進撃の巨人 ネタバレ考察

(62)罪

巻末の諫山先生のコメント「やっと巨人が描ける…。」

最後に巨人が出てきたのいつだっけ?と記憶があやふやになるほどですが、最後に巨人と戦闘してたのは12巻の最後、戦闘以外では13巻の途中でエレンの巨人化実験のシーンがあります。それが53話ですから54~61話までの8ヶ月間は巨人が誌面に登場していないということになります。今回は久々に巨人がちょろっと出てきますよ。また本作最大の謎の一つに答えが示される貴重な機会でもあります。それでは進んでいきましょう。

進撃の巨人 第62話 罪
別冊少年マガジン2014年11月号掲載

王都制圧

エルヴィンらからなるクーデター勢力はあっさりと王都を掌握し、ザックレーは現体制が終わったことを宣言しました。貴族たちは様子見とのことで、フリッツ王への忠誠から直ちに挙兵するような者はいないようです。

本当はこんなにすんなり行くはずないのですが、そこはストーリーの主題ではないので記号的に割愛することに異論はありません。これから延々とクーデターに関わる内戦の描写を続けられても退屈なだけですし。そんなことをしてる間にライナーやベルトルさんがどんどん忘却の彼方へ飛んでいってしまいます。

スポークスマンとなったナイル・ドークの演説をかいつまんでまとめると次のようになります。

  • 王政府は保身のために人類の大半を切り捨てる決断をした、これは容認できるものではない
  • 兵団は政権を担うことをせず、真の王家へ王冠を返すのがクーデターの目的

ナイルの口から出たのは驚くほど綺麗事ですが、嘘はついていません。さすが少年誌というべきでしょうか、ここで利権にあずかろうと小賢しい工作を試みる腹黒いオヤジ的な人間はおらず、若々しく清廉潔白な革命です。「権力取れるなら取るだろ、フツー」といった考えの人間は兵団幹部にはいないようです。エルヴィンの求心力がなせる業でしょうか。調査兵団はもともと保身とは無縁な、ジャンに言わせれば「自殺志願者」たちの集まりですから分かりますが、憲兵団や駐屯兵団はそうではないはず…。ま、これもまたストーリーの本筋とはあまり関係ありませんので想像するだけにしておきましょう。

エルヴィンとザックレーがなんかウダウダと自分語りを始めちゃいました。ザックレーは昔から王政が気に入らず、一矢報いてやろうと数十年クーデターの準備をしてきたのだとか。その割には行動遅かったですね…。

積年の思いを吐露するザックレーを見てエルヴィンは驚いた顔してますので、総統として本心を一切悟らせないよう注意を払っていたのでしょう。つまりエルヴィンがクーデターの相談に行くべきはピクシスよりザックレーであり、彼に話をつけた方が早かったはずですが、ザックレーの体制への忠誠を示す演技がうますぎて「こいつは反体制側に引きこむの無理だろ~」とエルヴィンが判断してしまったということ。皮肉です。

でクーデターの主役をエルヴィンに持って行かれて「畜生この若造が!ワシの生涯の目的を横取りしがってクソッタレめ!」といった苦々しい怨みや嫉妬に渦巻く老獪…と思いきや別にそういった憤りはなく、「よくやってくれたよエルヴィン君、ガハハ! あいつらの悔しそうな顔見た?ざまあw」みたいなノリで済んでしまいました。王政にギャフンと言わせれば誰がやってもOK、そんなもんですかね? エルヴィンはエルヴィンで教師をしていた父を情報統制のために憲兵に殺されていますので、長いこと恨みがあったのは同じです。要するにどちらも動機の根っこは私怨であり、人類がーとか平和がーとか言うのは建前にすぎないということ。似たもの同士だったというわけです。利権構造とは違いますがトップらの内心は決して清廉潔白といえる物ではありませんでした。こういう汚らしさ、言い換えれば等身大の人間らしさが「進撃の巨人」の魅力でもあります。ハンネスがカルラを見捨てて逃げる所とかね。

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急行、リヴァイ班

場面は変わり、マルロとヒッチの助力を得てリヴァイ班と合流したハンジの話。

「巨人の力が捕食によって人を渡る」という、これまでにないファクターがハンジの口から伝えられます。

リヴァイ班が決行した(そして失敗した)エレンの狂言誘拐作戦は、オンリーワンでスペシャルな存在であるエレンは簡単に殺されないだろうという推測を前提に立てられたもの。エレンの「座標の力」が簡単に移植できるなら、エレンを生かしておく必要はない…。

ハンジにはレイス卿の隠れ場所としてある目算があり、そこへ馬車を急がせる道すがらこれまでにわかった事実を説明。この人達はサスもない馬車の上でペラペラ喋って舌噛まないのか?ふとオルオさんが偲ばれます。

ハンジの目算はエルヴィンから託された調査報告書に根拠がありました。

レイス家は5人の子がおり、妾腹でさらに1人、6人の子が確認されている。長女の名はフリーダ。妾腹の子は説明がありませんが言うまでもなくヒストリアです。フリーダの顔は見えませんが麦わら帽子に黒い長髪姿なので、ヒストリアの夢に出てくる記憶操作能力を持つ「おねぇちゃん」だと思われます。またエレンの夢にも主観視点で登場しています。

ウォール・マリアが突破されシガンシナが陥落した翌日、礼拝堂で祈りを捧げるレイス一家。そこを盗賊が襲い、ロッド・レイスを除く全員が殺害されるという事件が発生。さらに盗賊が放った火により礼拝堂が全壊してしまう。

さらに数日後にはロッド・レイスがヒストリアとその母に接触し、 いずこかへ脱出を試みたが中央憲兵のケニーらによって阻止。ヒストリアの母はその場で刺殺され、ヒストリア本人はクリスタ・レンズという名を与えられ僻地へと放逐される…。

ここまで聞くと、跡継ぎを失ったレイス卿は妾腹とはいえ直系であるヒストリアを守ろうとしたように思えます。また憲兵がそれを妨害したところから、憲兵に対し指揮力を有する貴族の何者かがレイス家を断絶させて、権力をそのままキープしておきたいと願った。つまり「傀儡であるフリッツ王を操り壁の中を実質的に支配している貴族」が盗賊を装って差し向けた暗殺工作ではないか、と思えるわけです。(読者視点ではケニーとレイスが繋がっていることが分かっているためこの説は最初から無理筋です)

ハンジの考察もまた異なったものでした。ハンジが注目したのは「礼拝堂が全壊」という部分。

盗賊にせよ暗殺部隊にせよ、わざわざ石造りの頑丈な礼拝堂を破壊する意味は? そして礼拝堂はロッド・レイスによってすぐに再建されている。一家惨殺事件の証人は唯一の生き残りであるロッドただ一人だけ…。

ハンジはこの強盗殺人が狂言であると結論づけます。礼拝堂は巨人によって破壊されたものであり、それを隠すための偽装工作がなされている。

その礼拝堂には巨人の力にまつわる「何か」があるのではないか…?

リヴァイ班はそこを目指して進みます。

礼拝堂・地下

拘束された状態で目が覚めたエレン。

すでに事態の説明を受けすっかりレイス卿に感化されている様子のヒストリア。「お父さんは人類を思ってこれまでの行動を取らざるを得なかったの!」など丸きり体制側になっています。切り替えはええ~。

レイス卿はエレンにも説明をするつもりのようですが、この方が早いとヒストリアと共にエレンの背中に手のひらを押し付けます。

その刹那。エレンの体に電撃のようなショックが走り、「誰か」の記憶が再生されます。

以下、すべて主観視点でのフラッシュバック。

礼拝堂、夜。

石畳を持ち上げると地下への階段。

降りた先、光る石柱群。

白い衣装をまとった人影、7人(レイス、妻、5人の子か)。

振り向く5人。(レイス、フリーダ、3人の子)

こちらを睨みつけるフリーダ。

石柱の近くで女型の巨人と格闘。

すりつぶされ横たわるレイスの妻の亡骸、誰かの手、巨人の腕に掴まれて泣き喚くレイスの長男?、逃げるレイス。

火を上げて崩れる礼拝堂。

避難する人の群れ。

鍵。

注射器を前に泣きわめく男児。

注射を受け地面に伏し、巨人化する男児。

その巨人が自分に掴みかかり…

エレンがグリシャを捕食

途絶えた記憶は、エレン自身の記憶と繋がる。

煙を上げ消えようとしている巨人の体躯のそばに座り込み、上半身がなくなった父の遺体や遺品を前に咆哮するエレン。

「どうだ、思い出したか? 父親の罪を」

ロッド・レイスはエレンにどこまで語るのか?

つづく! 


またしてもハンジの当て推量が完全に的を射ているというパターン。アルミンとハンジの推察は絶対にはずれないのがこの世界のルールです。

エレンの記憶を解釈するとこんな感じです。

記憶の主、グリシャ視点での物語。

グリシャはある晩、レイス一家がいる礼拝堂へ忍び寄りました。(ハンジの資料によればシガンシナが陥落した翌日の出来事ですから、第1話で「2つ上の町へ診療に行く」と言って出かけた彼はそのままレイス家へ向かったことになります)

秘密の階段の存在を知っていたグリシャはそこから地下の光る石柱が並ぶ部屋へ侵入し、白装束に身を包む7人の人影に近づきます。ヒストリアはここにはいません。

予想外の闖入者に驚くレイス家一同。彼らにとってグリシャは敵性存在であったのでしょう、敵意むき出しで睨みつけるフリーダ。次のコマは女型の巨人との格闘なので、グリシャとフリーダが巨人化して争っているように見えます。

女型の巨人を制したのでしょうか、残るレイス家の面々を殺しにかかる巨人グリシャ。そして崩れる礼拝堂。これがその日に起こった事件の真実。グリシャがなぜ礼拝堂を襲ったのか、何を手に入れようとしたのかはわかりません。しかし「それ」がおそらく今ロッド・レイスがエレンから奪還しようとしている(つまり元々は王家のものであった)能力、すなわち「座標」ではないかと思われます。そしてエレンの前に座標を持っていたのはヒストリアの異母姉フリーダで、グリシャを経由して伝達されたのではないでしょうか。

これらの状況からすると、ひとりその場を逃げ延びたレイスはヒストリアを確保し、ケニーと共謀してその母を(口封じのため?)殺害。ヒストリアをグリシャから守るため、名を変え遠くへ逃がしたのではないかとも考えられます(少し周りくどい気もしますが…)。だとするならばグリシャがフリーダの次に狙っていたのはヒストリアで、彼の本当の目的は未達ということになる…?

いずれにせよ帰還したグリシャはシガンシナから避難したエレンと再会すると、人目につかない森の中で注射を打ち、エレンは巨人化して反射的に目の前にいたグリシャを捕食。エレンが取り戻した記憶は、父の亡骸の「部品」を前に慟哭した自分の姿でした。これがエレンの巨人化能力の由来。

レイス卿やヒストリアから見てエレンの父・グリシャは無法な簒奪者であり、家族の仇であり、エレンの能力は奉還されて然るべきもの。とはいえレイス卿が今すぐこの場でエレンを惨殺して巨人の力を奪おうとしてもヒストリアがそれを素直に許すとは思えませんので、ヒストリアが「大丈夫」と口にしていることからエレンを巨人に食わせようとしているわけではなさそうです。

エレンは夢でフリーダの記憶を再生していますので、グリシャはフリーダを倒し、捕食してその記憶も引き継いでいたと思われます。ということは巨人の力や記憶は1世代限りではなく、複数の人間の記憶情報を保持できる媒体という性質をもつことになりますね。ハンジの言葉を借りるなら、この性質は誰にとってどんなメリットがあるのか…。

グリシャの素性や目的がなんであれ、力を持ちその使い方を知っているなら自分が使えばよかったわけで、わざわざエレンにそれを託す意味は今のところわかりません。正体がばれ追われる身になったのでエレンにそれを委ねた?としても息子であればすぐ調べられるでしょうし、ちょっと材料不足ですね。エレンの記憶ではグリシャは最後に「皆を守るためにこの力を使いこなせ」と言っていたはず。なぜその役目がグリシャ自身ではダメだったのか? …次回の説明に期待しましょう。

余談

前回の記事で私はこんなふうに書きました。

巨人に食わせる以外の方法があればいいんですが、それがないとすると「じゃあエレンは巨人化してから誰を食べて人に戻ったの?」って話になって、私は父であるグリシャを食ってるんじゃないかと思うんですよね。 その説を成り立たせるためにはグリシャもまた巨人だったことになりますが(食べるのは誰でもいいわけじゃなく、巨人の力を持っている相手に限る)…。

当ブログでは「巨人の力が人を渡る」と判明した時点からこの説を主張していました(47話)。的中してホッとした感じです。

そして聞き逃せないのはベルトルさんの「エレンも覚えてなさそうだし」。これでしょう。
エレンが記憶混濁している場面として思い出せるのは第一話の冒頭と・・・父・グリシャ=イェーガーが彼に注射を打った時のこと。
涙ながらに「皆を守るためにこの力を使いこなさなければならない」とエレンに正体不明の注射・・・おそらく巨人化能力の源・・・をエレンに施すグリシャ。その後エレンは記憶障害を起こし、そこからグリシャは消息不明。そしてエレンはかつて巨人として誰かを食べているはずなのに、それを覚えてない。こう並べて見るとかなり嫌な予感がします。
エレンは注射を受けて巨人化し、意識がないままグリシャを食べて人間に戻ったのではないでしょうか? そしてそのプロセスを踏んだ人間だけが、それ以降自分の意志で巨人化能力を使えるようになる・・・?

上の記事を執筆した当時は「飛躍しすぎ」などの批判もそれなりにありましたが、結果的にはそのままでした。

当然次なる疑問は「グリシャとは何者だったのか?」ということになります。巨人化能力を持ち、レイス家の秘儀に侵入してフリーダを殺害(?)。人を巨人化させる注射を持っている。自分が力を行使するわけでなく、死してそれをエレンに渡そうとした意図。地下室の中身。シガンシナが流行病に侵された時、その特効薬と共に現れたというエピソードも怪しい。藤田和日郎の「からくりサーカス」的な色を帯びてきましたね。次回が楽しみです。

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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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