進撃の巨人 ネタバレ考察

(74)作戦成功条件

永い間の連載という戦いを経て、ついに「あの日」失われた故郷シガンシナ区へと辿り着いたエレンたち調査兵団。

ここからの作戦は
(1)壁の穴(外門・内門)をエレンの硬質化能力で塞ぐ
(2)迎撃してくるであろう敵勢力の排撃
(3)壁内に残る巨人の掃討
といったステップを踏むと思われ、否が応でも総力をもってぶつかりあう激戦が予想されます。

巨人の力に熟達したエレン、万全のリヴァイとミカサ、知恵袋ハンジに諸葛アルミン孔明と生き残っている戦力が勢揃い。果たしてシガンシナ奪還の願いを果たすことはできるのか?

進撃の巨人 第74話 作戦成功条件
別冊少年マガジン 2015年11月号掲載(10月09日発売)

塞がれた外門

各々がフードを被り、エレンの居場所を特定できないように工夫した調査兵団たち。本命のエレンは立体機動装置で静かにシガンシナ外壁の穴へ近づくと一気に右手を噛みちぎり巨人化。輝く閃光と共にファンタジーRPGのちょっとした中ボス程度の変身を遂げ、ビキビキと音を立てて体組織を硬質化。すぐさまエレンは巨人の躰から離脱しミカサが救助します。ここまでほんの数呼吸、敵の襲撃は確認できず。

外門の穴は巨人の姿をした彫像で見事に隙間なく塞がれており、壁の内外から成功を知らせる煙弾が上がります。エレンは外套を失ったものの立体機動装置は健在、体調にも変化は見られず。要するに作戦の第一段階はスムーズに成功。当のエレン本人が拍子抜けするくらいにあっけなく。

エレンはすでに十分な速度かつ意識をハッキリ保ったまま巨人化も硬質化も使いこなせており、スプーンひとつでわちゃわちゃしていた旧リヴァイ班の頃が嘘のよう。これなら鎧の巨人にタックルしてそのままトリモチのように巻き込みながら硬質化すれば動きを止められるのではないでしょうか? まあ相手も硬質化がある以上守りに入られるとほぼ無敵状態で、捕らえただけでは決定打にはなりません。ライナーとの決着があるとすればどうしても彼が人間の姿をしている時に殺害する、ということにならざるを得ないので、その時にエレンがどう葛藤するかは見どころのひとつです。

王道の少年漫画なら真の敵が現れ、実はライナーたちは悪くなかった!という和解シナリオも予想できるでしょう。しかし本作ではライナーたちはエレンたち壁の住人にとって地獄の発端であり、結果的に何万もの人を死に追いやった元凶でもありますから、彼らが抱えている事情や使命が判明したところで折り合いをつけることは難しいと思われます。どんな理由があったにせよエレンとミカサにとっては母カルラを奪った仇敵であり、間接的にたくさんの友人を死に追いやったことは動かせない事実なのですから。それを赦すだけの度量はエレンたちにはないでしょうし、そんな綺麗事を並べるような作風であればここまで本作が人気を博すこともなかったのではないでしょうか。

もちろん、綺麗事を並べていても構成が巧みで面白い作品はあります。最近ですと「七つの大罪」は清々しいまでのテンプレ展開が続きますが、高い構成力で一気に読ませるたいへんクリーンな少年漫画です。キャラに毒がなさすぎて筆者のようなひねくれウンチク野郎にはちょっと物足りない部分もあり、「人間ってそんな綺麗なもんじゃないだろ~」という若干のフラストレーションがあったりもします。そのストレスを解消してくれたのが「進撃の巨人」がヒットした理由のひとつではないでしょうか。

ライナーたちの事情については…ベルトルトは以前、誰が人を好きで殺したいなんて思うか!と逆ギレしてましたので、彼らが力に溺れた快楽殺人者でもなく、単なるアナーキストでもないことは明白です。ライナー・ベルトルト・アニは何らかの目的を持ってこの世界に送り込まれたエージェントであり、その目的は彼らが「座標」と呼ぶ叫びの力…始祖の巨人の記憶を手に入れることが鍵になっている。叫びの力について明らかになっているのは「王家の血筋でなければ真の能力を発揮できない」「大規模に記憶を操作することができる」「巨人を操ることが可能」「特定の血統の者には能力が効かない」といったことでしたね。結局これまでライナーたちは自分らの目的について何一つ語っておらず、それが本作最大の謎であり楽しみとして残されていて、巷ではあーでもないこーでもないと好き勝手な予想が飛び交っているわけです。

さて話が逸れましたが、ともあれエレンは無事にひとつの穴を塞ぎました。シガンシナ区外壁、つまり「壁外」への出口です。 ここを閉じればあとは中に残っている巨人を殲滅すればいいのですが、その巨人の中には当然ライナーとベルトルトが含まれています。彼らが生きていれば何度でも壁が壊される、そうエレンに念を押すリヴァイ。エレンたちはどうやら内門(ウォール・マリア)へ向かうようです。こちらも塞ぐつもりでしょうか?

巨人化した際にマントを失くしてしまったエレンに、ミカサが自分のマントをかけます。ファサァ...

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キリッ ミカサがかつてないほどイケメンになっている気がする。

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潜伏

一方、周囲を捜索していたアルミンからエルヴィンへの報告。地面に野営道具一式が散乱。壁上から落としたものでしょうか。カップは少なくとも3つ、中には「紅茶のような」「黒い液体」の跡。

おそらくコーヒーなのだと思われますが、壁の世界には存在しないようです。コーヒー豆は1000m以上の高地で栽培されるのが一般的ですし、土地が貴重な本作においては嗜好品よりも主食の生産にリソースを使わなければいけません。殊更「壁の世界と異なる文明」を強調してくる意図はどこにあるのでしょうね。ちなみに壁の世界には猿もいません。

ところでカップが3つということでその主はライナー・ベルトルト・獣の巨人と考えられるのですが、ユミルの姿が見えません。ウトガルド誘拐事件の後、自らの意志でライナー達に降りヒストリアの元を去った彼女。コミックス12巻末に加筆されたシーンにおいて、シガンシナまで同行していたことは明らかになっていますがその後は不明です。「ライナー達の里帰りの手土産になってやる」と述べていることからまだ近くにいると思われるのですが、ライナーたちが獣の巨人とやりあっていた際も出てきませんでした。このことからライナーとベルトルトは獣の巨人に対してユミルの存在を隠しているのではないかと思われます。

コーヒーカップとポットが冷めていたことから敵は直前まで悠長に茶飲み話をしていたわけではなく、調査兵団の来訪に備える時間は十分にあったはずとエルヴィンは理解。アルミンに一隊を任せ引き続き敵の捜索に当たらせます。

内門周囲の民家を探すよう命令を出し、思索にふけるアルミン。彼が思い当たったのは壁の構造体の内部。調査兵団は女型捕獲作戦の際に壁の内側にいる巨人の人柱の存在を知り、巨人が入れるだけの空洞があることを突き止めました。ライナーたちはその顛末を知らないため、壁の内側は心理的な死角と考えている可能性があります。

然して、壁の点検を始めた兵団員。やがて不自然な反響音を確認した隊員が狼煙を上げると、壁面の蓋が内側から前触れもなく開き…

中から姿を現したライナーが立体機動装置のブレードで隊員を刺殺。明確に己の意志で、人の姿のまま人を殺したライナーを目撃した調査兵たちが戦慄するより速く、壁面を駆けたのはリヴァイ。研ぎ澄まされた人類最強の刃が壁上からの落下速度を伴って正確にライナーの頚椎を左から右へ刺し貫き、もう一方の手で心臓へ二刀目。一呼吸の間に体の真芯を貫く会心の一撃を2回受け、哀れライナーは即死…と思われましたが、ライナーの目の光は消えていません。それを見るやリヴァイはライナーを蹴落として離脱。あと一歩及ばず、感情に任せ悪態をつくリヴァイ。顕現する鎧の巨人。あれで殺せないなら首を切断するか、火山の噴火口にでも落とすしかなさそうです。

時を同じくして、ウォール・マリア内(シガンシナ内門より中)で同時多数の発光。誌面で確認できるだけで20以上。そして噴煙と共に現れた獣の巨人と、ザコ巨人の群れ。

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獣の巨人はともかく、ザコ巨人も発光反応からの出現が確認できました。つまりザコ巨人もそれまでは人間の姿でいたはずですから、コニーの出身地であるラガコ村のようにどこかから人間を拉致っておき、身動きできないよう拘束しておいたものを何らかの手段で一斉に活性させ、巨人化させたものと思われます。広範囲に散らばる人間を全く同時に巨人化させる方法はどういったものでしょうか。薬瓶と爆薬をセットしておき遠隔で爆破、噴霧して吸わせる? 薬品以外にトリガーがあり、特定の音や言葉で発現させられる? 

そんなことを考える暇も与えず、獣の巨人は手近な岩をつかむと助走をつけて投擲。物置小屋と同じくらいのサイズがありそうな大岩がウォール・マリアの内門へ激突し、その破片で門が半分ほど塞がれます。これで兵団はシガンシナ区に閉じ込められた格好となり、馬を使っての脱出は不可能。これから始まるのはどちらかが滅ぶまで殺しあう殲滅戦です。

同じように壁の中にいるはずのベルトルトがどのタイミングで出てくるのか、進撃の巨人の看板キャラであり物語の始まりだった超大型巨人とどのようにケリをつけるのか、ここからが大きな山場です。

つづく

 

(10/14追記)読者の方からお便りを頂きましたのでご紹介します。

(前略)ライナー達とエレン達との因縁ですが、最終的には和解というように持って行こうとしているのではないかと考えています。

今までの連載を通して見ると根っからの悪人というものが不思議なほど出てきません。
どうしようもない悪人に見えても、その人達それぞれにそうせざるを得ない正義や信念、譲れない何かを持っていて、それらの利害が互いにぶつかり合うことで争う。
そういった構図で今までの戦いは綴られて来ました。
なので今回の物語以来開始以来の戦いが単なる人類の巨人に対する敵討ちの復讐譚で終わるとは考えにくいと考えています。

そして、ハンジの「憎しみを糧にして~(中略)既存の見方と違う視点から巨人を見てみたい」
ユミルの「そんなちっぽけなもんを相手にしてるようじゃ到底敵いっこない」発言。
それから主人サイドの人たちも皆極端な理想や主義に走る人間ばかりではなく、何処か「自分は正しいのかどうかは分からない。もしかしたら間違っているのかもしれない。」と自分を客観視する冷静さを持ち合わせており、その上で自分の信じた正義に命をかけるというスタンスをとっています。

そして何より主人公のエレン自身が彼らを徐々に許し始めている、少なくとも戦う動機における憎しみの比率が確実に少なくなってきているように見えるのです。

今までの描写を振り返ってみると、駆逐してやると啖呵を切った矢先、自分がその憎っくき巨人の張本人で、化け物として忌み嫌われ、その中で孤独に苛まれ、信頼していた親友はよりにもよって実は人生最大の仇で、仲間であった頃の情と復讐心の間に揺れ、そしてそんな中多くの戦いの中で数え切れないくらいの人間が自分のために命を落としていった。
その度に葛藤し苦しみながらも、「自分は人類の切り札で希望で、特別な存在。だからその犠牲を背負って戦い続けることこそが、何よりの葬いであり、自分の正義なのだ。」と言い聞かせることで、自分のアイデンティティを保っていた。
しかし、ロッドの告白により、その価値観は根底から瓦解。
自分の仇を追っかけていたら実は自分が諸悪の根源であることを知らされ、今までの犠牲の数々も全くの無駄であり、気がつけば彼等と同等の殺人者に成り下がっていた。

こういった描写を通して、許すとまでは行かないまでも「仇を討つ」というエレンの中の正義が大きく崩れ始め、戦いの目的が別のベクトルへ向かい始めているのではないのかと感じられます。

その証拠にエレンの発言を追って見ると、「駆逐してやる(純粋な憎しみ)」中略→「ライナーの奴らを捕まえて償わせる(正義感)」→「殺さなきゃいけないんだ(義務感)」へと薄らいでいるのが見てとられ、先月号に至っては、彼等を憎む描写が一切見られませんでした。

確かに悪役だったキャラがいつの間にか仲間になって今までの罪がうやむやになる展開は、管理人様同様私もあまり好きな展開ではありませんし、彼等の犯した罪自体が和解へと繋げるには重すぎますし、何より巨大樹の森でのエレンに切った啖呵や12巻ラストでの調査兵団に対する徹底抗戦ぶりから安易に和解してしまえば、今までの描写は何だったんだという話にもなってしまいます。

しかし、そういった壁を乗り越えて和解を描く事がこの作品のテーマなのではないのかと感じています。
相手は何十万人の人類を虐殺した大逆の罪人。しかし同様に主人公達も自分の正義のために数え切れない程の血を流し、手を汚して来た。そして「悪魔の末裔」としての業を背負っている。
どちらかが一方的に正しいわけじゃなく、どちらかが正義とも悪とも言えない状態。
ただ相手が憎い許せないと戦うだけじゃこの殺し合いの連鎖は止まらない。ユミルの言う通り「そんなちっぽけな」感情論をふりかざしているだけでは到底この問題は解決出来ない。
認めがたいことかもしれないが「自分は間違っているかもしれない」と自分の正義と向き合うこと、そして「相手にも正義があるんだ」ということを理解すること。
そしてその中でそれぞれが許し合える道、分かり合える道を厳しい戦いを乗り越えて行く中で見出していく。こういったことを最終的に描こうとしているのではないのかなと思っています。

お便りをくださったMさんありがとうございました。

大筋で見てこの作品のテーマは「規制の枠組みをぶっ壊して新しい世界を作る」というもので、政治体制の変革はすでに越えました。あとは概念的な話になっていくのではないかと思われます。

作者は「マブラヴオルタネイティヴをパクッた」と公言していますので、それを額面通りに受け取るならば世界のループ構造が明らかになり、その輪廻のカラクリを最大の「壁」として打破しループしない未踏の世界への到達が最終目的になるのではないか?と巷間では囁かれています。

もう一段視点をミクロにしてエレンとライナーの関係に焦点を当てますと、Mさんの仰るとおり個人的な復讐だの憎しみだのといった感情論を超えて共存の道を探ることがすなわち壁の打破である…という読み解き方は少年漫画作品の筋書きとしては妥当ですし、むしろよくある内容と言えますからそういった場面を想像することも難しくありません。

私的な希望を述べさせていただくならば、そんな退屈でお利口でありがちなシナリオは見たくないなと。もっとグチャグチャでドロドロでドン引きするようなものでなければこの作品である必要性が薄いのではないかと、そう考えています。ライナーなんか問答無用に挽肉にしてやればいいんですよ。壁の住人にとってそれだけのことを彼らはしてますから。その後で直接手を下したエレンはライナーの亡霊にずっと苛まれればいいんです。今回、ライナーが人の姿のまま兵士を殺害する場面が明確に描かれたことで、分水嶺を超えたのだと私は判断しました。ここからはもう戻れない、そういうメッセージと受け取れないでしょうか。

エレンの巨人に対する憎悪の描写が減っているのはご指摘の通りです。グリシャの記憶や叫びの力のことでキャパがオーバーしてそれどころではないとも取れますし、今はそれより地下室のことで頭がいっぱいで、そこに隠された何かがひいては巨人殲滅に繋がるという思いがあるのかもしれません。しかし目の前に鎧の巨人が敵として立ちふさがった時、これまで何年もエレンがすがりつき支えられてきた復讐という動機を、彼の体は思い出すことでしょう。私の個人的な希望はともかくとして、彼らがどう葛藤し決着を着けるかはたいへん楽しみです。

進撃!巨人中学校アニメが放送中

進撃!巨人中学校がアニメになってました。

スピンオフが多すぎて正直ちょっと食傷を起こしている昨今ではありますが、中学校は皆生きててホッとします。ファルコム学園のようなエコ制作&10分程度の枠を予想していたのに贅沢な作りで驚きました。コミックス版の内容をより凝縮して再構成してあり、アニメ版のセルフパロが豊富なため楽しい作りになっています。

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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