進撃の巨人 ネタバレ考察

(70)いつか見た夢

ロッド=レイスとケニーが死に、革命を成し遂げヒストリアを即位させることに成功したエルヴィンたち兵団首脳。

革命の後処理の描写と、今後の領土奪還計画について話を整理する回となっています。

そしてついに物語の謎を握る「あの男」が姿を現す・・・!

「牛飼いの女神」

革命事変から2ヶ月後。

ヒストリアは女王として格式張った行事を忙しくこなし、調査兵団として道無き道を駆けた日々を遥かに追憶している・・・かと思いきや、彼女はレイス家の農場に孤児院を設立し子供たちの世話をしていました。

実務的なことは兵団に任せ、自らはただの神輿に過ぎないことを認め、手ずからできることをやる。

かつて目の前で母を殺され、名を捨てて別人を演じるしかなかった彼女は、ユミルやリヴァイらの言葉に突き動かされながら動乱に飲み込まれ、数多の修羅場を潜り、今これほどに健やかな強さを手に入れました。本作で最も大きく人間的に成長したのがヒストリアではないでしょうか。(父親との再会後、ちょっと怪しい部分もありましたが・・・)

民衆は彼女の小柄な身と謙虚さを見て「巨人ロッドを撃破した英雄」とのギャップに戸惑いながらも、”牛飼いの女神様”と呼び慕っているそうです。

104期は孤児院の手伝いに駆りだされており、ヒストリアと共に荷物運び。途中、ヒストリアはエレンに硬質化実験の近況を尋ねます。

そこにビンが転がっていたから、という全くの偶然から硬質化能力を手に入れたエレン。それまではいくら練習しても糸口すらつかめずにいたにも関わらず、ビンを噛み砕いて薬を飲んだ瞬間から洞窟の崩落を止められるほどの力を発揮し味方の命を救いました。その後も実験は順調に推移しているようで、兵団の作戦準備が整い次第シガンシナへ出撃できるそう。

ライナーとベルトルトを殺さなければならない、と呟くエレン。殺したいと思っているのか? 尋ねるヒストリアにエレンは再度「殺さなきゃいけないんだ」と返し、合理的な理由や是非については考えないようにしている風に見えます。ライナーたちに誘拐された時、ユミルはエレンに感情的にならず大局的に考えて本当の敵を見ろと言いましたが、直後ユミルがライナー側へ寝返ったこともあってその辺りはうまく嚥下できていないのかもしれません。

確かにエレンの立場からすると、ベルトルトやライナーが奪ったものはエレンの人生そのものと言ってよく、「冷静に」の一言で割り切るには傷が深すぎます。合理的に考えれば多くの戦争は回避できるのかもしれませんが、振り上げた拳を下ろせないのも人間には往々あることでしょう。

少し重くなった話題を逸らそうと、ヒストリアは子供たちの話題を出します。地下街のスラムから連れてきた孤児たちが最近よく笑うようになった。継承の儀によって初代王の思想を引き継ぐことを否定した自分たちが、人間として守った営み。それが間違っているとは思いたくない。

エレンはヒストリアの決断や行動を立派だと褒め、照れる彼女と若干いい雰囲気になったその瞬間。

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それまで影も形も見当たらなかったはずの空間に、殺意の波動に目覚めたミカサが瞬時に出現。お前は魔方陣グルグルのギップルかw 生まれたてのバンビのごとく小刻みに震え絶句するヒストリア。

この一連の騒動の中で、実はほとんど成長していないのがミカサです。彼女は最初から行動原理がエレンに関することだけに収束していて、基本的に他の人間や自分自身のことに関心がありません。エレンやヒストリアが世界の行く末だとか巨人の力の使い方といった小難しいことに頭を痛めている間も、彼女は1日1万回くらい腹筋してエレンに近づく敵を排除するパワーを保つことしか考えていません。

ミカサ自身には手首の刺青や危険信号の頭痛、アッカーマン家特有の高すぎる戦闘能力の由来といったいくつかの謎があり、彼女をメインにすえたエピソードがこの先待っていることは疑いありません。ミカサの人間的な成長(エレンへの依存から脱却し、自分の意志や目的を持つこと)が本作後半の鍵になるのでは?と私はかなり前から考えているのですが、未だその片鱗すら見えず。幼少期から彼女のメンタルが変わっていないのは事実で、ある種の人間性が欠落していることは間違いないのですが、彼女にとっての幸せは本当に「エレンのそばにいること」だけでいいのでしょうか?

革命の事後処理

さて、ナレーションによる説明パートが始まります。

・内乱に敗れた守旧派の議員は爵位を剥奪し収容所送り、反抗的な貴族には高い税率を課し力を削ぐ

のっけから平和的とは言えない荒療治。革命とはこういったものかもしれませんが、潰された方には恨みは残るでしょうね。

 

・憲兵が取り締まった民間の新技術は秘密裏に保持されていた

例えば空を飛ぶ系の発明はすべてご禁制で、作ってるのが発覚すると発明者もろとも始末されていたようですが、そういった技術が残されていて取り締まる者が絶えたとするならば今後一気に産業面でも革命が起こるかもしれません。それはこれまで初代王(の思想を汲む者たち)が守ってきた束の間の平和の終焉を意味するのですが。

 

・地下結晶洞の光る石は新たなエネルギー資源として民間へ供給された

燃料のいらない照明として活用されたようです。

 

・エレンの硬質化能力を応用し新たな対巨人兵器を開発

巨人のためのギロチンとでも呼ぶべき画期的な兵器が誕生します。詳細は後述。

対巨人「処刑台」

かなり独創的な兵器です。

エレンの壁生成能力を使い、2枚の壁板を巨人一人が通れる間隔で並べます。途中に壁素材での柵が張られており、巨人が通過することはできません。その奥に囮となる人間がいると、巨人は首を突っ込んできます。そこへ上から巨大樹の丸太で作った槌を落下させ、重みでうなじごと粉砕するという仕組み。

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隙間に吸い込まれ、柵で阻まれた巨人を丸太で破壊。やはり丸太は兵器として有効だということが証明されました。みんな、丸太は持ったな!!

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丸太の攻撃能力を広く世に知らしめた漫画「彼岸島」・・・は置いといて、この兵器「処刑台」の登場により、兵士も弾薬も損耗せず黙々と巨人をおびき寄せては殺し、おびき寄せては殺しを続けていけるようになります。

壁外の無尽蔵に湧き出てくる巨人はともかく、壁の穴を塞いだ後で中に残った巨人を殲滅するには極めて有効と思われ、その高効率に小躍りするハンジ。地下結晶洞で墜落した時は退場を危惧しましたが普通に全快しているようです。

ハンジのように賢すぎて便利なキャラはストーリ-上かえって不都合になる場合があり、何らかの理由をつけて退場もしくは戦力外になることも多いです。バトル漫画における、強すぎて「こいつ一人いればいいんじゃないかな」的なキャラもそう。「るろうに剣心」で最強の剣力を持つ比古清十郎が、飛天御剣流は世俗の争いに関わってはならんとか抜かしてほとんど戦わないのもそのためです。彼一人で話が終わってしまいますからね。

「処刑台」を量産しようぜと舞い上がるハンジですが、それを生成する要のエレンは鼻血を噴いてリヴァイに介抱されています。どうやら巨人化能力を酷使しすぎた模様。実際、巨人化能力を継続的に使用し続けた場合の中身への影響はほとんどわかっていません。

巨人化能力は無尽蔵に使えるとは限らない・・・。このことは頭に留めておく必要があるでしょう。

ケニーの注射器

今際の際、ケニーがリヴァイへ託した巨人化薬。その分析ははかどっていませんでした。

分かったことはビンの中身が空気に触れるとすぐに気化してしまうこと、兵団が持つ技術を遥かに凌駕していることだけ。

首脳陣は解析を諦め、いざという時に誰かを巨人化させる切り札としてリヴァイにそれを託します。いつ誰に使うかという権限もセットで。

一度これを使ったら巨人化能力を持つ相手を食わないと人間には戻れませんので、使える状況はかなり限定されます。便利な超兵器というわけにはいきません。

下手をすると人間に戻れないままユミルのように巨人として永劫さまよい続けることもありうるわけです。

リヴァイはエルヴィンの真意を測るようにいくつか質問をした後、注射器を手に取りました。

食堂 104期

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ジャンやコニーたち104期と同席しているのはマルロ。軍服には自由の翼が縫われており、憲兵から調査兵へ転属した様子。彼だけでなく駐屯兵からの鞍替え組もおり、人員補強のために大々的に内部での募集をしているようです。筆者の大好きなヒッチはと探してみますが姿が見えず。どうやら彼女は憲兵団に居残りの模様。マルロとヒッチの関係を冷やかす場面もありつつ、コニーが翌朝から生家の村を訪れるからと早めに退散。

コニーの母親、ユミル、そしてエレン・・・なぜ巨人になる必要があったのか。巨人とはまるで終わらない悪夢にうなされ続ける人間のようだと、ジュクジュクした思考の迷路に陥りそうになるエレン。現実に呼び戻してくれるのはミカサ。支えてくれるのはアルミン。そして別の道を示すのはジャン。ここまで生き残った戦友たちは十分に心が通じているようです。

ジャンはエレンに一人でブツブツ暗いことを考えるより先に思い出すべきことがあると示唆します。

それはすなわち、グリシャ・イェーガーの記憶に登場した人物。

グリシャがフリーダから叫びの力を強奪してレイス家のほとんどを殺害した後、彼と接触していた調査兵団の中年男性。この人物はグリシャの素性について何かを知っているはず。そしてエレンはこの男の顔をどこかで見たことがあるように感じていました。

ジャンの軽い冗談からエレンの中で記憶の糸がつながります。電流が走り、エレンはその男の名を口にしました。

キース・ジャーディス。

訓練兵時代に彼らをしごいた禿頭の鬼教官です。

 

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張られていた伏線。4巻で教官とグリシャが旧知であることは示唆されていましたが、ここに来て回収されました。

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ちなみにこの隊長と同一人物です。わずか数年でフサフサがツルツルになっているのを見るに、かなり苦労したのでしょう・・・。

灯台下暗しとはこのこと。エレンは翌日教官の元を訪れることに。

進撃の巨人展で見た、あの男が登場

ページをめくると、そこにはいきなり半殺しにされ瓦礫の上に横たわる鎧の巨人と、その身を案じるベルトルさんの姿が。

そしてそれを見下ろしながらヤンキー座りで構えるのは・・・獣の巨人。

彼らはシガンシナで何か賭けをして勝負に挑み、ライナーはボコボコにされベルトルトと共に猿巨人に従うことになったようです。

「勝ったぜ アニちゃん助けるのは後な」

「座標の奪取を優先 当然だろ?」

「ここで待ってりゃあっちから来るんだし」

そう言いながら獣の巨人のうなじを割って中から現れたのは眼鏡の男。

彼こそは「進撃の巨人展」で公開され、撮影禁止扱いになっていたあの新キャラです。150609_04↑進撃の巨人展公式図録より。

「物語の鍵を握る男」「最後の謎を目撃せよ」など仰々しい文が添えられています。

筆者は「背景が真っ白だから精神世界に残っている初代王の思念体的なアレかな? 眼鏡かけてるからインテリすなわち科学者で、この世界を作った実験の首謀者で~」などといった幼稚な妄想に浸っていましたが、ついに今回獣の巨人から出現しました。このイラストから受ける印象に比べてかなりマッチョです。口調もワイルド。

ライナーたちは故郷へ帰るための手段として獣の巨人を探していたはずです。ウトガルド城で猿巨人に初遭遇した翌朝、予定外だったエレンとユミルの誘拐を決行しています。それほど彼らにとって獣の巨人の存在は予期せぬ僥倖、逃せないチャンスだったのでしょう。しかし今はユミルの姿も見えず、12巻のラスト以降彼らがどのように行動したらこうなったのか皆目想像できません。

ライナーたちと獣巨人の男の主張にはいくばくかの相違がありそうに見えるものの、座標を手に入れるために行動している点は同じで、それが済めばついでにアニの救出にも力を貸してくれるような口ぶりです。さらにここで待ってりゃあっちから来る、つまり調査兵団がシガンシナを目指して軍備を進めていることを熟知していますね。

情報が少なすぎて今のところは考える材料が足りませんので、単純に今後の展開を楽しみにしたいと思います。彼らの思惑について語られることを期待したいですね。

つづく

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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