを排除する決定打を立案するだけの柔軟性や知識はないということ。つまりジャンは前線で的確に部隊を統率することはできるが、目標設定や作戦立案はある程度落ち着いた状態でアルミンがやるべきだというわけです。理にかなった分担だと言えるでしょう。

広告

獣の巨人

アルミンがプレッシャーで胃液を戻しそうになっていたその頃、壁を挟んで反対側の戦場(ウォールマリアの内側)では。

リヴァイと合流したモブ部隊が雑魚巨人の群れをあらかた掃討するも、親玉である獣の巨人は離れた平地に鎮座して動く素振りを見せず。敵の意図をつかめず苛立つリヴァイが爆煙の上がるシガンシナの方を振り返ったその時。降り注ぐ無数の岩が彼らを襲い街を破壊します。

まるで音速を超えるかのような勢いで、ヴェイパー(円状の雲)まで発生させながらジーク戦士長が放つ岩の散弾。

160309_04戦艦の砲撃か。

その礫のひとつひとつが家屋を、兵士を、かすめただけでバラバラに粉砕していきます。さながら大部隊による大砲の一斉射撃のよう。

人間で言えば砂をつかんで投げつけるに等しい原始的な攻撃ですが、単純に「サイズがデカい」というだけでこれほどまでに脅威となる。さらに獣の巨人には知恵があるため絶望度が飛躍的に上昇します。

樽を背負った四つん這い巨人が給弾役で、どこからか丸っこい岩をゴロゴロと転がして獣の巨人のそばへ運んで来ています。
ここからの獣の巨人のセリフは実に興味深いので抜粋。

「う~ん・・・ボール1コ分高かったか・・・」
(中略)
「まぁ・・・初球は様子見て」
「目指すは完全試合(パーフェクトゲーム)だ」

こう言ってワインドアップ(投球モーション)に入る。

160309_02

ストライクゾーン、ボールカウント、完全試合、投球モーション・・・つまりジーク戦士長は「近代野球」を知ってるわけです。
これで作品が一気にSFの色を帯びてきました。

「進撃の巨人」が抱える世界モデルは縦軸の時間移動なのか、それとも横軸の並行世界なのか、その構造はまだ不明なものの、ジークやライナーたちの勢力が来た「故郷」は近現代の文明社会か、少なくともその影響がスポーツという文化で残っている社会と考えられます。

獣の巨人がベルトルトの乗った樽を無回転状態(ナックルボール)で放ったのも、もしかしたら偶然や作品上のご都合主義ではなく本来ジークが野球選手として習得している技術なのかもしれません。本業はプロ野球選手でタイムスリップした人物といえば・・・そう、「信長協奏曲」の弥助!もちろん本作とは何の関係もなし!

挟撃阻止

降り注ぐ岩の雨と轟音に慌てふためく調査兵団。正面からは獣の巨人の制圧投擲、背後から迫る超大型巨人。
壁際の街区で合流したエルヴィンとリヴァイ、そして馬の見張りを任された新兵たち。

ハンジ隊は生死不明、エレンらは超大型から隠れたまま動けず、万策尽きたかに思える状況です。
リヴァイに次の手を問われ、冷たい表情で「何か」に目を遣ったエルヴィン・・・。

壁の反対側、シガンシナ街区では、超大型が壁に接近するのを防ぐためにエレンが身を呈して囮になる作戦を敢行。
しかしベルトルトは横目で一瞥したのみ、進路そのままでエルヴィンたちの方へ向かいます。
ラブコールを無視され赤っ恥のエレンは104期の面々を肩に乗せたまま無策で突撃しますが、いかんともしがたいサイズ差。

必死にくるぶしへ抱きつき、文字通りの足止めを試みたエレン。
ベルトルトはこれまた文字通りに一蹴。

超大型巨人が見せた、さながらサッカーのようなスイングシュートにより(もしかしてベルトルトは故郷でサッカーをやっていたのかも)、哀れエレンはドラゴンボールばりに壁までふっ飛ばされて大の字。
またこのパターンかよ!

160309_05壁に激突してるのがエレン。完全にギャグマンガw

巨人エレンは女型の蹴りで一撃のもとに沈み、鎧の拳で轟沈し、そしてまた超大型にも地面に転がされ、特攻からのKOが芸風となってしまった感がありますね。

さて切り札と予想されるのは、リヴァイが持っているはずの巨人化薬。

160309_0117巻より

今回の団長の言い回しと危機的な状況から、エルヴィン自身が巨人化しそうな気がしてきました。
失った腕も再生できるかもしれませんし、ずっと知りたがっていた世界の真実に記憶を通じて触れることもできる。
その後人間に戻るためには誰か巨人化能力者を食わなければなりませんが・・・。

しかし仮に誰かがここで新たに巨人化しても、エレンが蚊トンボのごとく蹴散らされてしまった状況では、並の巨人で相手が務まるとは思えません。
ロッド・レイスが変化したような大型の巨人なら質量で対抗できるかもしれませんが、確実性に乏しい賭けですね。

最善策ではなく、それを上回るリスキーな手段。
何かを失う覚悟で何かを得る・・・エルヴィンが今人類のために手放せるものは、一体何なのでしょうか。

次回につづく。

余談① 史上初のパーフェクトゲームは1880年

ソースはwikipediaですが、野球における完全試合とは「9イニング以上の試合を通して一人(あるいは複数)の投手が、相手チームの打者を凡退させ続けることで公式に認められる。完全試合においては、試合の開始から終了まで打者は一人も出塁できない。」と定義されているそうです。
要するにヒットはもちろん、フォアボールやエラーなども含め一切の走者を出さない試合のことですね。

これがメジャーリーグで初めて達成された公式記録は1880年、ジョン・リー・リッチモンドという投手によるとのこと。
日本プロ野球では1950年にジャイアンツの藤本英雄投手が初めてだそうです。

「進撃の巨人」の世界が我々の文明社会とリンクしているなら、ジークはこれらの時代以降の存在であると考えられるのではないでしょうか。

余談② 「マブラヴオルタネイティブ」の世界構造

さて今回は現実社会との接点が見えたということで、諫山先生が影響を受けたと自ら述べているマブラヴオルタの世界構造について軽くおさらいを。
当然ネタバレですから未プレイの方はご注意ください。

マブラヴでは並行世界とタイムリープの概念が混在しており、主人公は「シュタインズゲート」のように全く異なる二つの世界線を渡り歩きながら、自分の存在によって起きた因果律のねじれを解きほぐしていきます。

もともとは平和なラブコメ世界の住人だった主人公はある朝いきなり異なる世界線へ飛ばされ、人類と宇宙生命BETAとの絶望的な戦いへ巻き込まれてしまう。人類勝利の鍵はオルタネイティブ4と呼ばれる秘密計画ですが、結局計画は実現できず一部の人類だけが地球から逃げて宇宙移民になり、主人公たちは地球で終わることのない消耗戦を続けることになってしまいました。ここまでが「マブラヴ」のストーリー。

その続編である「マブラヴオルタネイティブ」では、気がつくと主人公はタイムリープしており、初めて異世界へ来た日に巻き戻っています。一周目の記憶を元に破竹の活躍を続ける主人公の導きで人類はオルタネイティブ4を完遂。色々未解決な問題はあるけどとりあえず主人公は最大の心残りを片付けて、記憶をなくした状態で元のラブコメ世界へ戻りましたとさ。おわり。

筆者はプレイしたのが何年も前なので誤りがあるかもしれませんが、まあ大筋こんなもんだと思います。ボイスつきで普通に進めると40時間くらいかかるようなテキストを数行で表現しました。
ピロピロピロでおなじみの「トータル・エクリプス」や、現在テレビアニメ放映中の「シュヴァルツェスマーケン」はBETA世界の時系列で描かれた外伝となっています。

主人公が目覚めた時に涙を流している描写などオマージュと思われる描写もところどころに見られ、あれこれ想像させられます。

広告

別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

Return Top