進撃の巨人 ネタバレ考察

(63)鎖

エレンの父・グリシャ=イェーガーもまた巨人であった。彼が何者かはわからないが、ロッド家を襲い、ヒストリアの異母姉フリーダを殺害し、彼女がもつ記憶情報を奪って逃走、そして謎の注射でエレンを巨人に仕立て、自らを食わせることでその力を受け継がせた…。

レイス家領地にある礼拝堂の地下で、ロッドレイスによりその断片的な記憶を再生されたエレン。レイスは何を語るのか。進撃の巨人が抱えた大きな謎が、ひとつ核心へ-。

「進撃の巨人」第63話 鎖
2014年12月号(11月8日発売)掲載

おねぇちゃん

レイスとヒストリアがエレンの背に触れたことで彼の中にあったグリシャの記憶が呼び覚まされたのと同様、触れた方のヒストリアもある記憶を蘇らせていました。

それはヒストリアの異母姉・フリーダのこと。幼いころ農場で母の手伝いをするヒストリアに、麦わら帽子を被ったフリーダは時折訪ねてきて本を読み聞かせていました。懐かしく大切な人の記憶が一気に蘇り、思わず大粒の涙をこぼすヒストリア。

レイスはフリーダがヒストリアと会っていたことは知らなかったようですが、それはそれで納得といった表情。ヒストリアを守るために記憶を消したのだろうと合点しています。

フリーダは今どこでどうしているのか? 当然の問いを発するヒストリアに対し、レイスは淡々と事実を告げます。すなわち、目の前で鎖に繋がれたエレンの父の所業を。

フリーダは全ての巨人の頂点に立つ存在だった(座標・叫びの力のことだと思われます)。だが巨人としての経験や練度が足りず、巨人と化したグリシャにその力を奪われた。グリシャはレイス家を根絶するためにその場にいた者達を皆殺しにし、レイス本人だけが生き延びた…。

なぜそこまでする必要があったのか? ヒストリアの目に浮かぶ色は困惑というよりも非難が濃く、エレンはその声を聞いた瞬間にヒストリアが自分のことを異質な獣や外敵として認識し始めたことを悟ります。

フリーダと争う前、グリシャは痛切な表情で何かを訴えています。交渉が決裂し、やむを得ず強硬手段に出たグリシャが私利私欲のためにレイス家を襲ったわけではないでしょうが、その目的はレイス卿も理解していない。結局明らかになったのは表面的な事実と結果だけで、物語のスタート地点はいまだ見えてきません。ユミルにしても、ベルトルさんやアニ、ライナーたちにしても、実は巨人だった!という最大級のインパクトはあったものの、結局何を考えて行動しているのかは一切明かされていないのがこの作品のズルいところ。そして取ってつけたような展開ではなく、前々から伏線がしっかり仕込まれている構成の巧みさが大きな魅力となっていますね。続きを読みたいという欲求を抑えることは困難。

さて、レイスとヒストリアの話の途中でケニーが割り込んできます。クーデターのこと、兵団がこちらへ向かっているであろうことをまくし立てますが、レイスはもう用済みとばかりに退去命令を出します。ケニーは何か含みのある表情。彼は大局的な野望というよりも目先の快楽のために殺し奪いたい性質に見えますが、先日(作中ではつい昨日です)リヴァイに対し「やりたいことが見つかった」「大いなる目標」などと語っています(58話)。レイスに背を向けた彼の表情は「クソ、冗談じゃねえぞ。記憶の改竄なんかされたらせっかく見つかった俺の生きる目標が台無しになっちまう。そんなのはゴメンだ」とでも言いたげな苛立ちが混じっています。このままおとなしく去るとはとても思えません。

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リヴァイとミカサ

ちょうどその頃、リヴァイは馬車の上でケニーのことを班員たちに伝えていました。間違いなく作戦遂行時に最大の障害として立ち塞がるだろうと。リヴァイに匹敵する戦闘能力をもち、対人特化の立体機動装置を使うと聞いて臆するサシャとコニー。王都では貴族を拷問して嬉しそうな老ザックレーをよそにエルヴィンやピクシスらも礼拝堂を目指して出発していますが、その到着を待っていてはエレンの命が危ない。今のメンバーで突入するしかありません。すかさず名軍師、諸葛アルミン孔明と竹中ハンジ半兵衛がリヴァイの話からケニーの弱点を割り出します。うむ、天晴じゃ!

リヴァイはひとつ気になることがあり、ミカサに尋ねます。ケニー・アッカーマンというフルネームのことを。同じ姓を持つミカサ・アッカーマン。そしてケニーはリヴァイのこともリヴァイ・アッカーマンと呼んでいました。当然、彼らには何かの隠されたつながりがあります。

ミカサは最近全然存在感がなかったのですが、久々に語ります。それは強盗に殺害された両親のこと。アッカーマンは父方の姓で、都市部で迫害を受けていた血筋だったらしい。そして母方は東洋人とよばれる一族で、これまた人種差別にあい街では居場所がなかった。そうして追い詰められて隠れ住む者同士が出会い、結ばれてミカサをもうけた。ミカサにとってひとつ不可解なのは、父がなぜ迫害を受けていたのか。人種的な差異はない。平凡で善良な父だったはず。

リヴァイは尋ねます。

「ある時突然 力に目覚めたような瞬間を経験したことがあるか」

子供ながらに誘拐犯を刺殺したあの日、ミカサはまさに目覚めたと言えるでしょう。肯定するミカサにリヴァイは続けます。

「ケニー・アッカーマンにもその瞬間があったそうだ。ある時ある瞬間に突然バカみてぇな力が体中から湧いてきて…何をどうすればいいかわかるんだ」

「その瞬間が 俺にもあった」

人類最強と呼ばれる兵士リヴァイ。彼と同等の戦闘力を持つケニー。そして歴代に比類なき能力と評されるミカサ。

この作品で一個の人間として高い戦闘力を持つ彼らは皆おなじ姓を持ち、そして共通の経験をしている。つまり、これもまた巨人の力と同じように人為的に仕組まれた何かである可能性が高くなってきました。ミカサが抱えている謎は(最近忘れられてますが)手のイレズミと頭痛です。これらから読み取れることはまだ多くはありません。

ヒストリア=レイス

再び礼拝堂地下の結晶洞。相変わらず鎖に繋がれたエレンと、それを階下から睨めあげるヒストリア。彼女の目からはすでにエレンへの労りが失せ…。

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「駆逐してやる…」(※そんなセリフはありません)

ヒストリアにとってフリーダ「おねえちゃん」はそれほどまでに重要な存在だったのでしょう、母親にも相手にされず、近所の子供達からは石を投げられ、孤独に牧場で馬の世話をすることが世界のすべてだった幼少期。彼女に読み書きを教え、優しくしてくれるのはフリーダただ一人だったのです。(今改めて読んで見てもなぜヒストリアが母や祖父母、近所の子からさえ疎まれるのか、その理由が分かりませんが)

15歳で思春期真っ盛りのヒストリアが、5年前に1度会ったきりのレイスをお父さんと呼び、エレンよりも信頼してしまう所は多少違和感を覚えます。何年も同じ釜の飯を食い、壁の内外で死線をくぐり抜けた同胞であるエレン。クリスタ=レンズの仮面を脱ぎ本心を吐露した時、彼に「今のお前はなんかいいよな」と言われてほのかに芽生えた親愛の情。それらが一瞬で帳消しになり、ここまでの表情ができるものでしょうか?

無言でエレンを見据えるヒストリア。重い沈黙が支配する地下洞窟にレイスの靴音がこだまします。

ヒストリアへ歩み寄ったレイスが鞄から取り出したのは、大型の注射器。

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そして薬瓶の内容物を注射器へ吸い上げるレイス。エレンは当然、それが何であるかを知っています。

レイスはヒストリアの肩に手を置くと、フリーダはまだ生きていると告げます。彼女はまだ死んでいない。彼女の「記憶」は生きている。姉さんに会いたいか?と。

「…うん 会いたい…」

戸惑いながらも期待を秘めた顔でレイスに応えるヒストリア。

レイスの意図を察したエレンは全力で叫びますが、両手はバンテージで固められ、猿ぐつわと鎖で拘束されており動くことはできません。エレンはこの儀式を止められるのか!?

つづく


61話の記事で筆者はこのように書きました。

レイス卿の手持ちの巨人とは…?

  1. 実は自分が巨人
  2. ヒストリアが巨人、もしくはこれから巨人化させる
  3. アニ
  4. 新キャラ
  5. コニーの母ちゃん
  6. 巨人に食わせる以外の抽出方法がある

正解はどうやら2。

彼がグリシャに一家を惨殺された後、即座にヒストリアに接近したのはこのためです。自分の血を継いだ娘を巨人の器として確保する。…しかし、レイスがヒストリアを本当に守ろうとしていたのなら、訓練兵から調査兵団として活動している間も警護がついているはず。以前、筆者はそれがユミルの役割であり、権力側から密命を受けてヒストリアに近づいたSPではないかと考えていました(ユミルがクリスタに近づいたのはその出生に関係があると本人が発言したため)。

しかしウトガルド城の攻防からエレン誘拐~奪還までの言動を見る限り、ユミルは単にクリスタの秘密を知り一方的にヒストリアを偏愛していただけのようです。ではその役割を担っていたのは誰でしょうか? 訓練時代にクリスタが雪山で遭難してユミルやダズもろとも死ぬかもしれないといった状況をはじめ、彼女の身に危険が及ぶことは多々ありましたが、レイスはそこでヒストリアが死んだら死んだで仕方ないと考えていたのでしょうか?

経緯はともかく、今レイスは注射によってヒストリアを巨人化させ、エレンを食わせてフリーダの力と記憶を継承させるつもりです。その際、自分の身はどうなるのでしょう?

ヒストリアが巨人化するとたちどころに目の前のレイスを補食し、一旦人間に戻りますがレイスの記憶から彼の目的や使命を受け継ぎ、自発的にエレンを捕食することになるのか? それともレイスは注射だけしてすぐに身を隠し、ヒストリアがエレンを食って人間に戻るのを待つのか? 後者が可能ならレイスはむざむざ死ぬ必要はないはず。しかし誌面のアオリは「父と子、悲劇の連鎖を引きちぎれ!」とあり、これはエレンとグリシャ、ヒストリアとレイス卿という二組の親子を指していると思われますので、前者の可能性が高そうです。

次号も目が離せませんね。お楽しみに!

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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