進撃の巨人 ネタバレ考察

(77)彼らが見た世界

ハンジ会心のニュー兵器「雷槍」の正体は、立体機動装置を使い銛(もり)として撃ちだすワイヤー起爆式の徹甲榴弾。ミカサとハンジが目をつぶし、隙を見せたところへ雷槍部隊が一斉に踊り出、鎧の巨人に銛を突き立てうなじを爆破。ライナーは閃光に包まれて――。

進撃の巨人 第77話 彼らが見た世界
別冊少年マガジン2016年2月号(1月9日発売)掲載

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トロスト区奪還作戦 あるひとつの真実

今号は回想シーンから。舞台はトロスト区奪還作戦。エレンが初めて巨人化兵器として作戦運用されたあの日…アニメで言うと1クールの最後、コミックスでは第4巻です。

民家の屋上で話すライナーとベルトルト。声をひそめるでもなく「いざとなったら俺の巨人で何とかする」「せっかく空けた穴が塞がれてしまう」など超危険なワードを連発しています。こんな危機管理意識でよくこれまで秘密を隠し通してこれたものだと感心していたところ、案の定それをある人物に見咎められていました。

二人の背後から声をかけたのはマルコ。104期訓練兵としてエレンたちと共に学び、ジャンの考え方に大きな影響を与えた人物。残念ながらトロスト奪還作戦において死亡が確認されましたがこの場面ではまだ生存しており、つまり死ぬ直前と考えられます。

今のは冗談だとニコリともせずに告げたライナーを尻目に、その場を跳び去るマルコ。不穏な緊張が漂います。エレンが巨人になれるなら…他の巨人も正体は人間なのではないか? 人の姿をして敵が紛れている。だとすれば…そう思い至った時、空中でマルコは何者かに襲われます。

民家の屋根の上でマルコを押し倒し後ろ手に締め上げるライナー。それに続くベルトルト。叫んで助けを求めたマルコの前に降り立ったのはアニ・レオンハート。九死に一生とばかりアニにすがるマルコですが…読者はすでに知っての通り、3人とも「敵」です。

ライナーはアニに向かって、マルコの立体機動装置を外して捨てるよう指示。壁の人類に対し情が移っていないことを証明しろと言います。

彼がアニに不審を抱いたのはこの場面のしばらく前、アルミン立案の銃撃による目潰し作戦(コミックス2巻)でした。ゴンドラに乗った囮が巨人の目を撃ち視界を奪ったところで、梁の上に潜んだ精鋭部隊が飛びかかって斬り伏せるという緊張感あふれる作戦。この際コニーとサシャが一撃必殺に失敗して転倒、ミカサとアニがカバーに入ることでようやく成功したのですが、この時のアニの行動が不自然だとライナーは感じたようです。

つまりコニーだけでなく、この地の人類に対して親愛の念を抱いてしまったのではないか…?と。

踏み絵を迫られたアニは青ざめた顔でマルコのベルトを外し、巻取り装置を階下へ投げ捨てて離脱。他の二人もマルコを置き去りにして逃げました。

マルコは見たところ大きな外傷もなく、装置も外して捨てただけなのですぐ拾いに行けばなんとかなりそうな感じなのですが、マルコはその場に突っ伏したまま悔恨を述べるだけで動かず…。絶叫とともに振り返ったライナーらが目にしたのは、巨人に捕まり食われゆくマルコ最後の姿でした。

あくまで自分の手で始末せずマルコを巨人の手に委ねるのは事の重大さに比して詰めが甘いように思えますが、もしかすると意外と軍の検死がちゃんとしていて後から足がつくことを恐れたのかもしれませんね。

その光景を眺めながらライナーは涙目で「何で…マルコが…食われてる…」と、人格破綻の片鱗を覗かせてベルトルトを戦慄させていました。

これがトロスト区で死んだ一人の兵士の真実。ジャンが知ったらどう思うでしょうか…。

コニーを助けたアニを訝るライナーですが、その後ウトガルド城で自身が(人格障害で無自覚状態にあったとは言え)それ以上に体を張って同期たちを助けようとしていたのは皮肉なことですね。

160109_02ライナー兄貴の自分からバラしていくStyle。聞かれたからには生かしちゃおけねえ!

戦士長 ジーク

場面は変わり、調査兵団がシガンシナに到達する直前の壁上です。焚き火を囲みカップで飲み物をすするライナー、ベルトルト、そして「獣の巨人」の正体であるメガネのオッサン。名はジーク。戦士長という肩書がついているようです。ちなみにジークはドイツ語で「勝利」です。ジークハイル!とかジークジオン!など聞いたことありますよね。勝利の誓願です。

ジークはアニの身を案じるベルトルトらに対し檄を飛ばしています。アルミンの工作で彼らはアニが極北のユトピア区で拷問を受けていると知らされており、ジークの力を借りて救出したいと考えています。しかしライナーがジークに巨人同士の勝負で負けたため、まず「座標」の奪還を命じられたのでした。それを蒸し返すなとジークは言っているわけです。

「もう一度やってもいいんだぞライナー? ただし次お前が負けたらその『鎧』は他の戦士に譲ってもらう」

ライナーの巨人の力を他者に渡すということは、つまり殺して脊髄を奪うということです。このセリフからジークは背後に控える戦士の軍団と物理的なパイプを有していることが分かります。つまり「ちょっと帰って他の奴連れてくるわ」という選択が可能であろうということ。これがライナーたちとの決定的な違いとなります。ライナーたちは手段的・立場的あるいはその両方の制約により帰りたくても帰れないので。

まあジークが「故郷」に帰らずともラガコ村(コニーの村。ジークによって村人が巨人にされたと推察される)のように現地採用するという手がなくもないですが…。巨人薬の効用で記憶を引き継いでいれば現地採用の人間でも「戦士」になるんでしょうか?

ジークやライナー、ベルトルト、アニといった認められた者がいわゆる戦士(=階級)なのか、獣の巨人が引き連れている「知性のある雑魚巨人」も十把一絡げで戦士(=概念)なのか、その辺りがよく分からないんですよね。

ともかく、ここで「座標」を奪還し呪われた歴史に終止符を打つことが目標だとジークは再度確認し、ベルトルトも静かな決意をもってそれに頷きました。

呪われた歴史、悪の民族、汚れた民族…今号は壁の人類とその営みを否定する表現が多く含まれています。かつてベルトルトも人類を「悪魔の末裔」と評したことがありました。本作のクライマックスで明かされるであろう客観的な視点で見ると、おそらく大義は彼らにあるのでしょう。

この世界は終わる。どのみち長くない。だからこそ特別な人だけは助けてやりたい…そう言ってユミルはその身を差し出し現在は消息不明です。生きてどこかに隠れているのか? すでに巨人化能力だけ取り出されて死んだのか?

ライナーは個人的な恋慕とユミルとの約束からクリスタ(ヒストリア)は助けたい。ベルトルトもアニを救いたい。終末が約束されたこの世界に彼女たちを残したまま帰ってしまうことは、彼らにとって許されないことなのでした。

ベルトルト

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ようやく場面は前号の続きに戻ってきました。爆煙が晴れると、そこには鎧の巨人のうなじから露出し、頭の上半分を吹き飛ばされたライナーの姿が見えます。強敵を仕留め歓喜に湧く雷槍部隊ですが、104期やハンジは神妙な面持ちでした。こらえきれず泣き出すコニーとサシャを叱り飛ばすジャン。地面にへたりこんだまま呆然と眺めるエレン。

皆が興奮やショックにより平静を保てない中、ミカサの目だけは鎧の巨人の異変を捉えていました。

「…動いた…」

本体であるライナーの頭部を半分以上失ってなお、咆哮をあげる鎧の巨人。立ち上がり反撃開始かと思われましたが、肺の空気を絞りきり雄叫びを終えると共にガクリと力が抜け、その肉体は蒸気を噴き出します。

おそらくライナーが振り絞った最期の力。そしてそれは後方のジークへ向けたメッセージに他なりません。巨大樹の森で女型の咆哮により辛酸をなめさせられたエルヴィンやリヴァイは即時それに気が付きます。

ジークは横に控える四つん這い巨人の背中から樽をひとつ拾い上げ、壁の向こうから遠投。樽の中身はベルトルトです。ここに隠れていました。

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常識で考えるなら樽はラグビーボールのように高速できりもみ回転するので、Gやら遠心力やらで中に人が乗っているとちょっと大変なことになってしまうのですが…さすがはジーク戦士長、プロ野球選手でも習得が困難と言われるほぼ無回転での投擲(ナックルボール)です。まあ乗っているのも巨人ですし、現代物理学の観点でケチをつけるのは野暮というものでしょう。

上空から身長50m超の超大型巨人がフライングボディプレスで落着し、周囲一帯を運動エネルギーにより消し飛ばすのが彼らの作戦でした。

即座にそれを見ぬいたアルミンはハンジに離脱を具申。戦友のピンチを救うため空を飛ぶベルトルト。この策の結果は? そしてライナーは蘇るのか?

つづく

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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