進撃の巨人 ネタバレ考察

(50)叫び

名軍師・諸葛アルミン孔明の人間性をも捨てた策略、右腕を失ってなおギラギラと燐光を放つエルヴィンの気迫、それらを結集してようやく鎧の巨人らの手からエレンを取り戻したミカサ。
目的を果たし馬で撤収しようと試みるも、鎧の巨人は苦し紛れに雑魚巨人を調査兵団へ向けて放り投げ行く手を阻みます。
衝撃で落馬するミカサとエレン。ミカサは先ほどの戦闘で負傷しており動きが取れません。
そこへ姿を現したのは、第一話でエレンの母、カルラを食ったあの巨人でした・・・!

 

進撃の巨人 第50話 叫び (別冊少年マガジン2013年10月号掲載)


仇敵


幼い日の母との思い出…エレンの脳裏には、ケンカの後で彼女に諭された言葉が浮かんでいました。
どんなに相手が憎くてもケンカをすればいいってもんじゃない、男ならたまには堪えてミカサを守れと。

1巻をはじめ所々で描かれていたように後先を考えない直情型のエレンは気に入らない相手にすぐに突っかかっていく子で、それで衝突を起こしミカサを巻き込むのが常でした。街のいじめっ子達にも、ジャンに対しても。
今回の奪還戦にしてもその構図はあまり変わっていません。
ユミルにたしなめられるほど浅く感情的な部分でライナーやベルトルトに反発し、結局彼らから情報を引き出すことはほとんどできておらず、身動き取れない状態にされてミカサたちの救助部隊を待つだけ。当然、助けに来る方も命がけです。
幼き日の回想をしている間に、母を目の前で食らった仇敵の巨人は落馬して動けないエレンとミカサに襲いかかります。
救出にきたのはやはりハンネス。シガンシナが襲われたあの日の再現です。

彼はカルラを置いて逃げたことをずっと悔いていました。
子供たちだけでも確実に助ける…その判断は算盤の上では間違っていなかった。だとしても割り切れない。そのトラウマを清算し、過去と決別する。彼の中で止まったままの時計、その針を進める時が訪れたのです。

「本当に! 会いたかったぜ お前に!」

笑みすら浮かべ巨人へと向かうハンネス。

 

ミカサは見た目に大きな外傷はないのですが肋骨が折れているらしく、ハンネスに加勢できず。
成長した今のミカサが万全なら雑魚巨人など一刀でしょうが…。
エレンは巨人化して自らの手で仇とケリをつける腹積もり。
ジャンやアルミンらもそこへ駆けつけようとしますが、鎧の巨人が雑魚巨人の投擲を続けており思うように進めません。

 

ユミルの逡巡


一方、巨人化したユミル。

計画がメチャクチャだと憤りますが、彼女は趨勢を読みきれずにいました。
もとより彼女にはライナー達のような使命があるわけではなく、クリスタを守りたいという気持ちだけで場当たり的に行動しています。単に友情や親愛というだけでは不自然な気もしますが、今のところそれ以外の原理は見当たりません。
そのためユミルには先を見据えた計画もなく、状況が変われば何食わぬ顔で調査兵団を助けてここを切り抜けるという選択もありえます。

今どちらにつくのが最善なのか、その判断ができないまま雑魚巨人からエルヴィンを守るユミル。

「今この状況を生き延びることができたとしても…もうじきこの壁の中が地獄になっちまうのは避けようがない…」
「ヒストリアをあっち側に送れるのは今しかねぇのに…私の力じゃ守りきれるとは思えねぇ…!」


 

この世界には先がない…ここ数話でたびたび出てくる表現です。
ライナー達やユミルだけはそのことを知っており、だからこそ大局的には人を殺しても別に構わないと思っている。だってどうせ皆死ぬんだから結果は同じでしょ、とでも言わんばかりに。

ライナーとベルトルトにせよアニにせよ、力に溺れた快楽殺人者では決してない。
アニはトロスト区で犠牲者たちの亡骸に謝罪し、ライナーは心の均衡が崩れ人格障害を起こし、ベルトルトは誰が人なんか好んで殺すかと激昂しました。

ただ肝心のカタストロフィについてはまだ何も語られておらず、いつどこで何が起こるのか読者には知らされていません。
そしてそれを止める術は少なくともライナー達は知らないか、知っていても非現実的なものだと考えているに違いありません。

この世界は終わる。それは構造的に決定されていて変えようがない。ライナーたちの「故郷」(=あっち側)に行けばその災厄を免れることができる。だからライナーとユミルはクリスタを連れて行こうとしている。
おそらくその予定された終末という「壁」を越えて、誰も知らないカオスな地平を手に入れることがこの物語の終着点になるのではないかと、筆者は考えています。

 

クリスタはユミルがなぜ自分を連れて行こうとしたのか、その本心に気づいていました(コニーに言われてですけど)。
彼女はコニーの馬から巨人ユミルへ乗り移り、ウトガルド城での約束を改めて確認します。私達は私達のために生きよう、と。
眼前の雑魚巨人に立ち向かうユミルとクリスタ、そして成り行きでそれを援護するコニー。

 

力尽き、そして…


鎧による雑魚巨人のばら撒きは続いています。そのせいで落馬し憔悴した様子のエルヴィン。
救出に駆け寄った隊員が巨人の餌食となり、さらに鎧自身もこちらへ向かって来るとあってもはや離脱も困難。

また一体、鎧が投げた巨人に今度はジャンが馬ごと巻き込まれ昏倒。
アルミンがそれを助けようとしますが、立体機動が使えず二人揃って絶望的な状況に追い込まれてしまう。

そして仇敵に立ち向かったハンネスは、胴体を真っ二つに噛みちぎられていました。
あれだけ気合を込めて飛びかかった割に見せ場もなく絶命したハンネス。その光景を目にしてエレンは泣き笑い。
手には歯形と血がついています。どうやらこのピンチにも巨人にはなれなかった様子。
ライナーが言うとおり、体力が回復していないうちは無理だったのでしょうか…。

 

ミカサは周囲を見やると静かにエレンに呼びかけ、今の状況には似つかわしくない微笑みを向けます。
今まさに巨人に掴みかかられようとしているアルミンとジャン。
地面に膝をついたままのエルヴィン、巨人とつかみあいになっているユミル、ハンネスの上半身を飲み込んだ仇の巨人…。
それらがあまりにも静かにゆっくりと見え、まるでここだけ時間が止まったかのような錯覚を覚える中、ミカサはエレンを呼び、

「伝えたいことがある」


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彼女が紡いだのは、共に生きたエレンへの感謝の言葉でした。この上なく満ちたりた優しい笑顔とともに。
この子はエレンの命がかかっていると諦めが悪いはずなのですが、今回はさすがにもう無理と悟ったのでしょうか。
負け戦で城を落とされた戦国武将の妻のような佇まいで、死に際のロマンチックな涙に酔っているようにも見えるミカサ。
勢いで接吻してもおかしくないくらいの距離です。

 

しかし僕らのエレンはそんな甘ったるいラブラブに浸るような男子ではなかった。
今初めて、ミカサを守るために自らの意志で立ち上がったエレン。(しかも見開き!)

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この静的な絵づくりがいいですね。夕焼け空が印象的です。

ずっとミカサに守られ助けられてきた少年が「男」になった歴史的な瞬間でした。
「進撃の巨人」としては珍しく、主人公が課題を解決し成長するという少年漫画らしい場面。

 

とはいえミカサは動けず自分も巨人にはなれないので勝算はゼロ。

それでも最後の意地を込めて、雄叫びとともに渾身の右ストレートを仇の巨人へ打ち込むエレン。
(なぜか親切にそれを手の平で受けてくれる巨人!役者です)

その瞬間、ライナー・ベルトルト・ユミルの頭にビリビリと強烈なショックが!
エレンに変化はありません。
刹那、エレンの後ろから一体の雑魚巨人が猛然と突進し、仇の巨人に襲いかかります。
近くにいた巨人たちも次々とそれに続き、呆気にとられる調査兵団の面々を尻目に仇の巨人をフルボッコにして食い尽くしてしまいました…。

 

驚いたのはユミル。
エレンの身に起きたことを理解しているようです。
そして、それならこの壁の中にも未来があると。

同時にライナーは焦っていました。
それは間違いなく「座標」の力によるものだと確信したからです。

ふたたび身柄を奪うべく駆け寄ろうとした鎧の巨人を見て激昂するエレン。
その叫びに呼応し、またも強いショックがライナーとベルトルトを襲います。

先ほどの再現で雑魚巨人の群れが鎧の巨人へ殺到し、その隙に体勢を立て直し全部隊で撤退を始める調査兵団。
あまりの数にライナーが苦戦しベルトルトの身に危険が及ぶのを見ると、ユミルはクリスタにごめんなと言い残し、戦いへ身を投じます。彼らを守るために。
引きとめようとするクリスタをコニーが制し、ようやく帰路へ。

「鎧の巨人がそれ以上追ってくることはなかった」とナレーションが入り、これでしばらく続いたエレン奪還編も一段落のようです。

 




とりとめのないメモ
■「座標」

そもそもなぜライナー達は「故郷」を離れて「こっち側」に来たのか?
彼らが探しているのは「座標」です。
彼らはエレン=座標ではないかと考えていて、その可能性が見えたから正体を明かし逃亡を企てました。
「座標」が手に入ればこの世界には用はない。「座標」とアニを回収したらもう二度とこっち側へは来ないとも言っています。

これまでの「座標」に関わる発言を振り返ってみましょう。

「クリスタは壁教の重要人物だ つまり俺達の探してる「座標」が…エレン自身でなければ 俺達の任務はまだ終わらない そんな時にクリスタがこっちにいれば今よりずっと探しやすくなるはずだ」(ライナー・47話)


「最悪だ よりによって座標が…最悪の奴の手に渡っちまった…」
「絶対に取り返さねぇと…間違いねえ…断言できる」
「この世で一番それを持っちゃいけねぇのは エレン…お前だ」(ライナー・50話)


47話のセリフで「エレン自身」という発言があることから、座標とは人間に対し埋め込まれたり定着している素質や力のようなもので、生体や人格と結びついているのではないかと思われました。
一方、今回「手に渡った」「取り返す」という表現が出てきたことで、座標の所有者は人為的に変更できることがわかります。

 

問題になるのは、いつどうやってエレンに「座標」が渡ったのか。
今回のように生身のエレンが巨人と敵対する場面なら何度かありました。
シガンシナ区陥落、トロスト区防衛戦の序盤、巨大樹の森への遠征、市街での女型の巨人捕獲作戦。
ウトガルド城夜明け後、ライナーに拉致された後…。
これらの場面ではそういった兆候は見られず、だからこそライナーたちも正体を隠したまま座標探しを続け、並行してエレンを拉致ろうとしていました。
獣の巨人が現れたことで彼らは帰郷の道筋を見つけ、「まあ多分エレンで間違いないだろ、違ったらクリスタを通じて壁教に協力させて探せばいいさ。それより帰れるタイミングは逃したくない」といった考えで割りと短絡的に行動を起こしています。

なぜライナーたちは「多分座標はエレンが持っている」と思ったのか?

彼らはトロスト区の襲撃を途中で切り上げエレンの身柄を目標とし始めましたが、トロストで得た情報は「エレンが巨人になれる」ということだけだったはずです。巨人化できる=座標持ちだと仮定するなら、「多分持ってる」ではなく「確実に持ってる」とわかるはず。「巨人化できる人間なら座標を持ってるかもしれない」と考えた理由は…
…と考えていくとどんどんわけが分からなくなり、文章のまとまりもなくなっていくのがこの漫画の面白いところです。
もはや筆者には推敲する気もございませんがご容赦下さい。

 

・エレンは座標そのものは既に持っていたが、その力を発現させていなかった
・座標そのものをつい最近手に入れた
・実は座標はエレンが持っているのではない

材料が足りないのでこれ以上考えたくないのですが、
筆者が妄想しているのは「座標」はエレンではなく近親者…例えばミカサが持っているという展開。
ただの当て推量で別に明確な根拠はないです。ミカサも色々と秘密を抱えていますよね。
エレンとミカサ、あと何かが揃うことで座標の持つ能力が発現するのではないか?
なんて考えています。
一般的に言う座標とは、ある決まったルールの元で位置を表すための記号です。
例えば緯度と経度というルールに従って地図上の位置を示すことができますし、
xyzの組み合わせで立体的な位置を表現することもできます。

それではエレンが今回示した力は、一体何の座標系に対して位置を表す記号なのでしょうか。
大枠で言うと巨人を従えることができる力、という風に見えますが、例えば女型の巨人は発声により巨人の行動をコントロールすることができました。獣の巨人は人語を介したコミュニケーションで巨人に命令していましたね。
エレンも今回それと似たようなことができましたが、それだけが「座標」の意味とは思えません。巨人を従えることができるのは「座標」を持つことで生まれる副次効果であって、「座標」本来の機能や目的は別にあるはずです。

世界に対し位置を示す記号。来るべき災厄がその位置だけを避けて通る、そんな意味を持っているのかもしれません。
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別冊少年マガジン(毎月9日発売)で連載中、
「進撃の巨人」のネタバレ感想ブログです。

ネタバレには配慮しませんので、ストーリーを楽しみたい方はご注意下さい。

※フラゲ速報ではありません。本誌発売日の夜に更新することが多いです。

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